殺し屋レオン:序
side.矢田桃花
『中村さん!!』
『三村!前原!!』
『おいお前等、しっかりしろ……!!』
クラスメイトが倒れた。
どうやら殺せんせーを狙う第三の者が仕込んだものらしく、その人物によると人工的に作り出した”ウイルス”らしく、治療薬は向こうがもつ物一つのみ。一度感染してしまえば個人差はあるものの最終的な結末は”死”。
その人物は治療薬と交換に”完全防御形態”に変わり果てた殺せんせーを寄越せと要求した。しかし『背の低い男女二人に持ってこい』との条件付きだ。
___向かう場所は普久間殿上ホテルの最上階だ。
***
ここに来るまでに、まずはこのホテルの裏側から崖を登って侵入。
次に多くの警備員がいた入り口を、ビッチ先生の”魅せる”技のお陰で突破。
入り口を突破した後はお客さんのフリをして最上階を目指すだけだ。烏間先生曰く、向こうはお客さんのフリをして襲ってくる可能性があると言っていたが……ビンゴ。
三階中広間
そこで出会ったのはクラスメイトにウイルスを盛った暗殺者だった。
優月ちゃんの完璧な推理でその作成者が彼である事が確定した。
しかし烏間先生はその暗殺者の毒によって行動不能になってしまった。……毒を受けたにも関わらずその暗殺者を行動不能に仕返していたけど。
五階展望回廊
そこで堂々と待ち構えていた暗殺者は、暗殺者としては珍しい素手を得意とした暗殺者だった。……ただし、何故か語尾に「ぬ」を付ける変わった人だった。まあ外国の人だったからちょっと納得したけど。
そんな暗殺者を相手にしたのはカルマ君だ。
素手を武器にしているから危険なのはそれだけだと思っていたのに、まさかの毒使いの暗殺者の麻酔ガスを持っていた。隙を狙って攻撃を仕掛けたカルマ君にそのガスが……と思ったけど、まさかのカルマ君も麻酔ガスを持っていた。どうやらさっきくすねたらしい。
という訳で何とかその暗殺者も無力化する事に成功。まあ、あの後カルマ君が何かしていたけど……私は何も見てない。うん。
……もしここに名前がいたらどんな反応してたのかな……。
「皆さん!この上がテラスです」
「『バーフロア』……問題の階ね」
……と、こんな感じで暗殺者を倒しフロアを突破して来た私達。
現在六階。バーフロアである。
律によると、ここからVIPルームに繋がる階段はバーフロアの奥にあるそうだ。
裏口の鍵は掛かっているらしく、バーフロアの中から鍵を空けるしか方法がないという。
「俺達は目立っちまうな……」
大人数で且つ、体調の優れない烏間先生がいるとなると磯貝君の言うとおりかなり目立つ。
「先生達はここで隠れてて。私達が店に潜入して、中から裏口を開けるから。こういうところは女子だけの方が怪しまれないでしょ?」
「おぉ〜!」
「うんうんっ」
このリゾートに来る前に行われた訓練の休憩中、ちょっとした興味で名前に聞いた事がある。
ドラマとかのシーンで偶に見る、こういった場所は女子の方が怪しまれないのか、と。
『ああ、それは確かだ。基本、性別上で女は男に勝てない。だから男は女には勝てると言った根拠の無い自信を持っている事が多い』
『そういう状況の時、やっぱり名前は女性の格好して潜入するの?』
『その事の方が多いかな。まあ男だろうが女だろうが、どちらに変装してようと人は寄ってくる。男も女もな』
『え、そうなの?』
『別に男が女ばかり狙うと決まってないだろ?男好きの男もいるし、女好きの女もいる。まあそんなのは稀だから気にしなくて良いよ』
『へぇ〜』
『なんだ。桃花はこういった話に興味があるのか?』
『いや、単に気になっただけっ』
あの時は聞かなかったけど、あれは名前の場合だけでは……。変装した姿を一度も見た事ないから確かな事は言えないけど、初めて来た時もマントで身体隠れてたから男子か女子か分からなかった。私的には女子かな?って思ったけど。
「名前だったらこんな時、どのように突破してたのかな……?」
「確かに。気になるわよね〜」
と、雑談しながらある人を待っている。
その人物は……
「き、着替えてきた…よ……」
烏間先生が「女子だけでは危険だから」と言って同行する事になった唯一の男子……そう、渚だ。
「じゃあ、時間もないし行きましょ」
「うぅ……」
さて、ここにはどんな刺客がいるのか……それともいないのか。
2021/03/30
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