番外編:見た目で判断するのはよくない


※以下番外編の内容を少し含みます
 L猫とお酒



「いやあ、すまないね!」

「いえいえ、これくらいお安い御用だよ!」



モンド城で過ごすようになってから、ある程度の人と顔見知り程度にはなってきた。そこで困ってる人がいたら、アタシにできることであれば手伝いをしていた。


「いやぁ助かったよ! そんな細い体のどこに力があるのか知りたいね」


言えない……。アタシが普通の人間ではないこと、それが影響して怪力であることも。


「またアタシの手伝いが必要だったら、いつでも言ってね!」

「勿論さ!」

「けど、ナマエちゃんを見てると、ノエルを彷彿させるね」

「のえる?」


ふと、おじさんから人物名と思う言葉が出てきた。
聞いたことのない名前だな……誰だろう?


「ノエルは西風騎士団でメイドとして働いている騎士見習いなんだ」

「へぇ、そんなのがあるんだ」

「彼女もナマエちゃんと似て、怪力なんだぜ」


どうやらその子は女の子らしい。
……え、普通の女の子だよね?
アタシみたいな改造人間じゃないよね??

……天性のもの、なのかな。ちょっと羨ましいな。アタシはこの身体になったことで、怪力は勿論、戦える力も手に入れたから。


「ちょっと、会ってみたいな……」


のえるって子、西風騎士団のめいどさんなんだよね?
めいどが何なのかよく分かってないけど、西風騎士団の関係者ならアルベドは知ってるはず!



***



「ノエル? 勿論知ってるよ。西風騎士団のメイドだからね」



帰宅後。
帰ってきたアルベドにのえるって子について聞いてみたところ、やっぱり知っていた。

ついでにめいどについても聞いてみた。


「メイドってなあに?」

「簡単に言えば家事をしてくれる女性を指す言葉だね。使用人って言えば分かるかい?」

「使用人なら分かるよ! へぇ、メイドとも言うんだ」


でも、メイドだからって怪力になれるとは思わないんだけど……。おじさんたちに聞いた感じだと、アタシと同い年くらいって言ってたし。

……この見た目の年齢はおよそ10代後半ではあるけれど、実年齢は500歳以上である。アルベドは除くけど、モンド城には普通の人間しかいないはずだ。


「ノエルがどうかしたのかい?」

「実はね……」


今日お手伝いしたおじさんたちからノエルという女の子の名前を聞き、西風騎士団のメイドさんだってことを知ったから、アルベドが知っているかどうか聞きたかった、ということを伝えた。

アルベドはそれを聞いて「なるほど」と呟いた。
……あ、アルベドはアタシが人のお手伝いをたまにしてること知ってるよ。でも、何に対してのなるほどだったんだろう?


「確かに彼女は所々で怪力とは聞くね。それがどうかした?」

「いや……普通の女の子が怪力って聞かないじゃん。そもそも女の子は非力なイメージだし」

「君もその女の子に入るけど?」

「性別しか合ってないよ! アタシ半分機械だもん」


アタシのイメージで申し訳ないんだけど、やっぱり女の子って守ってあげたい可愛さがあるじゃない?
そのノエルって子が女の子で力持ちってなると……え、ムキムキってこと!?


「うぅ、そのノエルって子を見てみたい……!」

「好奇心として受け取るなら、明日ノエルを見かけたときに暇な時間を聞いてきてあげようか?」

「いいの!?」

「うん。動機はどうであれ、君の交友関係が広くなることは良いことだからね」


アルベドはアタシの好奇心を了承してくれたようで、ノエルさんに話をつけてくれるって!

……諦めたのではって?
違う、絶対違うもん!!


「どんな子なのなかぁ、楽しみだなぁ……」


……こんな感じでワクワクしながら待つこと数日。
アルベドは次の日にノエルさんに空いている日を聞いて来てくれて、彼女の都合の日に約束をつけてくれた。

その約束の日になったわけなんだけど……。


「初めまして、ナマエさま! 私はノエルと申します」

「は、初めまして……ナマエです。よろしくお願いいたします、ノエルさん」


約束の場所にいたのは、可愛らしく華奢な女の子だった。とてもじゃないけど、怪力とは縁がないようにしか見えない。

それに、めちゃくちゃ丁寧……!
ついアタシも丁寧な口調意識しちゃった。


「私に敬語は必要ありません。楽にお話しされてください」

「わ、分かった。でも、様は堅苦しいからやめてほしいかぁ……」

「まぁ、そうだったのですね! 大変失礼いたしました……では、どのように及びしたらよろしいでしょうか?」


そして、めちゃくちゃ堅い!!
アタシ偉い人じゃないし、畏まられる人じゃない!!


「ナマエでいいよ。様とかいらない、普通に呼んで!」

「で、では……ナマエさん、でよろしいでしょうか?」


さんをつけられるような人でもないんだけど……ノエルさんは元々このような人なんだと思った。だからこれで我慢しよう。


「うん、それで大丈夫だよ、ノエル!」


向こうも頑張って砕けた呼び方をしてくれたんだ。アタシもそれに応えないと!


「ほらナマエ、彼女に聞きたいことがあるんだろう?」

「はっ、そうだった! ねぇノエル、女の子に聞くのが申し訳ないんだけど……力持ちって本当?」


アルベドに言われ、アタシは本来の目的であった内容……怪力というものについてノエルに尋ねた。勿論、小さい声で。
だって見た目的に年ごろの女の子だもん、絶対に気にするって!


「はい! そのおかげで皆様へお手伝いできますから、自分にこの力があってよかったと思っています!」


……しかし、返ってきた言葉は恥ずかしさを一切持っていなかった。他への貢献が何よりも嬉しいんだと答えてくれた。

この子、健気すぎない……?
いや、この子の怪力に健気という言葉な似合わないんだけど、性格というか綺麗な心の部分では健気って言っていいでしょ……!


「おばさん、なんだか感動してきた」

「お、おば!? 何を仰っているんですか!! ナマエさんは私とそう変わらないでしょう!?」

「まぁ一応年上だけど、ボクと同い年だから年齢はそう離れてはいないね」


見た目はね、アルベド。
でもそれってアルベドにも言えるからね。見た目だけはノエルと年齢差がないように見えるって話。

なんだったら、この場ではアタシの方が年上だから!!
あくまでモンド城にいるための設定で同い年なだけだから!!!


「アタシが力になれることがあれば、いつでも言ってね!!」

「それは私の言葉です、ナマエさん。何か困ったことがあればいつでも仰ってください!」


とりあえずはノエルにとって頼れる存在になりたい、という気持ちで言ったんだけど……まさか同じことを言われるとは。
……あ、ちょっと意地悪しちゃお。


「じゃあ、ノエルがまじめすぎることが困ってることかな」

「えぇっ!?」


やっぱりね!
ノエルはきっと驚いて何と返すか困るタイプだと思ってたんだ!


「というわけで、親睦を深めるために遊びに行こう! まじめなところはいいけど、気を抜くことも大事だよ〜」


仲良くなりたいのは本当。
だけど、まじめさという純粋な心をいつか利用されないか……それが心配になってきたんだ。

自分でいうのもあれだけど、アタシは無知故に騙されて……この身体になっちゃったから。ノエルには同じような目に合ってほしくない。


「あ、アルベド。今から女子会だから来ちゃダメだよ」

「はいはい。ちゃんと門限までに帰ってくるんだよ」

「えー! 今日くらいいいじゃんか。ダメ?」

「ダメ」

「うー、アルベドっては堅いんだから! 分かったよ、ちゃんと時間通り帰る」

「うん、それじゃあいってらっしゃい」

「いってきまーす!」


女子会って一度は言ってみたかったんだ!
というわけでこれからはノエルと二人っきりで遊ぶとしよう。アルベドがちょっと残念そうな顔をしてたのは、きっと気のせい……だよね?



「あの、ナマエさん」

「なあに、ノエル」

「アルベドさまとは、その……付き合っていらっしゃるのですか!?」


ふと、ノエルがアタシに尋ねてきた……と思えば、なんて質問を!!


「えぇっ!? ち、ちちち違うよ!! 全然、全然そんなんじゃないって!!」


……あれ?
なんでアタシ、こんな必死になって否定してるんだろう?
別に嫌いだから言ってるわけじゃない。ただただ、なんか恥ずかしい……?


「そうなのですか? とても仲良しに見えましたし、距離も近かったですし……」

「む、昔からの友達だよ〜。その縁でモンド城で暮らしてるんだ」

「なるほど!」


ふぅ、なんとかごまかせた……。でも、間違ったことは言ってないし、うん。



「では、アルベドさまのことはどう思っていますか?」

「!!?」


そう落ち着いていると、ノエルがとんでもない質問をしてきた。驚きすぎて声が出なかったよ!


「そ、それは勿論、好きだよ? と、友達として……」

「そうなのですね。でも、アルベドさまはそんな風に見えなかったような……」


友達として好きなのは本当だ。それをノエルに伝えると、特に疑いはしなかったけど、なぜかアルベドの話に。しかも、なんかそんな雰囲気の話をしてるし!


「いつも通りにしか見えなかったよ?」

「アルベドさま、私たちが離れるまですっとあなたのことを見ていましたよ」


そうにっこり微笑むノエルが嘘をついているように見えなくて。
……わ、分かった!
保護者のつもりなんだ!!


「絶対アタシが何かしでかさないように見てただけだと思う……」

「私には違うように見えましたが……もしかしたらアルベドさまは、ナマエさんとは違う気持ちを持っているかもしれませんね!」


……うすうす感じていたけど、まさかノエル……。


「ねぇノエル、まさか……アルベドがアタシに気があるんじゃって言いたいの?」


読んでるかしらないけど、あまりにも恋愛小説っぽくない?
アタシ、そんな経験一度もしたことないから分からないけど、そんな物語チックなことがあるわけ……。


「私にはそう見えましたよ? たまに読む恋愛小説に出てくる二人の男女のような、そんな雰囲気でした!」


ドクン。
……この脈は、一体どういう意味?

ありえないって否定したいアタシの気持ち?
それとも……期待?





2024/03/21


(管理人の心の声)
そろそろれの字の雰囲気に持っていきたい


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