番外編:猫とお酒


※安定の捏造あり
※以下番外編の内容を少し含みます
 L猪突猛進は周りを見えなくする
 L滅んだ国が引き合わせた縁



「あっ、こんなところに猫ちゃんが!!」


昼時、モンド城を歩き回っていたとき。ふと見かけた猫ちゃん。モンド城には沢山の猫ちゃんが暮らしているみたいなんだけど、野良猫っぽく見えないんだよなぁ。全員放し飼いってやつなのかな?


「あっ、どこに行くの!?」


そう思いながら眺めていると、猫ちゃんが歩き出した。どこへ行くのか気になったアタシは着いて行くことに。


「この道の先にあるのは、鹿狩りとか冒険者協会ぐらいじゃ?」


まあ、猫ちゃんから教えて貰う新たな発見もあるだろうし、行ってみよう!
……猫ちゃんに着いて行くこと数分。猫ちゃんが止まった場所は。


「きゃっつてーる?」


看板に書かれた店名を読み上げる。何だ此処、知らないぞ……?
アルベド、なんで教えてくれなかったんだろう。鹿狩りの近くにまだお店っぽい所あるって言うのを!!


「あら、キャッツテールは初めてかしら?」

「!?」


アルベドに対し文句を心の中で言っていると、後ろから声を掛けられた。振り返ればそこには見た事の無い女性が。


「初めましてお嬢さん」

「は、はじめまして……」

「ふふっ、猫に興味を惹かれたのかしら? 貴女の外見から判断して、申し訳ないのだけど、お酒とは考えにくくて」


お酒?
……え、もしかしてここ、酒場なの!?

というか今、アタシ子供と間違えられた?
確かに外見は10代の頃から変わってないけど!! だって機械は改造して貰えないと変化できないんだもん!


「あ、アタシはもうお酒を飲める年齢だもん!!」


カーンルイア基準でいいなら、とっくの昔にお酒が飲める年齢は過ぎてる!
だってアタシ、もう500歳以上はあるもん!!
……あれ、と言う事は私お姉さんじゃなくておばあちゃんってこと!?

いや、でもお酒が飲めるという点は間違っていないはず!!


「そうなの? でも外見で判断するのは良くないわね……。誰か他に貴女がお酒を飲めることを証明してくれる人はいる? お父さんとかお母さんとか」


けど、目の前の女性はアタシがお酒を飲める年齢であると疑っているようで。うぅ、アタシがお酒を飲めることを証明してくれる人……そもそもアタシは両親を見送っている立場だから、モンド城にいるわけもなく。

……となれば、アタシが頼れるのは1人だけ。


「あ、アルベドなら……」

「アルベド? もしかして、西風騎士団の天才錬金術師のこと?」

「う、うん」

「へぇ、彼と知り合いなのね。分かった、じゃあ彼を連れてきてくれる?」


そう、アルベドである。
というより、この女性もアルベドのことを知っているんだ。西風騎士団がモンドという国にとって重要で周知の存在なのは分かったけど、個人の名前も知られるようなものなの?

……そう言えば前にスクロースが言ってたっけ。アルベドはすごい人だって。だからモンド城では有名な人なんだろうな。


「わ、分かった」


別にお酒を飲みたいという訳じゃないけど、子供扱いされたのがちょっとモヤモヤしただけだ。普通に考えたらアタシ、あの女性よりうんと長く生きてるもん!
アタシにとってあの女性は子供同然だよ、うん!


「今、西風騎士団のところに行っても大丈夫かな……」


アルベドは今日もお仕事だ。当たり前だ、アタシが普通じゃないのである。何か仕事をした方が良いのでは、とアルベドに相談したことがあるんだけど……。


『君は自由でいてほしいんだ。モラのことならボクに任せて』


遠回しに働かなくて良いって言われちゃったんだよねぇ……。どうやらアルベドはものすごくお金持ちらしく、モラ___アルベドに教えて貰ったんだけど、この通貨は璃月を統治する神が作ったらしく、その神様の名前から取って名付けられてるんだって__を持て余しているんだって。だからアタシを養うくらい問題無いんだと……羨ましい。

てなわけで、アタシはアルベドに養って貰いながら日々暮らしている訳なのである。って、話が逸れた……。


西風騎士団には何度か出入りしたことがある。何だったら、高頻度で図書館を出入りしているのだ。その図書室の管理をしているというリサさんとも仲良くなったよ!

だから西風騎士団の所に行くのは割と慣れてるし、周りから見ても「ああ、いつもの人か」程度の認識のはず!

というわけで、キャッツテール前で会った女性の誤解を解いて貰うべく、アルベドのいる西風騎士団へと向かった。



***



「こ、こんにちは」

「あぁ、ナマエさん! 今日も図書室に?」


西風騎士団に着くと、見張りの騎士がアタシに気づいて声を掛けてくれた。いつもだったら「うん!」と頷くところだけど、今日は違う。


「あの、アルベドって今忙しいかな」

「アルベド長官ですか? 恐らく工房にいらっしゃると思いますが、確認してきましょうか?」

「いいの? ありがとう!」


今日はアルベドに用があるのだ。騎士さんは深く事情は聞かず、アルベドの元へと向かって言った。騎士さんが「どこかで腰を落ち着かせ待っていて欲しい」と行ってくれたので、図書室に入ってすぐ目に入った椅子に座った。あ、図書室にいるってことは伝えてるよ!


「うーん、本でも読んで待ってようっと。何にしようかなぁ」


図書室は情報の詰まった空間。いろんな分野の情報が存在していて、アタシの知らないことを綴った本が沢山ある。図書室に来るのは、ある意味勉強とも言える。

どれにしようか見ていると、偶然目に入った本のタイトルが気になり、それを手に取った。


「あ、これ……」


中身をめくってみれば、この本は人体に関することを綴った本だった。……アタシにとっては、あまり見たくない内容。アタシは正常な人間ではないから、正しい人間の人体図を見ると、悲しくなってくる。

……ただ、健康的な身体がほしかっただけなのに。永遠を生きる身体がほしいわけじゃなかったのに、って。


「……。……ナマエ」

「!? うえぇっ!!?」


本を眺めていた時だ。耳元でアタシを呼ぶ声が聞こえたのは。
図書室は静かにしていないといけないって場所だから、シーンとしていたって事も理由に入るけど……。


「あ、アルベド近い……っ!!」


囁き声にも聞こえた待ち人……アルベドの声が近距離で聞こえたんだもの。吐息によるくすぐったさからきたのか、ものすごくびっくりしたと同時に顔が赤くなる感覚がした。


「すまない、君が何を読んでいたのか気になって、つい覗き込んでしまったんだ」


なんでだろう、謝る気がなさそうに聞こえたのは気のせいかな。
とりあえず動揺したことをごまかしたいので、アルベドの問いに答えることにした。


「人の身体のつくりについての本だよ。ちょっと気になって」

「ふむ……興味深い内容だね」


それで、ボクに用があって来たって聞いたんだけど。
……そうだった。図書室に来たんじゃなくて、アルベドに会いに来たんだった。


「あ、あのねアルベド。ここに来る前にキャッツテールっていうお店を見つけたんだけど……」


本来の目的であるキャッツテールで出会った女性に年下に見られたことを伝えた。お酒は飲めるでしょ、だってアタシ500歳以上あるもん!!


「どう見たって未成年にしか見えないよ、ナマエは」

「そんなぁ!!」

「そんなにお酒が飲みたかったのかい?」

「ちょ、ちょっとだけ憧れはあったかな……」


けど、実年齢だけではどうにもならないようで。やっぱり誰しも見た目から入るよね、これは仕方ない……仕方ないけど!!


「……分かった。ちょっと人気のない場所に移動しよう」

「え? うん分かった」


アルベドに手を引かれ、アタシは西風騎士団を出る。噴水がある場所に設置されたベンチに座ると、アルベドも続いて隣に座った。


「で、なんで移動したの?」

「キィに聞きたい事があったんだ。キィ、起きてるかい?」

「”私の起動はオリジナルと同じです、マスターアルベド”」


どうやらキィちゃんに聞きたい事があるらしい。一応話の流れは年齢とお酒だったんだけど……。


「君は酒に含まれる成分がどのような影響を及ぼすのか、理解できてるかい?」

「”はい。オリジナルのために学習しました”」

「え、いつの間に……」

「”オリジナルが睡眠中に入れ替わって、人間の構造について勉強していたのです。オリジナルの身に影響がでない範囲で行ってたので、ご心配なく”」


あの一件の後、アタシはキィちゃんと入れ替わるスイッチ的なものをコントロールすることを止めた。だから、事実上キィちゃんは自由にアタシの身体を支配権に持つ事が出来る。ガイアさんの件でキィちゃんがアタシの身体をほぼ無理矢理支配権に持てたのは、これが理由だったり。


「”オリジナルの身体は15歳から成長が止まっています。遺伝子情報から得たものですので、間違いないかと”」

「そんなことまで分かるの……?」

「”これも解析できるよう学習したんです”」


なんでだろう、無機質な感じに聞こえるはずなのにドヤッてしてるように聞こえたのは気のせいかな……。


「15歳……少なくともモンドでは飲酒できないね」

「が、ガーン……」

「”オリジナル、お酒を飲みたかったのですか?”」

「う、うん。ちょっとだけ飲んでみたかった」

「らしいよ」


もう何百年も前の事だから、いつ自分がこんな身体になったのか覚えてなかったよ。15歳の頃だったんだ……へー。


「ナマエの外見もあって悩んだけど、一応飲酒できる年齢で身分証明書を作ってるよ」

「えっ、ホント!?」

「でも、キミの身体に悪影響を及ぼすならダメだ。いくら少なかったとは言え、人間に必要な機能を抜かれているんだ。慎重にならないといけないだろう?」


……普通の人間だったら当然のようにあるもの。それがアタシにはない可能性がある。だから、何が切っ掛けでバグが見つかるか分からない。アルベドはアタシ以上にこの問題を大きく見てくれていて、心配してくれている。

……ただの好奇心が、大切な人を心配させてしまった。


「ごめんなさい、アルベド」

「ボクは謝ってほしかった訳じゃないんだ。それに、危機感を持ってほしかったわけじゃない。日常にありふれたものがキミに牙を向くことが怖いんだ。それが無害に見えないものであればあるほど、見落としているんじゃないかって思ってしまうんだ」


アルベドはどうしてこんなにも優しくしてくれるんだろう?
前にアルベドは「興味を無くすことはない」って言ってくれたけど……。


「”酒に含まれる成分が気になるようであれば、私が本来の人間には在った臓器の役割を担うことができます”」


そう思っていると、キィちゃんからこんな提案が。
……一体、どこまでアタシの身体について把握しているんだろうか。半分機械だけど、半分は人間であるアタシ。後天的にアタシの身体へとやってきたキィちゃんは、もう一人のアタシでもあるから、自分が存在する器であるアタシの身体を自在に操る(という表現で良いのか分からないけど)ことができるみたい。

アタシはそんなことできないのに……内部にいるからこそ出来る技なのかな?


「それなら……まぁ、大丈夫かもしれない。けど、心配は心配だから、今から早退することを伝えてくるよ」

「え、なんで??」


あれ、今日アルベドお仕事だよね?
そんな急に帰りますって言って良いの??


「まず、キミが言っていた女性はキャッツテールの店主、マーガレットさんだよ。彼女にナマエの年齢について誤解を解かないといけないだろう?」

「ねぇ、別日という考えは?」

「ボクは今できそうなことであるなら、後回しにはしたくないかな。何よりも___キミのことなら」


なるほど、思い立ったら即行動したいんだね、アルベドは。
じゃあ……その厚意に甘えようかな?

でも、ずっと頭の片隅で思っていた事をどうしても言いたい。


「でも、そんな簡単に早退して良いの? 具合悪いわけでもないみたいだし、なんだったら理由アタシだし……」

「同棲している人関係で早退する、って言えば通じるさ」

「ほへー、なるほどねぇ……え? 今なんて言った??」

「同棲している人関係で早退するって伝えるって言ったけど、どうかしたかい?」

「ど、どどどど同棲っ!!!?」


なんか今日のアルベド、少し前に興味本位で見た恋愛小説に出てきた王子様みたいな事言う!!


「使う言葉間違えてるよ!! 同居人だよ、同居人!!!」


言ってなかったかもだけど、今のアタシはアルベドの家に居候しているんだ。だから、決して同棲ではない、同居人である。

……だというのに、何故アルベドは当然と言いたげな雰囲気でさらっと同棲と言ったんだ!?


「ふふっ、顔真っ赤だけど」

「アルベドのせい!!」

「それはすまなかった。ほら、気になるお酒を飲みたいんだろう? キィがいるなら少し安心だけど、やはりボクも知っておかなくちゃいけない。すぐに早退することを伝えにいくから、待っているんだよ」


アルベドは同棲という発言を訂正するどころか、とても楽しそうな笑みを浮べて西風騎士団へと消えていった……。
それを見送った後、キィちゃんが「”脈拍が1.3倍増加、加えて体温も上昇しています”」と、ものすごくどうでもいいことをアタシに報告してきたんだけど、すぐに返答できる余裕がなかった……。



***



「それじゃあ行こうか」


数分後、アルベドは本当に早退してきた。あまりにも顔に出ていたのか「今日の作業指示については伝えているし、メモにも残してきたから大丈夫。明日も仕事には出るし、アラートがあってもその日のうちに解決できるものしか出ないって分かってるしね」とアタシに言ってきた。

その言葉聞いたアタシの心情は「すごい……」しか出なかった。これを語彙力がないというんだよ、分かった?


……話を現実に戻して。
アルベドに手を引かれること数分。少し前に見たばかりの酒場、キャッツテールに着いた。その近くには見覚えのある女性が。


「こんにちは、マーガレットさん」

「あら、アルベドさんじゃない。そちらは……あぁ、さっきの女の子!」

「ど、どうも」

「本当にアルベドさんと知り合いだったのね」


アルベドの言う通り、あの女性はマーガレットさんという名前みたいだ。うぅ、この人がアタシを見る目、完全に子供のように見られてるんだけど……。


「ナマエから話は聞いてるよ。彼女の年齢はボクと変わらないから、飲酒については問題無い」

「あら、そうなの?」

「外見が幼いから未成年に見えるのも仕方ないけど、彼女は歴とした成人女性だよ」


仕方ないじゃん、未成年のうちに半分機械にさせられちゃったから、成長する事が無くなっちゃったんだもん。


「アルベドさんが言うなら大丈夫そうね。疑ってごめんなさいね、お嬢さん」


そう思ってるなら、微笑ましそうな感じで言わないでくれるかな!?
お嬢さん呼びが、もう子供扱いされてる気がするんだけど!!


「お詫びに、当店自慢のバーテンダーが作ったスペシャルドリンクはどう?」

「飲む!!!」

「そういう所が未成年って思われるんだよ、ナマエ」

「はっ! ……コホン、喜んでいただきます」

「言った後に言い直しても意味ないよ」

「うぅ……」

「ふふっ、とっても仲が良いのね。なんだか見ていて癒やされるわ」


アタシはただ純粋にスペシャルドリンクっていうのが気になっただけなのに、アルベドが変なこと言うから……!
良いもん、スペシャルドリンクで気分直すもん!

そう思いながらマーガレットさんの後を歩いて、キャッツテールへと入店する。……数歩入れば、そこにはもうモフモフの生き物が!!


「わあああ……っ、猫ちゃんがいっぱい!!」

「うちの猫たちはどう?」

「かわいい!!」


お出迎えしてくれたのはたくさんの猫ちゃんだった。あぁ、可愛い……絶対モフモフしてる、おさわりオーケーかなぁ?
後で聞こうっと!


「それは良かった。でも、貴女の目的はお酒でしょ?」

「スペシャルドリンク!」

「元気ねぇ。それじゃあ、お詫びのスペシャルドリンクを作って貰おうかしら。ディオナ!」


マーガレットさんの問いに対し正直に答えた後、彼女は人の名前らしき言葉を告げた。マーガレットさんが見つめる視線を追ってみると、そこには可愛らしい耳がぴょこっと出ていた。

そして……


「なーに?」


現れたのは……猫耳に猫の尻尾が生えた、小さな女の子!!

……え、どういうこと!?
可愛いよりも先に、人間なのか猫なのか分からず頭がこんがらがってしまった。


「彼女、お酒を飲んでみたいんだって。だから初めてのお酒を貴女に作って貰おうと思うの」

「えー、お酒を飲んでも意味ないよ。なのに飲みたいの?」


すごい、本物みたいに動いてる……あれ、衣装とかじゃなくて本当に生えてるってこと?
どういう原理で動いてるの??


「って、聞いてる?」

「ナマエ?」

「……はっ!! ごめんなさい、じろじろ見てしまって!!」


猫耳と猫の尻尾が生えた小さな女の子とアルベドの声によって、我に返った。初めて見たから、ついつい見つめすぎてしまった……。


「あぁ、その様子だとあたしの耳と尻尾が気になってるんだね。たまにいるの、そう言う人」

「そ、そうなんだ」

「あたしはカッツェレイン一族の人間で、この耳と尻尾は一族の血族故のもの。だから貴女には珍しいかもしれないね」


そうだ、自己紹介がまだだったね
そう言ってバーテンダーさんはアタシを見上げた。


「あたしはディオナ。キャッツテールのバーテンダーやってる。本当ならマズいお酒を作りたいところだけど……」

「えっ、美味しいお酒が飲みたいよ……」

「貴女みたいな純粋な人に意地悪する趣味もないし、今回は真面目に作るから安心して」


ディオナと名乗った猫ちゃんバーテンダーさん。今、真面目にお酒を作るって言ったんだけど、いつもは適当に作ってるって事……?
それお店的に大丈夫なのかな、というより店主の前で言って良いの……?


「ディオナが作るお酒はどんな素材を使っていようと美味しくなるの。だから多少のことは見逃してあげているわ」

「いつかマズいお酒を作って、お酒を無くすことがあたしの夢にゃ!!」


マーガレットさんの言葉に対し「いいんだ……」と心の中で思っていた時だ。ディオナさんがニャって言った事に、アタシは反応してしまった。


「か、可愛い……!! 猫ちゃんだ……!」

「あたしは猫じゃないにゃ!!」

「でも『にゃ』って言った!!」

「言いたくて言ってるわけじゃにゃいの!!」

「はわわ……!! 癒やされる……」

「あたしを猫扱いするならお酒作らないよ」

「あああ作ってください、ごめんなさいいいい!!」


ディオナさんに猫というワードは禁句みたいだ。気を付けよう……。
一旦話に区切りがついた後、アタシも自己紹介をして、やっとお酒を作って貰う事に。

作る前にディオナさんが好きな味について聞いてくれたんだ。どうやら初めてお酒を飲むアタシの好みに合わせて作ってくれるんだって。そんなこと簡単にできるものなの……?

その質問に対し、アタシは甘いものが好きと答えた。別に好き嫌いがあるわけじゃないけど、やっぱり甘いもののほうが口に入った時、幸せになれるじゃない?


「できたよ、ディオナのスペシャルドリンク!」

「わあああ……!!」


なんでだろう、ただのって言うと失礼かもしれないけど、飲み物なのに輝いて見えるのは気のせい?
いいや、気のせいじゃない!


「いただきます!!」


そうそう、ディオナさんがお酒を作ってくれている間にアルベドから教えて貰ったんだけど、お酒を飲むときは先に何か食べておいた方がいいんだって。だから待っている間にサービスって出されたクッキーを食べたよ!

というわけで、出されたドリンクもとい、お酒を流し込む。


「あ、ナマエお酒を一気飲みするのは……」

「お、おいし〜〜〜っ!!!」


なんかアルベドが言ってるような気がしたけど、お酒が美味しくて気づかなかったや!


「いつもは適当に作ってるけど、今日は特別!」

「そんなことしなくても、ディオナが作るお酒はいつも美味しいのよ」

「じゃあじゃあ、また飲みに来ていい?」

「別にいいけど、酔っ払い介抱はしないからね!」


なーんて会話を弾ませていたんだけど、隣でアルベドがずっと黙り込んでいたことに、この時のアタシは気づかなかった。



***



「また来てね」


満足したアタシはアルベドと共にキャッツテールを後にする。外に出れば、モンド城は夕日に照らされていた。
後はもう家に帰るだけだ。なので帰路を辿っているわけなんだけど……


「ねぇアルベド。なんでずっと黙ってるの?」


アルベド、何故かずっと考え込んでるんだよね。流石に気になってきたので、声を掛けてみる。すると、アルベドはすぐに反応してこちらを見た。あ、周りが気にならないくらい考え込んでいたわけじゃないんだね。


「いや、あれだけの量のお酒を飲んでもキミは平気そうだから、少し驚いていたんだ」

「キィちゃんのおかげじゃないの?」


人気のない場所になってきたから、キィちゃんの名前を出してみた。さっき言ってたじゃん、自分が何とかするみたいなこと。


「……まぁ、キミの身体についてはキィに聞くしかないか。とりあえずお酒が問題無いということだけ分かって良かったよ」

「美味しかったけど……」

「あれはナマエの好みに併せてバーテンダーが作っただけだ。モンドにはいろんなお酒が出ているから、すべてが君の好みに合うとは限らないよ」


そうそう、モンドってお酒が有名なんだって。たまーに遅い時間まで探索していると、周りの人がお酒の話をしているのを聞くんだ。……まぁ、それが今回飲んでみたくなった理由の1つになるんだけど。

けど、お酒も食べ物と一緒でいろんな味があるんだね。


「そして、あまりにも飲み過ぎるとアルコール依存症っていうものになるから気を付けるんだよ」

「え、依存症……わ、分かった」


流石に病名を出されると焦っちゃう。アタシ、これでも身体が弱かったから、病気が怖かったんだよね……。でも、今の身体は病気とは無縁なのでは?

そうだとしても、半分は人間なわけで。……気を付けよう、うん。


「……とりあえず、またお酒が飲みたいならナマエが好きそうな所を探しておくよ」

「ほんとう!?」

「ああ。今日はキミがお酒に耐性があるか、摂取しても問題無いかを確認するために控えておいたんだ。今度は一緒にどうかな?」


お酒の付き合い……これが、大人の付き合いかぁ!


「うん! 楽しみにしているからね!」


……お酒も飲めたし、これなら未成年ってもう言われないよね?
そう思っていたアタシだけど、裏でキィちゃんがだいぶ働いてくれていたことを後で知る事になる……。

やっぱり本来ある機能を担うのって大変なんだね、ごめんキィちゃん……。





2024/01/18


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