04
金髪の彼に思わず目を奪われる。
「俺K大3年の忍足謙也や。よろしゅう」
「O大3年の△△〇〇です」
「同い年かあー。学部は?」
「医学部です」
「えっ、ホンマに?俺も医学部なんや!」
テンポよく話すその人に学部を言えば、なんと同じ医学部らしく驚かれる。
そして、失礼ながら私も少し驚いた。所謂医大生になってからそれなり経つし、色々な人を見てきたつもりだけど、金髪の人と会うのは初めてだ。
「そう言えば△△さん、何注文するか決まった?」
「あ、えーと…梅酒とサラダにします」
私がそう言うなり、忍足くんは直ぐに店員さんを呼んで注文してくれた。
「ありがとう」
「△△さんってコンパとか苦手なん?」
「えっ……」
思わぬ核心をつく言葉に絶句。
いや、全くもってその通りなのだけど……。初対面の人に分かるほど表情に出ていたのだろうか。それではあまりにも失礼だ。
「あ、あんまり得意ではないかな……」
笑顔を引き攣る。せめてもの愛想を保たなければ。
「俺もやねん。今日も友達がどうしてもって言うから来たんやけど」
安心、安堵。どうやら忍足くんもこちら側の人間だったらしい。
「私も似たような感じかな。前に誘われて断った穴埋めだから」
「何や俺たち似とるなあー」
笑顔の忍足くんにつられて私も笑顔になる。
すると忍足くんは黙り込んでしまった。心なしか顔がほんのりと赤くなったような…もしかしてお酒はあまり強くないのだろうか。
「忍足くん…?」
「…!あ、いや、すまん。ちょっと考え事をな…」
本当に大丈夫なのかと心配するが、忍足くんは大丈夫と言う。
「それより△△さんこそ大丈夫なん?ペース早いとすぐ出来上がるで」
「私お酒強いから平気だよ。飲んでも全然素面と変わらないの」
「女の子でそないに強いと男は大変やな。…!!今のは聞かなかった事にしてや!!」
「う、うん…」
焦ったように言う忍足くんに、頷けば安心したような笑顔を浮かべる。よく分からないけど、とりあえず笑ってくれてるならそれでいいかと梅酒の入ったグラスを傾けた。
それから暫く忍足くんと話している内に時間は過ぎ、コンパはお開きとなった。
そして今は、駅まで送ると言う忍足くんの言葉を最初は断りつつも、譲らない忍足くんに負けて送ってもらっている。
「あ!せや△△さん、アドレス教えてくれへん?」
「うん良いよ。赤外線でいいかな?」
携帯を取り出して赤外線でお互いのアドレスを交換する。
「今日は△△さんおったから楽しかったで」
「私も忍足くんと話せて楽しかった。今日はありがとう」
「おん。また連絡するわ」
二カっと笑う忍足くんに、私も笑い返す。
「うん。送ってくれてありがとう」
手を振って別れると振り返してくれた。
忍足くんは優しい人だなあ。
でもどこかで見たことある様な…まあ気のせいだよね。
この時の私はそう思っていた。
(彼女が気付くのはもう少し先のお話)