光と闇



試合再開
先程の動きが嘘の様に、イナズマイレブンの人達の動きが変わった。


「何あれ……、さっきと全然違うじゃん!」


これが、伝説のイナズマイレブンの実力…!
理事長を見上げると、視線に気付いて親指を立ててグッドサインを出した。

9番の人の必殺技が雷門イレブン側のゴールへと向かう。


「“熱血パンチ”!」


円堂さんが“熱血パンチ”で向かい打つが……


「へ?」


響いたホイッスル。
なんと“熱血パンチ”が全く通用しなかったのだ。
9番の人が使った必殺技はいとも簡単にゴールを奪ったのだ。


「これが、イナズマイレブンの実力……!」


そう言った僕の口はニヤリとした形をしていたと思う。

染岡さんの必殺技“ドラゴンクラッシュ”がイナズマイレブン側のゴールへ向かう。


「!あれは、“ゴッドハンド”!」


雷雷軒のおっさん、“ゴッドハンド”使えるんだ……!
いとも簡単に染岡さんの必殺技を雷雷軒のおっさんは止めたのだ。
……僕と勝負してほしいなぁ。今度頼んでみようかな。

ボールは2番の人に渡り、その横に試合開始直後にキックオフシュートをしようとして失敗した11番の人が。


「……!なんだありゃあ!」


二人による必殺技が雷門イレブン側のゴールへ向かっていく。
円堂さんは反応に遅れて、ゴールを許してしまった。
これで同点か〜、と思っていると、


「審判さん!タイム!タイム、お願いします!」


円堂さんが鬼瓦のおっさんにそう言っていた。
……サッカーにタイムなんてないんだけど。
が、鬼瓦のおっさんはどうやらタイムを許してくれたようだ。ま、練習試合だし、あってもいいでしょ。


「ほぉう……、あれをやるつもりなのか」

「あれ?」


暫くすると雷門イレブンがグラウンドに入り、試合が再開。
横にいた理事長の言葉に首を傾げる。


「先程イナズマイレブンが使った必殺技だよ。名前は、“炎の風見鶏”」

「炎の、風見鶏」


さっきの必殺技“炎の風見鶏”って言うんだ。
どうやら豪炎寺さんと風丸さんが挑戦するようだ。
しかし、お手本の二人と比べたら息があってないようだ。


「……うーん、何が二人と違うんだろう」


手すりに肘をついて、様子を見つめる。
あの技の評細を知らないので、何がダメなのかが分からない。
2回目の“炎の風見鶏”が雷門イレブン側のゴールに入った。


「……ん、影野さんだ」


ゴールの横にいつの間にか影野さんがいた。
円堂さんが豪炎寺さんと風丸さんを呼び、影野さんが二人に何かを伝えている。

試合が再開し、ボールが二人の元へ渡る。


「…!」


先程まで合っていなかった動きが、合わさっている。
もしかしたら、先程影野さんは“炎の風見鶏”の仕組みに気付いたのかも知れない。


「“炎の風見鶏”!」


豪炎寺さんと風丸さんの口から出たその必殺技は、イナズマイレブン側のゴールへと飛んでいき、ゴールへと突っ込んでいった。


「……おや、もう行っちゃうのかい?」

「はい。元々今日は病院へ行く予定だったので」

「もしかして何処か怪我でも?」

「いえ、お見舞いです」


離れた僕に、理事長がそう声を掛けてきた。
今日は兄さんのお見舞いに行くつもりだったのだが、まさかこんな事をしているとは思わなかったのだ。


「そうだったのか。止めてしまって悪かったね」

「いえいえそんな。お陰で良いものが見れました。気にしないで下さい」


理事長の言葉にそう言いながら、顔の前で手を交差させる。
僕が見たいと思ったから留まっただけだ。理事長が悪く思ってしまう所などない。


「所で、君の名前を伺っても良いかな?」

「あっ、すみません。そういえば、言ってませんでしたね」


背を向けようとした所を、素早く理事長の方へ身体を向ける。


「苗字。苗字名前です!ではまた、理事長!」


理事長に一礼し、僕はその場を後にした。





2021/02/20


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