参戦! 雪原の皇子



「みんな、自主トレで汗をかいたでしょう。近くにお風呂があるから、すぐに入ってきなさい」


おにぎりを食べていた時、瞳子姉さんから言われたのがこの内容だ。
休憩エリアに戻ってきたときに見当たらなかったのは、お風呂を探していたからなのかなぁ。

周りがお風呂へ向かっている中、僕は瞳子姉さんに借りたタブレットを返しに行く。


「貴女も沢山汗をかいたでしょう? さっさとお風呂に入っちゃいなさい」

「……えー。僕、昔みたいに一緒に入りたいなぁ」

「冷えて風邪を引いては元も子もないわ。彼らと一緒に入ってきなさい」

「……はーい」


瞳子姉さん、気を使ってるのかな。
確かに、一部の人は瞳子姉さんに対して不満を抱えているみたいだし……。

瞳子姉さんとメンバーの関係性について考えながら脱衣所へ歩いていた時だ。


「円堂! 一緒に入ろうぜ!」


「「「うわあああああああっ!!?」」」


聞こえた声に顔を上げる。
そこには男子が着替えているであろう脱衣所のドアを開けている塔子さんだった。


「「と、塔子さん!!」」


春奈と秋さんが慌てて塔子さんを回収する。
……いや、着替えている所に入るとかすごすぎ。僕だったら絶対できない。

そんなことを思っている間に女子の順番が回ってきた。


「いっや〜! 塔子さんすごいですね! 裸かも知れない男子の集まりに突っ込んでいくとか!」

「それ、貴女も言えないと思うけど……」

「え? なんで?」

「なんでって……。前にみんなの前で堂々と服を脱ごうとしてたじゃない」

「あれはちゃんと中に着てるから、見られても大丈夫なんです!」


前に大会に出たとき、その場で着替えないといけない事態が発生したのだ。
その時にいちいち会場から出ずにその場で着替えられるようにと、中に黒いインナーを着るようにしたのだ。


「お前、ほっそいなぁ」

「ずっと動いてるんで、太ってはいないと思いますよ!」

「嫌味にしか聞こえないわね」


塔子さんの言葉に正直なことを話せば夏未さんにそう言われた。
ジト目で着替えている夏未さんを見ていた時だ。


「……何よ、ジッとみて」


僕が見ていたのは上半身の膨らみ……包み隠さず言えば胸である。
次に木野さん、春奈、塔子さんの胸を見て、自分の胸を見た。


「なんで僕だけ……」

「あ、そう言うこと……」

「気にしてたんだ……」


直球で言うと、僕は貧乳である。
これも男子に間違えられる要素の一つだったりする……。


「まだ中学生だし、希望はあるさ……うん」

「たしか、運動しすぎるとあまり大きくならないって聞いたような気がするわ」

「僕からサッカーを取ったら、何も残らないですよ!!」


木野さんと春奈が気を使ってくれてたのに、夏未さんの言葉でトドメを刺された。
その場で落ち込む僕を、着替え終わった春奈が浴場へ引きずるのだった……。



***



「苗字、その格好は……」

「スクール水着はダサいので持ってきてませんけど。何か?」

「破廉恥だぞ」


効率よく時間を使うため、混浴をしている一同。
タオル1枚ではなく、水着を着ることになった。


一応水着も持ってくるように言われていたので、僕が持ってきた水着は……上がビキニで下がショートパンツの水着だ。
……ビキニとはいっても、胸を強調するようなものではなく、チューブトップ型のビキニである。

そんな僕の格好を破廉恥と言っているのが鬼道さんである。


「なんか、苗字が男に間違えられる理由が分かった気がする」

「その堂々とした立ち振る舞いとか」

「あとは……うん」

「ちょっとそこ!! 気にしてるんですから言わないで下さい!!」


一ノ瀬さんと土門さん、風丸さんの発言に胸を隠しながら叫ぶ。
そんな僕を見ていた鬼道さんが口を開いた。


「……大胸筋を鍛えたらいいらしいぞ」

「……鬼道さん。もしかしてそういう趣味をお持ち…うッ!?」


素直な感想を口にしようとした瞬間、鬼道さんからチョップされた。
しかも地味に痛い!


「まぁ男ってそんなもんだろ」

「おい土門」

「あの、僕女なんですけど……」

「わりぃわりぃ」


絶対反省してないよね、この人!
でも強く言い返せないんだよなぁ……。だって、これだけ間違えられるなら男の子の方が良かったって思う事が結構あるんだもん……。





2021/11/3


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