15

「中西菜緒ちゃんいる?」

ざわついている昼休み中の教室に、さわやかな声が響く。
しん、となる教室。
私はからあげを口に入れようとしている姿勢のまま固まった。
扉の方へ目を向けると、そこには見覚えのある男の子が。

えっと確か…

「いざ…?いざなんとか君……?」

周りから、「静雄がいなくてよかったな…」という話し声が聞こえる。
そうだ、静雄くんと喧嘩してた人だ。

「ちょっと来てくれる?」

突然私の手を取ると、椅子から立ち上がらせた。
教室がざわめく。

この人有名人か何かなのかな…?

教室の雰囲気に違和感を覚えながら、されるがままに歩きだす。
一緒にご飯を食べていたまこちゃんが、哀れんだ目をしてこちらを見ていた。



「ごめんね、突然連れ出して。俺は折原臨也、よろしくね。」
階段の踊り場で立ち止まると、折原君はにこやかにそう告げた。

「う、うん、よろしく。私は…」

あれ、この人さっき私の名前呼んでたような?

「あぁ大丈夫。自己紹介は不要だよ。きみのことならなんだって知ってる。」

ニヤリと笑う折原くん。
つられて右の頬が引きつったのがわかった。

「あ、最近髪伸ばしてるんだって?いいと思うよ、短いのも可愛かったけどね。」

この人なんで私がショートだったときのことを…!?

「なんでそんなことまで知ってるんだ、って顔だねぇ」
「正直めちゃくちゃ怖いよ、折原くん」

そう言うと、透き通った笑い声が階段にこだました。

「臨也でいいよ」
「は、はぁ…」
「俺も親しみを込めて菜緒ちゃんって呼ぶからさ」
「え、えぇ…」
「そんなに嫌そうな顔しないでよ」

カラカラと笑いながらケータイを取り出す臨也くん。
少し操作した後、私の胸ポケットが振動し始めた。

ん?電話かな?

「それ、俺の番号だから」
「え!?」

驚いて震えるケータイを取り出すと、そこには知らない番号が。

背筋がゾッとする。

「登録しておいてね」

某然としていると目の前には誰もいなくなっていた。


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