11

掃除当番のごみ捨てでいつもより学校を出る時間が遅くなってしまった。
グラウンドからは野球部がウォーミングアップをしている声が聞こえる。

花壇、直してから帰ろうかな。

そう思い花壇の方へ振り返ると、そこには人影が。
もしかして…
「平和島くん…?」
踏んで倒されてしまった、やっと出た小さな芽。そしてそれを直している背中。
昼休みの光景がフラッシュバックすると同時に胸が締め付けられる。

私は隣に座り、同じように直し始めた。

「!……」

平和島くんの手が止まり、何か言いたげに口元が動いた。けれどそのままなにも発せられることはなく結ばれてしまう。



どれぐらい作業しただろう。終わる頃にはもう街灯に明かりがともっていた。整然と並んだ芽を見ているうちにいろいろな想いが込み上げ、目から溢れて頬を伝った。目の前が霞んでなにも見えなくなる。

「ごめん」

平和島くんがしたを向きながらそう言った。
なぜだか涙が止まらない。拭おうとした手は土まみれ。


「ごめん」

「っ…」

「ごめん」



嫌になった。

手にまとわりつく土のようにぐちゃぐちゃな頭の中が。
喉に引っかかったこの言葉が。
止まってくれないこの嗚咽が。


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