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平和島くんが学校であばれたことは全校生徒に知れ渡っており、その後も変わらず接している私は周りから少し物珍しそうに見られることが多くなっていた。

気持ちはわかるよ…私も最初見たときは本当に怖かったからね…

登校中、同じ学校の人達の視線がちくちく刺さる。
私は苦笑いしながら足を進めた。

平和島くんがもっとみんなに溶けこめるようになればいいな。
平和島くんと仲良くなれたのも何かの縁だし、頑張ってみよう。

よしっ、と決意したとき、前方に金髪が見えた。
この学校で髪が金色の人なんて一人しかいない。

「おはよ!」
「中西、はよ」
「平和島くん今日は早いね」
「おう、この前ひまわり植えただろ?気になって早く来ちまった」

少し眠たそうに目をこする平和島くん。

そう、前に買ったひまわりの種をついこの間花壇に植えたんだ。

「でもまだ芽は出てないと思うよー」
「出てなくても水やるんだよ。今週は俺がやる番だしな」

そう言う平和島くんの声は心なしか弾んでいて、とても楽しそうだった。

「てかよ、静雄でいいぞ」
「へ?」
「呼び方」

平和島くんの方を見ると、少し困ったように人差し指で頬をかいている。

「平和島ってなげぇだろ、だから」
「下の名前で呼んでいいの?」

下の名前で…

「し、静雄くん、でいいのかな」

なんだか気恥ずかしい。
平和島くんもそう思ったのか、照れてるのを隠すように片方の口角を引いて目を逸らす。

「おう、その方が呼びやすいだろ」
「じゃあ私も下の名前で呼んで!」
「いいのか?」
「うん、これからお互い下の名前で呼ぼう!」

おー、と言いながら拳を小さく上げてみる。
なんだよそのノリは、と苦笑されてしまった。

「じゃあ菜緒って呼ぶ」
「うん!」

なんだか少し距離が縮まった気分だ。

「話してみるとすっごい優しい雰囲気なのにね、静雄くん」
「は?」
「みんな静雄くんのこと、喧嘩してるとこだけ見て決めてるじゃん?もったいないなって」
「しかたねぇよ、気持ち悪いだろ怪力すぎて」
「いやでも、便利なときもあるんじゃない?ほら!容器の蓋がかたくて開けられないときとか!」
「…油断すると容器ごと粉々になるけどな」

苦い顔をしながら静雄くんが言う。
それは想像してなかった…
体質、ってことなんだよね…
世の中にはいろんな人がいるんだなぁ。

「お前ぐらいだよ、見た後も普通に接してくれんのなんか」
「そう?」
「相当変人だよな」
「何その言い方!!」

べし、と背中を叩く。
いてぇなぁといいながら笑う。
静雄くんは仕返した、と言わんばかりに私のほっぺを手でつかんだ。
だけどそれは、壊れものを扱う時のような仕草で、少し切なくなった。


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