未来日記は記せない
「所で悠一」
「うん？」
悠一が落ち着いた所で聞いてみたいことがあった。
「お前まだ名前の事、好きなのか？」
「！？」
明らかに動揺している悠一の反応に口元がニヤける。
抑えられる気がしないので、そのままにしておく。
……ごめんな名前。お前の可愛い顔を俺が気持ち悪くしてるかも。見えないからわからないけど。
「ま、まぁ……」
「そうかそうか！ お前は意外と一途だもんな。初めて名前と会ったときに一目惚れして、そのままずーっとす…」
「その話はいいから！！」
ここにいるのは俺と悠一だけだというのに、まるで誰かに聞かれているからやめて、と言いたげな反応にイタズラ心が増す。
だけどまぁ、確かめたいことを確認できたから、ここまでにしてやるか。
「俺は応援してるからな〜。頑張れよ〜？」
「う、うん」
「……俺は悠一になら名前を託して良いと思ってる」
「えっ……？」
悠一は目を見開いて俺を見た。
「なんだよ、その顔」
「だって香薫さん、名前ちゃんのこと誰にも渡さないってずっと言ってたから」
「まあそうだけどさ。言わなかっただけでずっと思ってたよ」
……それに。
「俺だってずっと生きてるわけじゃない。現にもう死んでしまったしな。俺がいなくなった後、信頼できる人に名前を任せたいって思ってた」
「忍田さんがいるじゃん」
「確かにまさっちは頼れるけど、保護者的な意味じゃなくて……名前と同じ人生を歩んでくれる相手って意味」
こんなにも名前を想ってくれて、名前の事も理解している悠一だから任せても良いって思ったんだ。
そういえば悠一は小さく「……ありがと」と言った。
「ま、まずは名前に好かれる所からだけどな。そうじゃないと進展は厳しいだろうし」
「ははは、そうだね……」
悠一の乾いた声が静かに響く。
……お前なら名前を幸せにしてくれると思ってるんだぜ？
これは冗談でも嘘でもない……俺の本心だ。
「さて、弄るのはここまでにして……どうだ、悠一」
「……何が？」
首を傾げてこちらを見る悠一。
この反応……”視えて”ないな。
「俺の会話が読めてなかったんだろう」
「！」
どうやら図星のようだ。
やっぱりそうか。
「生前の俺に対しても未来視は機能していた。ま、戦闘面では機能していても俺の方が速いから意味を成してなかったけど」
「それはそうだったけど……って、まさか……」
「なんだ、心当たりがあるのか？」
俺の問いに悠一はコクりと頷いた。
「ブラックトリガーを使う名前ちゃんと戦った時……まああれは香薫さんだった訳だけど、全く行動が読めなかった」
「ほう」
「でも、それはいつも香薫さんと戦っている時みたいにおれの副作用を上回っているんじゃなくて……何も視えなかった」
何も視えなかった、か。
……これは俺の予想が的中してそうだな。
「それに、何をきっかけに頻度が増しているのか分からないんだけど……名前ちゃんの未来が視えない時があるんだ」
「悠一。俺はその答えを知ってるぞ」
「え、本当？ 何が原因なの？」
「……名前の未来が読めない時がある。その頻度は何を区切りに増しているか分からないが、明らかに始めに感じた当初より増えている……そうだな」
「……うん」
悠一の話を聞いて確信した。
何故名前の未来が偶に視えない事があるのか。
その原因は＿＿＿
「悠一。その原因は俺だ」
「！！」
明らかに異分子である俺でしかないんだよ。
2022/2/13
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