07
「お待たせ致しました」
△△さんと話し込んでいたらスタッフが料理を運んで来たので一時中断する。
「美味しそうだね」
「せやな」
目の前の料理に△△さんの瞳が輝いとる。
「いただきます」と言い彼女が料理を口に運ぶのを見て俺も自分の料理に手をつける。
「美味しい!」「うまい!」
思わず見つめあってお互い笑いあう。
「本当にここの料理美味しいね」
「せやろ?前に友達が教えてくれたんやここのこと」
美味しそうに食べる△△さんを見て俺も嬉しくなる。
初めて△△さんに会ったのは高校2年の夏。
道に迷った彼女が俺達に道を尋ねてきた。
その時俺は彼女に恋をした。
別れる時のあの笑顔に。
名前も何も知らへん相手やけど好きになった。
あれから彼女のことを忘れられなかった。
そして月日だけが過ぎてった。
せやけど奇跡っちゅうのはホンマに起こるらしい。
あの子と再会した。
向こうは俺のこと覚えとらんかったけど、そんなん関係あらへん。
俺が覚えとるからええんや。
「△△さんは彼氏とかおるん?」
「っ!?…ゲホッ」
いきなりの質問に驚いたのか飲んでいた水を喉に詰まらせた△△さん。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん。…あのえっと…彼氏はいないよ」
「なら好きな人は?」
「…いないかな」
それを聞いて信じられへんくらい安心する自分がいた。
とりあえず他の男の影はなさそうや。
「私今まで誰とも付き合ったことないんだ」
驚いた。
全然そんな風には見えへんかったから。
「そうやったんか…」
「今まで告白とかされても何だか…。あんまりピンとこなくて…友達にもよく変わってるって言われて…」
伏し目がちに言う様子に、ああ、この子は真面目な子なんやと思う。
「そないなことあらへん」
「本当?」
「おん。告白されて好きでもないのに適当に付き合うような子よりも、△△さんみたいに真面目で純粋な子の方が俺はええと思う」
俺の言葉に驚いた様子の△△さん。
そして次第に表情が明るくなり。
「ありがとう忍足くん」
笑顔で俺にお礼を言った。
あかん。
ホンマに好きや。
(笑顔の君に恋をした)