(雪男と)

「きゃっ!」
「わっ!」

曲がり角でぶつかると、お互いが持っていた資料が飛び交う。
はらはらと雪のように舞う紙の向こうには、驚いた顔をした雪のように白い奥村くんがいた。

「すいません名字さん、大丈夫ですか?」
「うん。奥村くんこそ大丈夫?っあ」

立ち上がろうとした瞬間、かしゃんと嫌な音がする。
ふたり足元に視線を落とせば、奥村くんの眼鏡が可哀想なことにひしゃげていた。

「どどどどうしよう!」
「大丈夫ですよ、予備はありますから」

そう言って私の手をとった奥村くんはひょいと簡単に私を立たせてしまう。
あ、男の子の手。と思う間に、奥村くんの顔が目の前に来ていた。

「でも、よく見えないので寮まで連れてってもらってもいいですか?」
「う、うんっ・・・」

近いよ、と赤くなる私を見て、奥村くんは可愛いですね。と笑った。

20110718 真っ昼間の送られ狼