※刻晴のキャラボイス「について…」の内容を含む
※当然のように捏造含む



「貴女が甘雨の言っていた仙女、瑞相大聖ね」


私の目の前にいる方は、今の璃月で高い権力を持つという璃月七星の1人。甘雨さんの職場では上司という立場に当たる方なのだとか。
……上司という言葉の意味が分からず、甘雨さんに聞いたところ「名前が岩王帝君に仕えるのと同じですよ」と言われたので、どのような立場なのか分かりました。


「私は刻晴。璃月七星の1人、玉衡よ」

「お会い出来て嬉しいです。私の事は名前と呼んでください。瑞相大聖は貴女で言う玉衡と似た様な名ですので」


刻晴と名乗った少女は、甘雨さんより上の人である……ということは分かりました。……分かったの、ですが……。


「そう。では、貴女の厚意に甘えて名前と呼んでいいかしら」

「はい、勿論です」


……何故か、彼女の言葉にトゲがあるような気がしてならないのです。私、何かしたでしょうか……?


「名前、どうかしましたか?」

「えっ、えっと、その……」

「何か思うことがあれば遠慮無く言って頂戴」


うぅ、甘雨さんが声を掛けてくださったけれど、やっぱり話せない……。私の勘違いだったらとても失礼ですし……。
刻晴さんの心情を読み取れば良いだけの話しなのは分かるんですが、もし私が思っていることと一致してしまったら、多分立ち直れない……。

甘雨さんから紹介したい人がいると言われて、この日を楽しみにしていた。だからこそ、心を読むことなく視界だけの情報で人を見定めようと決めたのに……刻晴さんの心情を読み取りたい気持ちが増している。


「……で、では。失礼を承知で聞きます」

「ええ」


……いいえ、心情を見て確認するのはやはり失礼よ、私!
人は顔や態度といった視界からの情報で相手の気持ちを推測し、判断するのだから。私もその方式に則るべきよ。

だから、思う事は口に出して伝えなくては!



「___刻晴さんは、仙人が嫌いですか……?」



……私が刻晴さんと会話して思った事。それが、彼女が仙人のことが嫌いではないか、というものだ。
どこか顔付きも怒りが見える気がしていたので、そうなのではないだろうか。

流石に今日初対面の私に対し、話す前から嫌悪の感情を持つのは……ない、と言いたいのだけれど、私が自分の心を守りたいが為に違うと思っているだけ、です……。

という訳で次に考えたのは、仙人というわけだ。彼女は純粋な人間だから、違いと言えばそこにあると思ったのです。
……何故仙人が嫌いなのかまでは浮かびませんでしたが……。流石に話したばかりですから、判断材料が足りません。


「も、もしかして貴女は過去を見る事ができるの……?!」

「へ?」

「た、確かにあの時の私はあなた達仙人のことを嫌ってたと言っても過言ではないわね……」


しかし、私の発言に刻晴さんは予想していたものと違う反応を見せた。それも、私が過去を見たのでは、と思っていらっしゃるではないか!


「お、お待ちください刻晴さん! 私、過去を見られるわけではありませんっ」

「……えっ!? 違うの!?」

「お二人とも、一旦落ち着きましょう」


甘雨さんの言葉でお互い話を中断し、お互いが勘違いしていたことについて話す事になった。
まずは私から、と指名されたのでこちらから。


「刻晴さんが言っていた過去が読めるというのは、全く持ってありません! 私は貴女の様子を観察してそう思っただけです」

「ご、ごめんなさい……嫌悪感を出してたつもりはないの」


刻晴さんの様子から見るに、彼女の言葉に嘘偽りはない。では、何故私がそう思ってしまうような様子を見せていたのだろう?


「貴女がそう思ってしまったことは、過去の私が関係しているの。長くなってしまうのだけど、構わないかしら?」

「はい。貴女と会うために作った時間です。長くなっても大丈夫ですよ」


どうやら過去の彼女……私が璃月を離れていたころの刻晴さんが関係しているのだと言う。少しだけ目線を外し甘雨さんを見ると、こちらの視線に気づいて頷いてくれた。甘雨さんの反応を見るに、彼女も過去の刻晴さんについて知っているみたいですね。


「ありがとう、名前」


刻晴さんは話し始めた……私が璃月を去っていた頃の彼女について。
気まずそうにしながらも、刻晴さんは話し始めた。その内容は、初めに私が思っていた仙人が嫌い、に通ずるものだった。



「……なるほど、そのような考えが」



彼女は仙人というより……帝君に対し反抗的な所があったという。その理由は、岩神の庇護と信託によって成り立っていた璃月に不満があったからなのだと言う。
神の統治をいつ失われるかも分からない中、人から向上心を奪う者、として岩王帝君を見ていたとも話してくれた。


「刻晴さんは人間がとても好きなのですね。だからこそ、その先の未来を考え、帝君へもの申した」

「貴女は不敬だと思わないの……?」

「私は事が終わった後に戻ってきてしまったので、結果から知ってしまいました。歴史が変わる瞬間に立ち会えませんでしたから、どう思ったかと言われると少し難しいですね」


だからと言って、彼女の問いに答えないわけにはいかない。難しいからというのは問いに対する回答ではありませんからね。


「……もし、私がその場にいたとしたら。今も思っている事ですが、そのような考えの持ち主なのだと思ったでしょう」

「考え方……」

「同じ問いに対し、全員が同じ意見を持つわけではない。それに関しては仙人も同じです。それぞれがいろんな考えを持っています。ですから、これは1つの回答として受け取ってください」 


私の言葉を聞いた後、刻晴さんは考え込む素振りを見せた。何か、私の言ったことに思う事があったのでしょうか……?


「甘雨から聞いてた通り、優しい仙人ね。きっと貴女なら、あの時の私にもそう言ってくれたと思うわ」

「どうして、そう思ったのですか?」

「今日初めて会って、数分程度しか会話していなくても思ってしまった。貴女という仙人が心から思って話しているってことをね」


先程よりも刻晴さんの表情に堅さはない。胸の内にあったことを明かしたからでしょうか?
話しづらいことを明かしてくれた刻晴さんに誠意を持って接しなければなりませんね。


「刻晴さん。貴女が未来の璃月を想っていたからこそ起こした行動であることは分かっていますよ。ですから、私は貴女と共に璃月を守りたいと思っています」

「名前……。そう言ってくれると、前の私の行動も悪くなかったと思えるわ。仙人達に不敬だったことはこれからも償っていくけれど……」

「皆さんきちんと話せば分かってくれる方達ばかりですよ。ですから、そう気に病まないでください。共に璃月を守った者同士なのですから」


約200年ぶりに璃月に戻り、帝君直々からお聞きした話。……魔神オセルの復活について。
もし私があの場にいたとしたら……どうしていただろうか。


「ありがとう、名前。貴女に出会って、こうして話せて良かったわ」

「それは私もですよ。貴女の意思は見習いたい部分が多くありました」

「え、仙人にそう言って貰えるなんて思わなかった……。けど、悪くないわね」


自分の意思をはっきりと持つ彼女。……それに比べ、私は自分の意思をしっかり持っていただろうか?
いいえ、持っていなかったでしょう。未来を考えることより、過去の過ちばかりを気にして前に進むことに怯えた。

……けど、つい最近になって、引きずる過去の1つを乗り越えることができた。まだまだ直さなければならないことが残っている。



「また時間があれば、貴女と話したいわ。今度は真面目な話ではない雑談でも」

「勿論です、刻晴さん」

「ふふっ、初めはどうなるのかと思っていましたが、問題無かったようですね」

「ええ。貴女もありがとう、甘雨。貴女の友人を紹介してくれて」


仙人を嫌っていた彼女に認めて貰えた。ならば、彼女の中の私が崩れぬよう、もっと精進しなければ。


「あ、そうだわ。あの伝説の少年仙人と同じく、いつも璃月を守ってくれているのよね?」

「伝説の少年仙人?」

「降魔大聖のことですよ」


話は変わり……突然出てきたのはのこと。
なるほど、あの人は人間にそのように呼ばれているのね。


「彼がどうかしましたか?」

「いえ、貴女も彼と同じような立場だったと思い出しただけよ。今の璃月は人間が世を治めるようになった。全部を任せろとは言わないけれど、少しは荷を下ろしてもいいと思っているの。人間はもう仙人に守って貰わなくても、自分達の力でなんとかできるわ。……信じて、くれないかしら」

「……確かにあの戦いを乗り越えて人間も前に進んでいますから、いつまでも守る存在という認識は、逆に失礼かもしれませんね」


どうやら話はのことではなく、私とが帝君と結んだ契約に関係するもの。私達は璃月を守る使命を今でも続けている。それは璃月に住まうものも対象であり、当然人間はその中に入る。

けれど、刻晴さんは人間は守られるだけの存在ではないという認識に変えて欲しいようで。


「分かりました。ですが、璃月を守る事は帝君との契約です。もし、解決が難しいことがあれば、ご助力いたします」

「そうね……悔しいけれど、人間に出来る事は限られている。それ以上の存在……仙人に援助を願うこともあるかもしれないわ」


その時は、貴女の力を貸してくれる?
そう言って手を差し伸べてきた刻晴さんの手を、私は迷わず握った。



***



「あぁ、玉衡の娘か。知っているぞ」


時間は夜。場所は望舒旅館。
夕餉を取り終えた後、望舒旅館の最上階から帰離原の景色をと共に見ていた。

私はそこで、今日あったことをに話していた。


「彼女の意思と行動力は見習いたいと思ったわ。私とは正反対だからこそ、見習いたいと思ったの」

「あの強気な所も真似する気か?」

「え? ……できることなら。けど、言っていて心を痛めそうになるのが見えてるから、彼女の強い意思と行動力だけでいいかな」

「そうしてくれ。あの娘の性格をそのままお前が真似できるとは思っていないし、その……」

「その?」


言葉を詰まらせるに首を傾げる。
じっと見つめていると、目を逸らしていたがこちらを目だけで見つめた。


「あの娘は一人で何事も解決できるという自信がある。それは過信ではなく、実際に実力もある。もしお前までそうなってしまったら……我の存在はどうなる?」

「……!」

「お前は守護の名を冠する存在であることは分かっている。それでも、お前を守る役目は誰よりも我であると思っている。……だが、それすら必要ないと言われたら……」


弱々しい力で握られた私の衣服。それはによるもので、声音とその顔が彼の悲しげな様子を際立たせる。




「……名前」

「私がを見限るなんて事、絶対に起こりえないわ。だって、独りだった私に手を差し伸べてくれたのは貴方じゃない」


未だに私の衣服を掴む彼の手の上に、自分の手を重ねる。そして、の目をしっかり見て伝えよう。


「だから、私は貴方を独りになんてしない。させないわ」


この気持ちは貴方と契約を交わしてからずっと思い、抱えていること。だから私は、一度貴方のことを忘れてしまっても探していたんだと思うの。愛おしい人と認識して。


「……ああ」


引き寄せられて、温もりに包まれる。背中に回った彼の腕に合わせる様、私もの背中に腕を伸ばした。


もし、彼が私を置いていなくなってしまったら。
……きっと、今は落ち着いている業障が表に出てきて自分を制御できなくなってしまうだろう。

そして、最悪……厄災と成り果ててしまうかもしれない。
私の氷の力は絶対零度と呼ばれたことがあるのだ、可能性がないとは言い切れない。

何よりも、その引き金を自分が招いたなんてが思ってしまったら……彼は心を痛めてしまう。

何よりも1番は、私を救ってくれた彼、の心を守る為に。なんて、普通は璃月を1番に思わないといけないのに……どうしても真っ先に浮かぶのはなの。それを帝君が知ったら、怒られてしまいそうだわ。

でも、少なくとも今はそんなことは起こりえない。だから、その可能性は忘れましょう。


「今日はずっとこのままでいましょう?」

「そうだな」


……二度と、離れぬように。
この温もりを、忘れない様に。

無意識に腕に力が入っていたことに気付いた時、自分の身体に回ったの腕に力が入ったような気がした。



***


オマケ


好感度で開放されるボイスネタ
〇〇について

・名前→刻晴
「刻晴さんは日々、璃月の状況を知るために”ふぃーるどわーく”と言うものをしているそうです。たまに彼女を見かけることがあるのですが、その真剣な様子に刻晴さんは璃月を想ってくれているのだと分かります。彼女の様な存在なら、璃月を任せてもよいのかもしれませんね」

・刻晴→名前
「名前からは私も把握できていない璃月の穴を知るきっかけを教えてくれるの。流石に2000年もこの地を守ってきたのだから、私より知っている事が多いのは分かるのだけど、やはり負けたくないって気持ちが強いわね。……決して、嫌いとかそう言う意味ではないわ! 本当よ!!」






2023/11/20


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