使用目的はそれぞれ


※ver.3.7テーマイベント「決戦! 召喚の頂き!」の内容を含む
※小話「船上の結婚式?」の内容を含む
※ver.3.7にて初登場したとあるキャラクターの年齢を捏造



「七星召喚?」


船に戻ってきた万葉が私に見せてきたもの。それは綺麗な絵が印象的な札だった。


「うむ。今、各地で人気と注目を浴びていると聞いた。名前は知らぬか?」

「聞き覚えがある気がするんだけど……うーん、思い出せない……」


万葉が見せてきた札にはものすごく見覚えがある。私は万葉に連れ出されるまで稲妻を離れた事は無かったので、間違いなく稲妻内で見ているはずなんだけど……。


「父上、母上。何をしておるのか?」

「楓真。何、母上に七星召喚について聞いていたのでござるよ」

「七星召喚!? 確か、宵宮の姉君と綾華の姉君がやっておったのを見た事があるでござるよ!」


友達と璃月港へ出かけた楓真が帰ってきたみたい。そう思いながら楓真と万葉の会話を聞いていたときだ。


「思い出した……! そうだった、宵宮がやってたのを見た事があったんだった!」


そう、宵宮が町の人とやっているのを横で見たことがあったのを思い出した。その時に「名前もやらへん?」って誘われていたけど、当時の私はまだ綾人様に仕えていた身で、あの男に対する復讐で頭が一杯だったから、その話を断ったんだよね。

……きっと宵宮は、気晴らしのためにと誘ってくれたんだと思うのにね。


「母上はやっておらぬのか?」

「え?」

「拙者は持っておるぞ、例の箱!」


そう言って楓真が取りだしたのは、本人が言う例の箱。一体この箱がどうしたのだろう?


「これは七星召喚をする上で必須の道具なのでござるよ。名は秘典の箱と言って、この箱の所有者を探知することができるのでござる」


へぇ、この箱は七星召喚の道具を格納すると同時に、持っている人を探すための機能もあるんだ。


「この所有者を探す機能があったおかげで、ある事件を防ぐ事ができたのでござる」

「ある事件?」

「実は璃月港で蛍とパイモンに会ったのでござるよ。そこで彼女の友人達と知り合ったのでござる。その中で遭ったことなのだが……」


今日万葉は璃月港に出ていたことは知っていた。そこで蛍とパイモンに会ったそうで、彼女達の友人と知り合ったのだそう。
その中でとある事件が起ったそうで、その時にこの秘典の箱の所有者探知機能が役に立ったらしい。


「その時思ったのでござる。名前もこれを持つべきだとな」

「え?」

「常日頃持ち歩いていれば、お主を見失ったとて探す手掛かりになるであろう?」


七星召喚の道具が最悪な結果を防いだ。良いお話だな……と思っていたのに、万葉が口にしたのは本来の使用目的とずれたものだった。


「というわけで名前。今から七星召喚について勉強しよう!」

「何故!?」

「秘典の箱は七星召喚を運営する協会から配布されるものだ。その際、ある程度知識があることを認められなければ貰えないそうだ。お主の身の安全を防ぐためにも秘典の箱は必要でござる……というわけで、拙者が名前に七星召喚を教えるでござるよ」


どうやら万葉は何がなんでも私に秘典の箱を持ってほしいらしい……。だけど、それを貰う為には七星召喚を管理していると思われる協会からちょっとした試験を受けなければならないらしい。


「大丈夫でござるよ、母上! 拙者も教える故!」


そうだった、楓真も持ってるって事はこの試験をやっているというわけで。……って、そういえば。


「ねぇ楓真。あなたそれいつ手に入れたの?」

「宵宮の姉君と一緒に貰ったでござるよ!」


なるほど、宵宮だったか……。私、一言もそんなこと聞いてないんだけど……。まあ、いちいち報告してもらう必要があるかどうかと言われれば、否なんだけどね。


「今璃月港で七星召喚の大会が開催されているのだが、この機会にプレイヤーを増やしたいらしくな。大会を取り仕切っている協会の者の所へ行けば、試験も受けられよう」

「は、はぁ……」

「善は急げ、でござるよ。さぁ、大会が終わる前に秘典の箱を手に入れるために、今日からやろう」

「え、えぇ……っ」


というわけで今日から数日間、万葉と楓真による七星召喚の勉強会が開かれることになった。時間が空いたらすぐ七星召喚について……あまりにも真剣に行うものだから、真面目にやらざるを得なかった。



***



「これが秘典の箱……」


現在、私は璃月港を訪れていた。その隣には万葉がいる。楓真は友達と七星召喚をすると約束があるそうで、船に残っている。


万葉と楓真のおかげで、なんとか七星召喚の必須道具である秘典の箱を入手できた。因みに大会終了まで僅かだった。

昔から遊ぶことを知らなかったから、理解までに少し時間がかかってしまった……。楓真からは「母上は娯楽をもっと知るべきでござるな!」と言われてしまったくらいである。


「これでお主がどこに隠れようと見つけられるな!」

「もしかして、あの時の事を引きずってる……?」

「当然でござる。拙者は悲しかったのだぞ、お主に逃げられ隠れられ……拒絶されているのだと思っておったのだ」


おいおいと泣き真似をする万葉にちょっと呆れそうになったけど、事実だしなぁ……。彼を悲しませたのも事実。この感じだと、あのことを一生引っ張ってきそうだ。


「さて、後は船に戻るのみでござるな」

「うん。特に買い出しは必要ないって言われてるから、まっすぐ帰るだけだね」


今日はこの秘典の箱を貰う為だけに船を下りたのだ。なので、後はもう帰るのみ。さて帰ろうと話していた時だった。


「あ!! この前会った稲妻出身の楓原万葉さん!!」

「うん?」


後ろから万葉の名を呼ぶ声が。振り返ればそこには、稲妻でよく見かける格好をした女の子が。


「綺良々殿ではないか。まだ璃月に?」

「いいや、仕事を終えて戻ってきたんだ! 折角会社の経費で旅行できるんだもん! ……あ、今のは聞かなかったことにして……」

「名前、紹介しよう。前に蛍とパイモンを通して知り合った人の一人、綺良々殿でござる。彼女も拙者達と同じ稲妻の者で、狛荷屋の配達員でござるよ」


どうやらあの日私に七星召喚を進めてきた日に知り合ったという人の1人らしい。それに、狛荷屋の配達員だったとは!


「初めまして、綺良々さん。私は名前、旧姓は桔梗院なんだけど、今は楓原を名乗っています」


以前、死兆星号で結婚式という名の宴が開かれてから、私は正式に楓原姓を名乗るようになった。これは万葉の強い希望だったんだけど、何でなのか聞いたところ「お主が拙者のものであるという1番の証拠であろう?」と言われた。

特に私も気にならなかったし、桔梗院の名はもう名乗る事はできないから、万葉の話を承諾した。それに伴い、楓真も桔梗院姓から楓原に変わったのよね。
因みにそれを他の船員に伝えたところ「重い」と言われてしまった……。そ、そうかなぁ……?


「桔梗院……?」

「あ、流石にあの件についてもう公表されてますよね。ごめんなさい、不快にさせてしまったら___」


私が去る前は聞かなかったけど、あの後桔梗院家を乗っ取ったあの男が犯した罪状が公表されたことを後に知った。その内容は事実のまま伝わっているはずだから、きっと嫌な気分にさせただろう。

そう思っていたのに___



「もしかして、キョウ……?」

「へ?」

「キョウだ! キョウが帰ってきたんだ!!」


こちらを見た綺良々さんが、私に飛びついてきた。それも、私の事を『キョウ』と呼んで。


「き、綺良々さん……っ、あの、」

「……はっ!! ごめんなさい!!」


気がついたらしい綺良々さんは、私から勢いよく離れた。そして、勢いよくあまたを下げて謝った。


「気にしないでください、驚いただけですから」

「しかし、どこか気になるな。綺良々殿、何故名前を『キョウ』と呼んだ?」


綺良々さんに気にしてないことを伝えると、万葉が彼女に問いかけた。それは、先程私の名を別の名で呼んでいたことだ。


「万葉さんには伝えたけど、実は私猫又なんだ。だから結構長い間生きてるんだけど……その時に君にそっくりな精霊と会ったんだ」


精霊……まさか、私の祖先である精霊のこと?
将軍様から話を聞いていて良かった。何も知らなかったから、綺良々さんを混乱させていただろうから。


「それってもしかして……桔梗の花の精霊?」

「うん! 君も知ってるんだね!」

「知ってるも何も、私はその精霊の血が流れています。末裔ってやつです」

「そうなんだ……やっぱりキョウはあの時……。あぁ、ごめんね!? 変な空気にしちゃって……」


悲しそうな顔を浮べる綺良々さんを見て思う事は、私の祖先である桔梗の花の精霊について。
名前については将軍様から聞いてなかったけど、今判明した。私は祖先と非常に似ていると将軍様が仰っていたから確実だ。


……私の祖先、キョウと言う名の精霊は稲妻にとってどんな存在だったのだろうか。






2023年11月23日


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