(雪男と)

「痛っ」
「あっ」

慌てて手を話せばなまえさんは不思議そうに目を丸くしていた。

「す、すいません」
「ううん、ねぇ、雪男くん手を見せて?」

右手を差し出せばなまえさんの手がそっと重ねられる。
間接ひとつ分ほど差があるなまえさんの手はひどく小さく見えた。

「雪男くん、手が荒れてるね。ハンドクリーム貸したげようか?」
「あ、いや・・・」

どうして?と言う風体で小首をかしげるなまえさん。
なんだか言い辛くなってしまう。

「あんまりハンドクリームをつけると、いざという時にグリップが滑ってしまって」

つぶれたまめや銃の手入れでささくれてでこぼこの僕の手を、なまえさんはそっと包み込む。
なまえさんの傷ひとつない柔らか肌には痛いだろう。
現になまえさんの目尻に涙が光っていた。

「私、雪男くんの手。暖かくて、優しくて、好きだよ」

彼女の丸い心が、いつだって僕を潤す。
はい、と返事を返すために、僕はなまえさんを抱き締めた。

20110814 ささくれ