16
日曜日、私はまこちゃんと遊びに来ていた。
夏物が出て来たのでついついたくさん買ってしまい、両手にはたくさんの荷物がぶらさがっている。
「ちょっと早いけどまわるとこまわったし帰る?」
「そうだね!今日はありがとう、まこちゃん」
「うん、また遊ぼう!」
まこちゃんと別れて帰路に着いた時、私のケータイが鳴った。
「げ、折原くんだ」
少し躊躇われたが、意を決して通話ボタンを押した。
「も、もしもし」
「あぁ菜緒ちゃん?今さ、菜緒ちゃんの近くに…」
いるんだけど、と続く言葉が、騒音と悲鳴でかき消される。
「え、なに!?」
音がした方向目をやると、ポストが宙を舞っていた。
そんなことをできる人なんて一人しか知らない。
「静雄くん!?」
案の定ポストの真下には静雄くんがいた。
下降してきたポストを片手で受け止め、肩に担ぎながらこちらの方へ走ってくる。
その時、不意に腕を掴まれビルの陰に引き込まれた。
「わぁ!」
「しっ」
そこにはケータイを耳に当てている折原くんが。
「折原くん!?どうしたの!?なんで!?」
折原くんに肩を抱きかかえられるようにしながら狭い隙間に身を潜める。
「臨也でいいって言ったのに」
空いている方の手で通話を切りながら折原くんが言う。
「今その話!?折原くんでいいじゃん!」
「……臨也って呼ばないとキスするよ」
この人完全に面白がってる…
「絶対に嫌!」
「ふふ、傷つくなぁ」
ほら、と心底楽しそうな表情でただえさえ近い顔をさらに近づけてくる。
「わ…かったよ!臨也くん!」
「はーい」
ちょっと残念、なんて笑いながら、星マークが飛んできそうな口調で臨也くんがそう言った時、少し遠くで「臨也ァ!どこ行った!!」という声が聞こえた。
「今さー、シズちゃんに追われてるんだよねぇ」
「なにしたの臨也くん…」
「なんだろうね?でさ、ちょっとシズちゃんなだめてきてくれないかな」
「えっ」
悲鳴が近づいてくる。
静雄くんをこれ以上街中で暴れさせるのはだめだよね…
「わかった…でも臨也くんのためじゃないからね!」
「恩に着るよ」
そう言ってにっこりと笑い、私を拘束していた腕をほどいた。