Title/痛覚 ;R18
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細身ではあるが強靭な筋肉に覆われた腰を容赦ない力で引っ掴み、ギリギリまで引き抜いた後一気に最奥を目指して内臓を穿つ。すると喰い千切ってやろうとでもいうように熱く絡み付いてくる内壁に、神経が焼き切れ意識を飛ばしそうになるのを必死で堪えた。どちらのものとも知れない犬のような呼吸音が、さして広くない部屋に充満する。土方は時々耐えきれなくなったようにあぁ、とかうあ、とか掠れた高めの母音を発する。その度に我に返って恨めしそうにする余裕は、流石にもう残っていないらしい。かくいう俺も、いつものような軽口を叩く余裕などこれっぽっちもない。ほぼ無言のまま、快楽を求め狂ったように腰を打ち付ける。向こうも負けじと身体ごと焼き尽くしそうな熱を持って喰らい付いてくる。肌が擦れ合う音と、繋がった箇所から漏れる卑猥な水音と、浅い呼吸音が混ざり合って鼓膜から脳天を犯していく。思いやりなんてものは全くと言っていいほどない、獣じみたセックスを俺と土方はする。

仰け反って露わになった喉元に噛み付くと、土方の身体がぶるぶると震えた。絶頂が近い。汗が目に入って視界が霞んだ。乱暴ともいえる動作でもう一度先端まで抜き出し、物欲しそうにひくつく後孔に押し付けるようにねじ込んだ。腰に脚を回され、ぎゅうっ、と内側に形どられるかのようにきつく締め付けられ、肩口に思いきり歯を立てられて、俺は何度目かの欲望を吐き出した。すかさず土方のものを勢いよく上下に扱くと、艶のある黒髪を振り乱し、全身を痙攣させ声にならない声をあげて、すぐに土方も果てた。腹の上に申し訳程度に散った白濁は、色が薄く粘度も少ない。さすがに力尽きて、俺は土方の上に覆いかぶさった。耳元で、同じく精根使い果たした様子の土方の乱れた呼吸の音がする。いつもは冷たい指先が、幾分かの温もりを持って俺の頭から首筋をなぞる。突如のしかかってきた疲労に何をするのも億劫になって、そのまま目を閉じた。
雨の匂いがする。

「雨降ってる?」
目を開けると、濡れた髪をタオルで拭きながら土方がこちらに戻ってくるのが見えた。いや、と土方は答えた。変だなと思った。もしかしたらシャワーの音と勘違いしていたのかもしれない。
まだ毛先から雫を滴り落としたまま、土方は枕元に腰掛けた。縋るように手を回す。そのうちに煙草の匂いが辺りに漂ってくる。土方の口から吐き出される白い煙が、薄暗い部屋に際立って見える。黒の着流しに顔を埋めて、スン、と鼻で大きく息を吸い込んでみた。土方の匂いがする。
「銀時」
土方は静かに俺の名を呼び、太腿に乗り上げた俺の頭を撫でた。もう元の冷たい指先に戻っていた。手つきは先程交じり合っていたときとは打って変わって、別人のように優しい。土方がこうやって俺を呼ぶとき、その瞳がどれだけ穏やかに細められるかを知っている。たまらなくなって、腕の力を強めた。
「そのうち降り出すかもな」
土方は独り言みたいに言って、二本目の煙草に火を点けた。頬に冷えた雫が垂れ落ちた。触れる手の心地良さに、このまま何も考えずに眠ってしまいたくなる。銀時、ともう一度土方が俺を呼んだ。やがてやって来た無音が身体全体を包みこむ。カーテンの隙間からわずかに覗く空は白んでいる。雨の匂いがする。遥か遠くの方から近づいてくる涙の気配によく似ている。