2024年こどもの日
※if時空
※主人公不在
※「空白に熱と愛を注いで」の後日談的な話。読まなくても内容は分かるようにしていますが、読んでいただくと流れが分かるかもしれません。(こちらの作品は年齢指定になるため、条件を満たす方のみ閲覧お願いします)
※番外編:出会い編「七七」の内容を若干含みます。
「あれ、
じゃないか! めずらしいな、普通に立ってるなんて!」
「……お前たちか」
たまたま近くを訪れていた俺たちは、時間帯もあってお昼を取ろうと望舒旅館を訪れていた。
食事が終わった後、久しぶりに望舒旅館最上階から見える景色を見ようと上ってきたのだが、そこには意外な人物……と言うわけでもないんだけど、普段は姿を隠している
がいた。
なかなか人前には姿を現さない彼が堂々とそこにいることが珍しいため、少し驚いてしまった。
けど、俺が知らないだけで望舒旅館では割と自然体で過ごしているのかもしれない。
「お前もここからの景色を見ていたのか?」
「まあ、な」
少し話がかみ合っていないような返事をされた気がするけど、気のせいだろう。
それにしても、
と話すのは久しぶりだ。璃月にはちょくちょく訪れてはいたけれど、彼には会えていなかった。
そういや前に鐘離先生が意味深なことを言っていたな……別に二人のプライベートについて詮索するつもりなんてないけど。さすがにその辺については好奇心はそそられない、うん。
あ、そういえば。
「名前はどうしたの?」
世間話をしていて気づいたこと。
いつもそばにいる___というより、
が目の届く範囲にいるようにしている、が正しいかな___名前の姿がない。
望舒旅館の中では自由にさせているのかもしれないし、気にしなくていいや。
の返答も聞かず、そう結論付けようとしたときだ。
「ととさま!」
「ととさまっ」
子供のような可愛らしい声が聞こえたと思えば、目の前にいた
の身体に何かが突進してきた。とはいっても、突進と言うには勢いは弱い。ただ抱き着いてきただけだ。
けど、一体誰なんだ、この子たちは?
ていうか今、とと様って呼ばれてなかった?
「そんなに走り回っては転ぶだろう」
そう言って
は二人の子供を器用に片腕で抱えた。よく見たらこの子たち、
と名前に似ているような……。
「しょ、
……その子たちは誰なんだ?」
あまりに自然な様子で接しているから、パイモンが
に尋ねるまで放心してしまってた。パイモンの声に気づいた
は二人の子供から目を離し、こちらへと視線を移す。
「……あぁ、そういえば話していなかった。二人は我と名前の血を持った雛鳥だ」
忘れていた、と言いたげな雰囲気で、さも当然のように話す
。
いや、俺たちにとっては結構衝撃的なことなんだけど!?
ていうか今、雛鳥って言った?
「雛鳥? どう見たって人間の子供にしか見えないけど……」
パイモンはそのままの意味で受け取ってしまったようだ。
まあそのままの意味で受け取っても間違ってはないけど、鳥だし。
「パイモン、比喩だよ、比喩。
が言いたいのは……この子たちは
と名前の子供ってことだよ」
が言いたいことはこれでしょ?
念のため確認すると、
は無言で頷いた。
「なるほどな! ……って、ええええっっ!!? そんなめでたいこと、なんですぐに教えてくれなかったんだよ」
「言う必要あったのか?」
「友達なんだから、祝いたいに決まってるぞ! な、空!」
パイモンの言葉に頷き返すと、俺は
に向き直る。
俺の視界には、
の瞳以外にも、彼らの子供たちの瞳も映っていた。
の腕の中にいる子供たちを見る。
容姿だけで性別を判定するのは難しいくらい、愛らしく整った顔立ちをしている。その容姿は、それぞれ両親の特徴を継いでいる。
「ととさま! この者たちは?」
「かつて璃月を救った英雄だ。そして、我とかかさまの恩人でもある方だ、礼儀を持って接するんだ」
「はい、わかりました! ととさま!」
元気な印象をもつ子は、
と同じ金色の瞳を持っているが、髪の色は白っぽい銀髪で、名前の遺伝子を強く継いでいる。
「こんにちは! オイラはパイモン、こいつは空だ!」
「は、はじめまして……」
もう一人の子は風元素のような色の瞳を持つ、
の髪色に似た暗い緑色の髪色を持つ子だ。この子は警戒心が高いようで、パイモンが近づくと
の方へと逃げてしまった。
「話が逸れたが、名前は望舒旅館にいるぞ。どこかで会わなかったか?」
自己紹介も済んだことで、話に一区切りがついた時。彼らの子供たちが来る前の話……名前は一緒じゃないのか、という俺の問いに
が答えた。
「まったく……」
「まあ、こやつらを見た反応を考えれば、確かに会っていないのだろう」
「さっきまで名前……えっと、かかさまのところにいたのか?」
からの言葉を聞いた後、パイモンが子供たちに問う。
その問いには銀髪金眼の元気な子が答えた。
「はい! 先ほどまではかかさまと妹のところにいました!」
「い、妹?」
「伝えたなかったが、三人兄妹だ。二人は男、名前のもとにいるのは女だ」
まさかこのタイミングで何人生まれたのか知ることになるとは……。まあ鳥って一度に何個か卵を産む種類もいるって聞くし、兄妹がいるのは変なことではないのか……。
「もしかして、かかさまに会いたいのですか?」
「え、まあ会えるなら……しばらく見ていないしな」
「なら連れてきます! いこう、兄者!」
「え、ま、待ってください……!」
どうやらおとなしめの子が兄で、元気な子が弟、そしてまだ見ぬ妹が末っ子という感じだろうか。
やはり子供のやりとりを見るのは癒されるな。まあ、あの子たちは子供は子供でも、純粋な仙人の子供なんだけどね……。
そう思いながら望舒旅館へと入っていく二人を見送った。
「子供が生まれたときの名前は、今までの中で幸せそうに笑っていた」
ふと、呟くように
がそう言った。
振り返れば、まだ子供たちが去っていった方を見ていた
がいた。
……そういえば、前に言っていたっけ。業障の影響で子供の顔を見ることなく死なせてしまったことがあると。その時の名前はずっと
に謝っていたとも。
「やっと、名前の笑顔が見られたんだね」
「……ああ」
あの時と同じ返答だったけど、その一言に込められた感情は前とは違う。
喜びと幸せ。
これまでに多くの苦しみ、仲間との別れと言った辛い出来事を抱えながら生きてきた
と名前。
そんな中で手に入れた幸せ。……どうか、この優しき夜叉たちの未来が明るいものでありますように。
そう心の中で願ったとき、気持ちの良いそよ風が俺たちの間を通り抜けていった。
……賑やかな喧騒と共に、先ほど出て行った子供たちと、
と名前を綺麗に分けたような容姿を持つ女の子と、その子を抱えた名前がやってくるまで、あと少し。
2024/05/05
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