▼真っ直ぐ俺を見つめて言い放ったラクサス。その真剣な眼差しと彼の言葉の真意。
それが、胸に引っ掛かっていた自分に対する疑問と周りに対する疑問、それらが内側から一瞬にして引き出される。
同時に、その疑問たちはたった一つの答えによって次々と消えていった。
▼ああ…そうだ。そうだったんだ。俺はただ勝手に『お姫様になりたい』なんて、変な願望抱いてたんだ。俺みたいな奴には王子様なんて来ないって馬鹿みたいなこと思って。
だからさっきだって、『たまには良い』なんて馬鹿みたいなこと思って余裕ぶってた。
もしこれが、俺が手に付かない事態だったらラクサスは勿論、皆に迷惑掛けていたに違いないのに。
…なんだよ、なんだよ俺。ずっとあのギルドで育ってきたのに気持ち悪いことばかり考えてやがった。気持ち悪い。
「(本当、恥ずかしい…)」
小さい頃から、俺の隣には王子様がいたじゃないか。
▼「な、なあ、ラクサス…」
「あん?」
おずおずと彼の顔を見上げ、俺は恥ずかしいながらもゆっくりと口を動かしてみる。
絵本とは全く違う、不器用で体格が良くて、口の悪いゴリラだけど。
すげぇ強くて背中を預けられる、傍にいると安心するそんな幼馴染み。
「今だけ、弱くなってもいい?」
それが俺の王子様でした。
princess one spoon
(一さじ一杯のお姫様願望)
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