対 戦国伊賀島中



「待っていたわよ、名前」


……会場を後にしたかったが無理だった。
目の前には、仁王立ちの春奈。
今、僕の顔は引きつっているだろう。


「貴女、“光のストライカー”って呼ばれていたんですってね?」

「あ、えーっと……」


あれ、今日私服だよね?髪、結んでないよね?
春奈の中では、髪を下ろした僕は双子の兄認識じゃなかったの?
頭を回転させて、何て返そうか必死に考える。


「ちょーっと私と、お話ししましょ?名前?」

「は、はい……」


春奈に腕を掴まれ、抵抗できぬまま連行される僕。

辿り着いたのは、外見だけなら見慣れた春奈の家。
「入って」と言われたので、「お邪魔しまーす……」と言って中に入る。


「さ!洗いざらい話して貰おうかしら?」


目の前でニッコリと笑っている春奈。……しかし、目が笑っていない。


「まずは……。私に嘘をついていたことを話して貰おうかしら?」

「ほ、ほんの出来心だったんです……」

「出来心?……イタズラが過ぎているんじゃないかしら」

「ヒッ」


春奈の黒い笑顔に短く悲鳴が出る。


「なんでサッカー出来るの隠してたのよ」

「……サッカー、暫くする気なかったからさ」

「じゃあどうして秋葉名戸学園との試合に出てくれたの?」


春奈の疑問の声に、逸らしていた目を合わせる。


「……あの時言った言葉が全てだよ」

「なら、今すぐにでもサッカー部に入りなさいよ。皆、受け入れてくれ」

「そう言うことじゃない」


春奈の言葉を遮る。
「え?」と春奈が声を漏らした。


「……僕のサッカーは、拒絶される」

「どうして……」

「皆、怖いものを見るように僕を見る……!」


怖いものを見るように僕を見るんだ。
あの日、あの試合で一緒に試合をしたチームメイトが恐ろしい者を見るかのように僕を見るんだ。
言葉と表情が合ってないチームメイトに、失望した。
……やっぱり、僕は兄さんがいないとサッカーは無理なんだ、と。


「……ごめんなさい、無理に聞き出すのは良くなかったわ」

「いいよ。春奈はそういう人間だって知ってるからさ」


僕がそう言うと、「それ、どういう意味?」と頬を膨らませた春奈。
そんな春奈の頬に人差し指を指してみた。あ、柔らかい。


「あ、もうこんな時間」

「なら、帰らせて貰おうかな〜」


春奈はこれ以上聞いてこなかった。
……いつもなら根掘り葉掘り聞いてくるのに。


「じゃ、また学校で」

「ええ」


見送りに来た春奈を振り返って、玄関の扉を閉じた。





2021/02/21


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