(雪男と)

世界を切り裂くような、真っ青のひかり。
涙が止まらない。
世界が改変されていく。蓄積された存在が崩壊していく。雪崩の様に崩れていく。
青く燃えて、燃え尽きて。

「なまえ!!下がれ!!」
「いや!!だってっ、だってぇ!!」

燐の声が耳元で響いた。
掴まれた手首が焼き千切れそうに熱い。
私は子供みたいに涙が止まらなくて、一生懸命涙を拭って、青い炎を見ている。
どうして。どうして?
青く揺らめく炎が勢いを増した。
世界を焼き尽くす。悪魔の炎だ。

「どうして?」

私の頬を伝う涙は、炎の熱が灯って熱い。
燐の優しい熱ではない。
身を切る様な、冷たく熱い、絶対零度の炎。
凍傷寸前の様に、凍えて動けない。

突然、炎の塊が伸びてきて燐にぶつかる。
勢いは殺せず燐は低い呻きをあげて後ろに転がっていった。

「燐!!」
「酷いな、兄さん。なまえは僕のだよ?」

青い炎を纏った、わたしのこいびと。
彼は優しい笑顔をたたえたまま、ゆっくりとこちらへと向かってくる。

「どうして?」

私の馬鹿みたいな質問に、雪男は楽しそうに笑った。

「なまえの事が好きだからだよ。なまえ以外、もうなにもいらないからさ」

さぁ行こう。
そう私の腰を抱く雪男の腕の冷たさ。
鋭く伸びた爪と牙。尖った耳と全身を包む冷たく熱い青い炎。

雪男、雪男。私が大好きな人。わたしのこいびと。

「どうして・・・?」

涙も凍る様な、世界が終る様な、息が出来なくなる様な。
私を押し潰そうとする現実。

雪男、私が大好きだった人。
あなたの初めてみる笑顔に、私は

20110804 悪魔落ち