期末の時間



五英傑とE組の様子を暫く眺めていた僕なのだが……


「あっ、苗字さん!」


茅野が僕を発見し、思いっきりこちらを見て名を言ったお陰で注目を浴びた。E組は勿論、五英傑と呼ばれている男子生徒もこちらを見るわけで。
ま、見られる事に対しては何とも思わないけどさ。


「楽しそうな事を賭けていたじゃないか。どちらが多く一位を取れるか……それ、僕もやっていい?」

「す、好きにしろ!」


捨てるように言葉を吐いた後、五英傑の4人は逃げていった。


「“命は簡単に賭けない方がいいよ”……良いセリフじゃないか、潮田渚」

「もしかして最初から聞いてたの?」

「大体最初から、かな」


椅子を引っ張り、自分に当てられた席に腰掛け足を組む。
質問が来るまでの暇つぶしにと持ってきた本を机に置くと、茅野が反応した。


「なんか難しそうな本持ってきたね……」

「あぁこれ? 人間の身体の構造についての本だよ。何かしら役に立つ事でも書いてないかと思って見てたんだ」

「理由が物騒だ……」


物騒とはなんだ、物騒とは。勉強熱心と言って欲しいね。


「それより、さっきの男共……ん゛んっ、男子生徒達、五英傑っていうらしいね。そんなにすごいのかい?」

「今男共って言ったな……」

「で? 何がすごいんだい?」

「えっとですね……」


奥田によると、五英傑というのはこの椚ヶ丘中学校の特進クラスA組に所属する生徒の中でも特に成績の良い五人の生徒達の事を指すそうだ。
特進クラスの中で最も成績の良い人、ね……。


「その中でも一番頭が良い奴がいるのよ」

「へぇ、誰?」

「生徒会長であり、うちの理事長の実の息子である『浅野学秀』って奴」


浅野学秀、ねぇ……。
理事長殿の実の息子、か。


「……興味ないって顔だな」

「ないよ。実質、テスト以外で関わる事なんてないだろ?」

「まぁ、関わるっていったらイベント事くらいしかないもんね〜」


僕が興味を持つ人間なんて、ごく少数なんだ。僕に興味を持たれることは光栄なんだよ?……ねぇ、潮田渚。


「じゃあ、その浅野学秀って奴が僕の敵というわけか」

「浅野より成績良い人なんて見た事ないよ? 勝てんの?」

「やるなら強者の方が燃える。その方が潰したときの絶望感を与えやすい」

「ほんと良い性格してんね……」


他人の絶望する顔、泣いている顔……そういう表情は大好きだ。
殺し屋は加害者だ。そして狂っているからこそ成り立つ。本当、僕に適した職業だよ。





2021/03/26


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