(勝呂くんと)

「竜士さま、」
「なまえっ、おま、なにしてんねん!」

白い寝巻きがはだけ、同じくらい白い肌が露になる。
濡れぼそった瞳に上気した頬。小さく開いた唇から覗く赤い舌が扇情的だった。
淡い果実の様な匂いと一緒に微かにだがアルコールが香る。
見えそうで見えない胸元。
さらけ出された太ももの白さはいっそ毒だ。

「竜士さまぁ・・・」
「え、ええから、退かん、かいっ」

必死に理性を繋ぎ止める。
今にもこぼれ落ちそうななまえの涙が、月の光を吸って銀色に輝いていた。
人の上に跨がるなまえは、いつもより高い体温で俺に触れる。
その現実に酷く心臓が跳ねまわる。

「わ、わたし、胸が小さくて、い、色気もございませんが、竜士さまのお側に置いていていただきたいんです、」
「はぁ!?」

一体何を突然。
そんな見た目のことなど関係なく、なまえは俺の許嫁だ。自分で選んで、決めた女だ。誰がそんなことと考えて、脳裏に過ぎ去ったピンク頭に溜め息が出た。

「よう聞けなまえ。俺は別に胸があろうがなかろうがどうでもええねん。俺の許嫁は、なまえだけや。他の女なんざ認めるか」

何を不安に思う必要がある。
涙が零れた頬に手のひらを添えれば、なまえは両手を俺の手に重ねてゆっくり微笑んだ。

「うれしい」

まったくこのおんなは、なんてうつくしくわらうのだろう。
怒りに似た激情が腹で燃える。
そのまま腕を引いて胸の中に閉じ込めた。
今はまだ、抱き締めるだけで精一杯なのだ。

20110919 お酒の力を借りたの