Title/お飲みなさい ;R15
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「ぜんぶ、のめよ」

そう告げながら片手だけで土方の両頬を押さえつけると、土方は吐き出すことなど出来なかった。土方は銀時を有りっ丈の力で睨みつけてから、口内で粘つく精液を、静かに飲み干した。もう何度になるのだろう。口内に少しも残さず、途中、喉に絡まないように飲み下す術を、土方は心得てしまっていた。そして残念なことに、日ごとにその味が微妙に違うことまで、土方は知っていた。

「やればできんじゃん」

その様子に銀時は満足気に土方を眺め、頬を掴んでいた右手を放してやった。いつもながらその力は酷いものである。土方がじんとする自分の頬を擦っているとその腕を取られ、ベッドの上に転がされた。

後頭部にシーツ音を受け、土方は、天井の淡い光を背にして陰になっている銀時の顔を見上げた。性器だけが露出し、ズボンが半分しか下がっていない銀時の姿はどうみても滑稽だと言うのに、実際余裕そうにしているのは銀時の方である。口角を上げた銀時が、見せつけるようにゆっくりと、黒いインナーシャツのファスナーを下げている。余裕をかましているその姿に蹴りでも入れてやろうと土方は目論んだが、白いシャツの中にするりと銀時の手が滑りこんだ。ピクリと肩を震わせ反応した土方を、銀時は嫌らしい笑みを浮かべながら見下ろしている。土方はその表情に、ただ唇を噛みしめるばかりだった。


下。ネコ。受け。女役。こっち側の人間の方がやることが多く、息をつく暇が無いのだから、余裕が無いのは仕方がないように思えた、が、土方はどうにかして一矢報いてやれないかと考えあぐねていた。最終的には出すものも出してひと汗もかいて、満足はできるのだが。しかしあの面が、見下ろす様が。シャワーを頭から浴びながら、土方は頭を掻き毟った。いっそのこと、どうにかして突っ込んでやろうかと究極の選択を思いつくも、いざ銀時のそのような姿を想像すると、とても気味が悪かった。土方はシャワーのコックを捻り、微温湯を止めた。すると土方はふと、突っ込まず、下にならず、更にはこれまで分の仕返しも出来る方法を思いついた。副長という職をなめられては困る。あの万年金欠ニートよりも自分の方が、日々頭を回転させているのだ。弛む口元を何とか隠して、土方はいつものような無表情でシャワー室を出た。下着も穿かず、着物一枚を羽織って、腰あたりで帯びを軽く締める。部屋では銀時がベッドの上で大の字になって、しかも目を瞑っていた。すぴすぴ鼻息が聞こえている。土方は頭を拭いていたタオルを床に落とすようにして手放し、ギシリとベッドを鳴らした。それでも銀時は気が付かないようだったので、土方はそのまま銀時のズボンのチャックに手を伸ばした。銀時は性器を取り出されても尚、起きる様子は無かった。土方は銀時の性器を手で二、三度撫でた後、慣れたままに自らの唇を寄せる。先端を舌で小さく舐めてから食むようにして少しだけ咥え、性器に唾液を絡ませる。根元の方は手で包んで上下に撫で上げたり、軽く握ったりしてやる。そうしてそれらを少し続けると、熱を帯びながら、銀時の性器は段々と勃ち上がり始めた。上目で主の様子を確認するも、銀時は未だ起きる様子はないようだ。土方は本格的に、長く固くなった銀時の性器を咥え、顔を細かく上下に動かし始める。性器の裏筋、先走り汁も適度に舐め上げていくと、唾液と空気が絡んでじゅぷじゅぷと卑猥な音がした。

「んーっ…なにそんなに頑張ってくれてんの…」

驚く様子もなく、銀時はただ寝起きの声を洩らすだけだった。そうしてまだ寝惚けているのか眠いのか、自分の股間で一人勤しむ土方の黒髪を、まるで小動物のようにさらさらと撫でている。ふぁあ、と大きな欠伸をした銀時が上体を起こそうとすると、土方は急に、それまでよりも口淫のスピードを速め出した。

「んっ、ちょっ…もう出…」

その数秒後、銀時は高まるまま土方の口内に精液を吐き出した。寝起きでまだ力が入りきっていなかったためか、銀時はいつものように土方の髪を引き寄せることは無かった。銀時は少し荒めの息と身震いと共に、射精を終えた。土方の口内から性器を抜き、ふぅと一息つきながら銀時は後ろに倒れ込んだ。

そして土方は、口内にその精液を含んだまま起き上がり、銀時の上に乗りあがった。銀時のだるそうな顔を見下ろしながら、顔をゆっくりと近づけて行く。

「そんなに焦らなくてもよ、もうちょっと経ったらまたガンガ――ンッ!!んンっ!?」

土方は銀時の顎を固定するや否や唇を合わせ、その隙間から舌を捻じ込んだ。いつもの流れで口を開けて舌を絡ませてこようとした銀時に、土方は感謝した。土方の口内から苦みを含んだ粘つきが減っていくのは、銀時の口内にどろり、どろりと移り、流れていくからである。顎を力の限り固定され、土方が舌を奥まで伸ばしてきたために、銀時は口を閉じることが出来ず、流れ込んでくる生臭く苦い液体を口内に溜めるばかりであった。荒い二つの息の合間に、いい加減にしろと銀時が両手で土方を引きはがそうと試みる。しかし、土方は呼吸を忘れたかのように口移しを続け、時折唇の角度を変えて深みを増すようにしている。多少力の差はあれど、重力を味方につけてしまった土方に、銀時は敵わなかった。不快な苦みであったが、上から落ちてくるのには耐えきれず、酸素が欲しいことも相まって、銀時は遂にごくりと喉を働かせてしまった。嚥下するのには適していない体勢、そしてまったく慣れていない銀時の喉には、その粘った感触が残ってしまっている。そればかりではなく、内側の頬にも、上顎にも、舌の裏にまで、その不愉快な味が微妙に張り付いている。
自らの口内の液体が全て消えたところで、土方はやっと唇を放した。その瞬間、銀時が土方の肩を勢いよく払いのけ、急いで体を起こすなり、苦しそうに咳き込み始めた。土方は自身の口元をてきとうに拭ってから、覗き込むようにして銀時に近づいた。

「見事なアホ面だな」

その土方の一言に、銀時が未だ苦しそうに噎せながら、片目で睨みをきかせてくる。その目つきにごくりと生唾を飲み込みながら、土方は片頬を緩ませた。

「ドSってのも、大したことねェんだな」

嚥下しきれなかったらしい、銀時の口元にある残骸を、土方は小さく舐め上げた。何度味わったことだろう、自分にとってはもう、慣れきった味でしかない。

銀時は顔を伏せたまま突然に、土方の喉を真正面からひっ捕らえた。そしてそのまま、首をベッドに押し付けるようにして、勢いよく土方を押し倒した。後頭部にシーツ音を受け、土方は天井の淡い光を背にして陰になっている銀時の顔を見上げた。性器だけが露出しズボンが半分しか下がっていない銀時の姿は、どうみても滑稽で、余裕の欠片もなく、その表情は切羽詰まったものだった。

「……煽ってんだよな?」

「……さぁな」

圧し掛かる重みのまま絞まる首に、土方は背筋から込み上げるぞくりとした歓喜を押し殺した。