対 御影専農中
後半戦開始
御影専農はディフェンスラインを下げ、完全に守りの意思を見せた。
…試合終了まで、このプレーを続けるって訳ね。
「ったく、吐き気のするようなサッカーだぜ」
「……同感だよ」
どうやら鬼瓦のおっさんも、僕と同じ感想らしい。
そういえば、鬼瓦のおっさんってサッカーでもしてたのかな。
「ねぇ、鬼瓦のおっさんってサッカーやってたの?」
「いや。俺の親友がサッカーやってたんだよ。それで、そいつが監督だったチームのファンなのさ」
と言うことは、鬼瓦のおっさんはサッカーをやってた人ではないのかな?
「親友さんが監督を務めたチームの?」
「ああ。『イナズマイレブン』っていう、な」
「…イナズマ、イレブン?」
「40年前、雷門中にあったサッカーチームさ」
鬼瓦のおっさんの言葉に僕は驚く。
…雷門中、元々サッカー部がなかったと思ってたけど、ちゃんとあったんだ。
「FF優勝間違いなしってくらいの強いチームでな、俺の親友が監督だったのさ」
「…優勝間違いなし?優勝したんじゃないの?」
鬼瓦のおっさんの言葉の中にあったものに疑問を抱く。
「…FF決勝には出場できなかったんだよ」
「できなかった?」
「その話は置いといて、試合見ろ」
その続きが気になって仕方ないのだが、鬼瓦のおっさんはそれ以上口を割らなかった。
…一体、何があったんだろう。
鬼瓦のおっさんの親友さんと、そのチーム『イナズマイレブン』に。
イナズマイレブンについて気になっていたけど、鬼瓦のおっさんは話す気がないようだ。
仕方ないので変わる気配のない試合状況を眺めるため、フィールドへと視線を向けた。
2021/02/18
prev next
戻る