ぎんいろのはねを てにいれた!
「私の話を聞いてくれたお嬢さんにこれを」
そう言って老人は私の手を取って何かを乗せる。
「綺麗……」
自分の手の方に視線を向けると、外灯の光に照らされている訳でもないのに、銀色に光輝いている羽根がそこにはあった。
「こんな綺麗なもの、いただけません……!」
「いえいえ、私が持っていても何ですし、貰って下さい」
返そうと思ったが、老人は受け取ってくれず、頂くことに。
「この羽根は海の神様と呼ばれるポケモンの羽根と言われています」
「海の、神様……」
「貴方の旅にどうか連れて行って下され」
老人はそう言いながら立ち上がる。
「ポケモンセンターまで送りましょう」と言ってくれた老人の厚意に甘えて、ポケモンセンターまで送って貰うことに。
「ありがとうごさいました!」
「いえいえ。お嬢さんの旅が良いものでありますように」
そう言って老人は来た道を戻って行った。
家逆だったのかな……申し訳ない事をして貰っちゃったな。
ポケモンセンターに入り、チェックインした部屋に入る。
荷物を置いて、先程貰った羽根を見つめる。
「ポケモンの羽根……このサイズだから、相当大きいポケモンなのかな…?」
あの人は様々な地方を旅した、と言っていた。
その中で見つけたものだろう……と言うより、間違いなく貴重なものなんじゃ……。
「博士なら何か知ってるかな?」
私は部屋を出て、テレビ電話が設置されている所へ向かう。
電源を入れて、博士に電話を掛けてみる。
……今考えたら、夜に電話掛けるのはまずかったかな。
しかし、かけてしまったのは仕方ない。頭の中でそう思いながらコール音を聞きながら待つ。
「お、ナマエちゃんか!どうしたんじゃ、こんな時間に?」
「あ、博士。こんな時間にすみません。聞きたいことがあって」
暫くして電話が繋がる。
画面に映されたのは今や知らないと言う人の方が少ないであろう有名な人物である『オーキド博士』である。
私と幼馴染み二人にポケモンをプレゼントしてくれた人物でもある。
私のパートナーのフシギダネ…今はフシギバナまで進化したが、彼とはそこで出会い、今では頼れる私のエースである。
「とある方からポケモンの羽根を頂いて……博士の知識をお借りしたいんです」
「なるほど。では、そのポケモンの羽根を見せてくれんかの?」
私は博士に見えるように羽根を見せる。
博士は顎に手を当てながら「ふむふむ」と言っている。
暫く悩んでいる素振りを見せた後、博士が口を開く。
「これは……伝説のポケモン『ルギア』のものではないかな?」
「伝説のポケモン……!?」
博士の口から出た言葉に驚く。
あの人、実はとんでもない人だったのでは!?
「ルギアはジョウト地方で語られている伝説のポケモンで、海の神様とも言われておる」
「あ…、そういえばこの羽根を頂いた人もそう言っていました」
「ルギアはそう見れる存在ではない。羽根すらなかなか見れるものではないんじゃがな……」
博士の言葉に背筋が凍る。
あの人やっぱりただ者じゃない……!!
「あ、あの博士」
「なんじゃ?」
先程、『ジョウト地方』という単語が出てきた事で、言いたいことがもう一つ出来た。
「___私、カントー地方を出たいです!」
私の言葉に博士は一瞬動きを停止するが、すぐに笑顔を見せてくれた。
「この羽根を頂いた人から、いろんな地方を旅した話を聞いたんです。それに感銘を受けたんです。だから、カントー地方を出て、いろんな地方を旅したいんです!」
「そうかいそうかい。前からよく相談されていたから、見つかって嬉しいわい」
博士の言葉に視界が一瞬潤む。
度々博士に悩みを話していたのだ。自分が旅する理由を見つけられないと。……お母さんには言えなかった事だったから。
母は私が旅することを反対していたが、幼馴染みの二人がいるなら、と渋々承諾してくれたのだ。
旅を止めさせられるから言えなかった訳ではない。
心配ながらも応援してくれるのを知っていたから、言い出せなかったのだ。
「二人には言ったのかの?」
「いいえ。今話せば二人の邪魔になりますから」
今二人はチャンピオンを目指して高見を目指しているんだ。
そんな中、二人の邪魔はしたくない。
「私、もう一度カントー地方を巡るつもりです。いつもは二人がいたから景色なんてまともに見ていなかったんですけど、今度は一人で回ってみようと思ってます」
「ナマエちゃんが決めたなら、ワシは何も言わんよ」
「……本当に、迷惑掛けてごめんなさい」
「いいんじゃよ。後輩を導くのも先輩トレーナーとしての役目だからな」
オーキド博士と少し雑談をした後、通話は終了した。
明日はどうしようかな。
そう考えながら部屋に戻った。
2021/08/11
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