対 秋葉名戸学園



「我慢できなかったって……?」

「サッカーは今でも好き……大好きだ。だけど、僕には一緒にやってくれる人がいないから…」

「なら入部しろよ!一緒にサッカー、やろうぜ!」


僕の言葉をかき消すような勢いでそう言い、笑顔をこちらに向けた円堂さん。


「そんなことで悩んでたのか?だったら入ればいいじゃねーか!それに、今日一緒に試合やって、なんともなさそうだったし大丈夫!すぐに慣れるって!」


目の前まで来て、僕の肩をポンッポンッと叩く円堂さん。
……そう言う事じゃ、ないんだけどなぁ。
でも何故か、その眩しさは


『名前』


サッカーに対して憎いという感情を持っていた僕に手を差し伸べてくれて、光を当ててくれた兄さんに良く似ていた。


「……それは無理だな」

「え?」


円堂さんの気の抜けたような声を聞きながらフッと笑う。


「だって、雷門弱すぎ。僕、合わせるの精一杯だったし!」


僕がそう言うと、円堂さんはえ?え?と不思議そうに声をあげている。
円堂さんの後ろから、染岡さんの「何だとォ〜!?」という声が聞こえるが無視だ無視。


「……でも、」

「でも?」


円堂さんの大きな目と視線が合う。


「楽しかったよ。……一緒に試合出来て」

「へ?」

「栗松を通して僕を誘ってくれた事、感謝してる。……だけど、それはそれ」


未だに変な声を出している円堂さんに背中を見せる。
そして、空を見上げる。


「そうだね…、優勝したら入ってあげる」

「優勝したら入ってくれるんだな!?」

「うん。……あ、言っておくけど地区予選じゃないよ?」

「え?」


僕の後ろにいる円堂さんの方へと、首だけ振り返る。


「全国。……全国で優勝してから、僕を誘ってよね?」


……君達には期待してるんだからさ。
あ、でもそうなったら来年になっちゃうか。まあ別にいいや。
自分の発言を思い返して一人で納得しながら更衣室に向かって歩いて行った。
後ろから聞こえる円堂さん達の声を聞きながら、グラウンドを後にした。





2021/02/20


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