(志摩くんと)

高校に上がるとき、彼は髪をピンクめいた色に染めた。
理事長が理解あるおかげでさしたる叱責はない。
呆れる坊と子猫丸と軽口を繰り返して彼は笑う。
廉造はいつもにこやかに笑うが、大概心は笑ってはいない。
薄っぺらい笑い方。ここ数年ずっとその笑い方だ。

「そんなに嫌やったん?」
「なにがです?」

へらりと笑う口許。下がった目尻。どうやったって、似ないわけがない。
髪の色ひとつでは誤魔化しきれない。
それは廉造なりの、意地だったのかもしれない。

「アホみたいな色やなぁ」
「ひどいなぁ。そないなこと言わんとって」

桜色の髪を指に絡める。
柔らかい髪に私は笑った。

「あたしは好きやで、廉造」

ぱっ、と赤くなった顔が可愛らしくて、私はそのまま額に口づけた。

20120304 コンプレックス破壊