Title/無題
Presented by K
 

 

いらっしゃい!―――って、坊主。あんたかい。今日はもう終わりなのかい?また兄ちゃん困らせてんじゃないだろうね。ああ、すまんすまん。そんな目で睨むんじゃないよ。臆病な俺の心臓が泣いちまうじゃねぇか。
しかし、一人で来るなんて珍しいね。誰かと待ち合わせかい?はっ、息抜き?何言ってんだい。あんたは年中ストレス発散してんじゃないか。ついこの間もあんたんとこの兄ちゃんが嘆いてたよ。いい加減始末書から解放されたいってな。ま、その話聞いてたのは俺じゃないんだが。ほら、あれだよ。よく此処に来る…そうそう、あの兄ちゃん。二人とも下戸だからそんな呑んじゃァなかったけどね、楽しそうにしてたよ。最後は潰れて背負われて帰ったけどね。
おや?何か不服そうだねぇ。大好きな兄ちゃん取られて悔しいのかい?おわっ、悪い悪い!そんな物騒なもん持ち出すんじゃねぇや。揶揄って悪かったよ。
でも実際ね、あんたや大将以外といるとこ見て安心したのさ。あの緩い兄ちゃんにしてもそうさ。昔は一人で来ては呑めもしねぇ度数の高い酒頼んで、俺相手に愚痴って管巻いていたもんさ。え?傍迷惑?そりゃ、いつまでも店閉められねぇのは困ったもんだが、俺ァ心配でね。酔うのはいいさ。酒に呑まれるのも悪くはねぇ。でも楽しくねぇ酒はいけねぇ。酒は楽しんでこそ意味があるもんだと俺は思うね。まァ、あんたにゃまだ早い話かもしれねぇがね。
ほら、そんな表情してねぇで呑みな。生憎今日は客が少ねぇんだ。あんたに相手してもらわなきゃ俺は暇なんだ。あ、年中暇だろうって?相変わらずきついねぇ、坊主。でもまァ、手のかかるのが二人いなくなって持て余してるっちゃぁそうだからね、責任持って相手しとくれよ。あんたの好きなきんぴらサービスするからさ。今夜くらい素直になりな。
じゃあ、そうだね。くそったれな明日に乾杯、―――隊長さん。