邂逅! イタズラ好きな捻くれディフェンダー
「で、何か私達にご用でも?」
「あ、そうそう……」
「実はこちらにエイリア学園から襲撃予告が来たと聞きまして」
木暮は一旦置いておいて。
僕達がここ漫遊寺中に来た目的はエイリア学園だよ。
「襲撃予告? ああ、そのことですか」
「俺達も一緒に戦おうと思ってさ!」
「……そうですか。ではどうぞ、案内いたします」
と言うわけで、サッカー部の人に案内して貰う事に。
黙ってその人の後を着いて歩いていると、いつの間にか隣に春奈がいないことに気づく。
後ろを振り返れば何かを見ているらしい。
「おーい、春奈ー! 置いてくよー!」
「え? あ、待って!」
しかたなく春奈が来るまで待ってあげる事に。
こちらに駆け寄ってきた春奈に僕は疑問を投げかける。
「なにかあった? ジーッと見てたみたいだけど」
「え? な、なんにもないわよ」
「そう? じゃ、早く行こ」
変な春奈。
そう思いつつもみんなの後を二人で追った。
***
「なるほど。お話はよく分かりました」
現在、漫遊寺中サッカー部の道場内。
僕達はサッカー部と対面していた。……正座で。うぅ、足が痺れる……。
「それじゃあ、俺達と戦ってくれるんだな!」
「……いいえ。私達は戦うつもりはありません」
え、話分かってくれたんだよね?
なのに一緒に戦わないの?
「戦うつもりはない?」
「はい。私達がサッカーをしているのは、あくまで心と体を鍛えるため。争うためではないので。彼らには私達が戦う意思のないことを話して、お引き取りいただきます」
「お引き取り?」
「おい、お前ら話聞いてたのかよ!? そんな話が通じる相手じゃねーって言ってんだろ!」
「それはあなたの心に邪念があるからです」
「じゃ、邪念?」
え、染岡さんを馬鹿にしたの……と思ったけど、向こうは真面目な顔して話してる。本当にそう思ってるって事なのか……。
でも、染岡さんの言ってる事が正しいと思う。
「心を無にして話しかければ、伝わらぬことはありません」
「な、なんだよコイツら……」
「では、失礼致します。修行の時間ですので」
「あ、おい! ちょっと待てよ!!」
円堂さんの制止の声も聞かず、漫遊寺中サッカー部は道場を後にした。
そして取り残された僕達。
……えぇー、こんな結果あり?
***
時刻は夕方
漫遊寺中サッカー部にエイリア学園と戦う気がないことを知った僕達は、とりあえず学校の近くに止めてあるキャラバンに戻っていた。
「……あのー、なんで僕料理手伝わされているんでしょうか」
「木野さんが目金君の手当してるから人が足りないのよ。あとは女子だからよ」
「塔子さん、あっちにいますけど」
もう1人の女子である塔子さんを挙げたけど、聞く耳持たず。
……絶対僕が近くにいたから呼んだよね、この人!!
そう思いながらも渡されたピッケルを手にジャガイモの皮を剥く。
「いやいややってる割には手際がいいな」
「え、ま、まぁ……ばあちゃんの手伝いやってますから」
古株さんに褒められてちょっと照れる。
ま、まあ人並みにはできると思うよ!
「……というより夏未さん。その料理下手、どうにかなりません?」
「あら。私に向かって口答えするのね」
「だ、だって事実」
「ほら見なさい! ジャガイモの皮むきで実がこれだけ残ったのよ!!」
僕抜けて良いかなー……。
自慢げにジャガイモを見せる夏未さんから視線を外す。
そうだ、春奈に助けて貰おう!
「ねぇ春奈〜。ちょっと夏未さんをどうにか……春奈?」
僕の近くにいる春奈に助けを求めようと振り返った。
だが、どこか春奈は元気がなさそうで。
「春奈? どうしたの、大丈夫?」
「え? う、うん大丈夫よ!」
「……本当? なんか今日、ずっと様子おかしいよ?」
「本当に大丈夫だから」
まあ本人がそう言うなら、あんまり追求しないでおくか。
もしかしたら、僕みたいに知られる事を嫌がるタイプかもしれないしね。
2022/2/21
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