※七七ちゃんについて色々捏造あり


「ひゃっ!?」


それは突然だった。
私はと共に帰離原を訪れており、清心が生えた側で座り景色を眺めていた。は少し離れた場所で何かしているのは分かった。特に気にすることなく私は目の前の景色に夢中で警戒心が解けていた時だった。

後ろから来た衝撃。衝撃と言うより、抱きつかれたと言う方が正しいか。小さな手が私のお腹に回っているのが見える。


「どうした名前……って、お前は」


私の小さな悲鳴にが飛んできた。何故か清心を両手に抱えて。
しかし、私の後ろにくっついている何かを見て驚いているようだ。というより、知っているみたい。

何とか身をよじり、自分の背中にいる何かを見た。


「……あれ、あなた誰?」


そこにいたのは小さな女の子だ。というより、その台詞は私の方なのですが……。
あ、は知ってるみたいだったはず。なら、この子について教えて貰おう。


、この子を知ってるの?」

「……昔あった仙魔大戦を覚えているか」

「ええ」

「その大戦の被害者だった童だ」


……待って。その被害者の子供って、私が知る限り1人しかいないはず……。それも、小さな女の、子……。


「あの時私が助けようとした少女だって言うの……?」

「そうだ。七七と呼ばれているようだ」

「七七、さん」


私が璃月を離れる前に遭った出来事……その内の1つである仙魔大戦。その被害者となってしまった1人の少女がいた。
私は過去の魔神戦争のこともあり、その大戦に参加していなかった。だが、他の仙人達か要請があり、その場へ赴いたのだ。

その場に到着した時、そこには今すぐにでも命が尽きようとしている1人の少女がいた。その少女こそ、目の前にいる七七さんだという。……言われてみれば面影はある。少しだけ死人のような顔をしているが……。


「というより、何故彼女が普通に出歩いているの? たしか、理水さんが封印したはず……」

「どうやら封印が弱まっていたらしく、自力で脱出したらしい。その後、白朮という男に引き取られて、その男が経営する不卜廬という薬屋で働いている」


白朮さん……聞いた事がない名前だ。彼が純粋な気持ちで彼女を引き取ったことを祈るばかりである。


「七七のこと、知ってるの?」

「ええ。まあ、貴女は知らないと思いますが」


あの大戦時、彼女は死に際に神の目を手に入れ、大戦を終結させたという。しかし、その傷は酷いもので、当時の私の力だけでは治療出来なかった。
この大戦の功績者である彼女をどうしても救いたかった仙人達は、彼女に過剰な仙力を与えてしまったのだ。……私は止めたのですが、彼らは聞く耳を持ってくれず。

結果、彼女は与えられた仙力によって暴走してしまった。偶然居合わせた理水さんの力で彼女を封印することができたが……。


あの時、私は救うべきだったのか、そのまま眠らせた方がよかったのか、ふと過去にそう考えていたことを思い出す。でも、確かに私は治癒を施していた時、弱った声で彼女がこう言ったのを覚えている……『死にたくない』と。

だから私は彼女を救おうとした。けど、暴走までして生き残りたかったのだろうかと考えてしまうのだ。


「うん、知らない。けど、何故かあなたの気配は”懐かしい”」

「え……?」

「だから知ってる人だと思った。でも違った」


私の気配が懐かしい?
七七さんの言葉に首を傾げる。理解できなかった私は自然とに目線を向けた。視界に入ったは七七さんを見て何か考え込んでいる様子だった。


「……なるほど、そういうことか」

「どういうこと?」

「七七からお前の仙力を感じる。恐らくそれが原因で、お前に反応したのではないか?」


七七さんから私の仙力が?
……もしかして。


「あの日、治癒を施したのが原因かしら」

「それしかないだろう。そして、数々の仙人から仙力を与えられたが、その中でも一番馴染んだのがお前だったのではないか?」

「なるほど……筋は通っているわね」

「七七も治癒の力を持っている。お前には及ばんが、その力は確かなものだ。もしかすると、その力はお前の仙力が元になっているかもしれんな」


なんと、彼女も治癒の力を持っているそうだ。それに、がそういうのなら彼女の治癒の力は私の仙力からきたものなのだろう。


「七七、あなたといると安心する。どうして?」

「……どうしてでしょうね。私にも分かりません。ですが、そう言われると私は嬉しいですよ」

「もっと一緒にいれば分かる?」

「答えは貴女の中にあります。それが分かるまで、私は貴女の側にいましょう」

「ありがとう。えっと……あなたの名前、聞いていい?」

「勿論です。私は名前といいます」

「名前」

「はい」

「……名前。名前覚えたい。けど、七七はあなたをずっと覚えられない」


ずっと覚えられない?
どういう事だろう……本人に自覚があるということは、それが事実だということ。そして、それを克服したい様子も見れる。

表情にはあまり変化はなく、口調もどこか抑揚がない。……それに、彼女から生気という生気をあまり感じないのだ。それが彼女がずっと覚えておくことができないという理由だろうか。


「大丈夫ですよ。私が貴女を忘れなければよいのです」

「でも、それでも、七七は貴女を忘れる」

「ならば、何度でも自己紹介をしましょう」

「じこ、しょうかい……」


そう呟いた七七さんの表情は、今日見た中で一番の変化だった。きっと彼女は元々表情が固いのかもしれない。けど、今目の前にある七七さんの顔は嬉しそうだった。


「うん。自己紹介する。あなたを覚えるために」

「はい」

「あ、ノート。ノートにあなたのこと書かなきゃ」


そう言うと七七さんは冊子と鉛筆を取り出し、何かを書き始めた。……どうやら私の事について書いているようだ。
戦いの場で生きてきた私だが、一応文字は読めるのだ。それに、記憶を失っていた間に、読み書きをやっていたことがあったから、以前よりは良くなったと思う。

私について黙々と書いている七七さんを微笑ましく見ていると、隣に誰かが座る。まぁ、言わなくてもわかるのだけどね。


「随分と懐かれたな」




私と七七さんが会話中、またもやどこかへ言っていたである。やっぱりその両手には清心が。


「ところで、どうしてそんなに清心を持っているの?」

「…………お前が見ていたから、欲しいのだと思って」


そう言って少し顔を赤らめる。……ちょっと、私まで照れるじゃない。につられてるように自分の顔が赤くなる感覚を覚えたときだ。


「あ、清心」

「清心がどうかしましたか?」


冊子から目線が私の手元に向いた七七さん。今私の手にはから受け取った清心がある。これがどうかしたのだろうか。


「七七、清心を採りにきた」

「不卜廬の仕事か?」

「うん。白先生に採ってきてって言われた」


無茶を強いていませんか、その白朮さんという方は……。
清心は基本高い場所にしか生えない。こんな小さな子が採りにいくには危険だ。ここは割と咲いているほうだが、もっと必要であるのなら、絶雲の間周辺に行かなければ。


「いくつ必要なのですか? ここにあるものでは足りませんか?」

「……足りない」

「では私も手伝います。いいわよね、

「……我もやろう。お前はまだ療養中なのだから」

「ありがとう」


というわけで、私とは七七さんのお手伝いのため清心を採取しに向かった。



***



「へぇ、そんな事が」


偶然璃月港にいた俺とパイモンは、珍しい……というより、初めて見た組み合わせというべきか。その人達を目撃した。
その人達というのは、七七と、そして名前さんだ。3人の両手には沢山の清心が抱えられている。

気になった俺達は3人の後を着いていってたのだが……数秒でにバレた。というわけで、後を付けた理由を大人しく吐いたわけだ。


どうやら七七の仕事の手伝いで清心を採っていたそうだ。だからあんなに沢山の清心が……。この地に詳しい2人がいるから、さぞかしスムーズに事が進んだだろうなぁ。


「流石に洞天ばかりは飽きるようでな。気晴らしに外に出してやっているのだ」

「過保護だな」

「まだ名前さんは療養中だもんね。でも、あれだけの清心を採れたってことは、結構回復したの?」

「どうだろう。だが、我が思う以上に名前の体力が回復していたのは事実だ」


……うん、過保護だ。
もしかしたら、名前さんはもう完治していて、だけど自身の心配が拭えないからまだ休ませてたって事かな。


「今日の仕事、これで終わって良いって。だから七七、あなたと一緒にいていい?」

「ええ、勿論です。時間が許す限り、一緒にいますよ」


こうしてみると、なんだか親子に見えてくる……。前から思っていたんだけど、名前さんはどこか母親のような雰囲気を持っている。それは記憶を失っていた時からだ。


「名前は子供の面倒を見るのが上手そうだな!」

「モンドでも子供と一緒に遊んであげていたしね。普段からそうなの?」

「昔から名前は人間に甘いのだ。だからあのような目に遭ったというのに……」

「まあまあ、子供は例外でしょ?」


は名前さんが人と関わるのを少し嫌っているように見える。まあ、あんなことが遭ったんだし、仕方ないけれど。


「あ、移動するぞ!」

「行くぞ」


そう言っては少し先を歩く名前さんと七七の方へと歩く。俺達も二人の後を追うため、の隣に並んだ。


「こうしてみると、は奥さんと子供が心配なお父さんだな!」

「七七は我と名前の子ではない」

「そんなの分かってるぞ……」


だが、そう思ってしまうような雰囲気だ。何気ない所でよく見る家族の光景が、今の3人に当てはまってしまうのだから。


「そういえば、と名前は夫婦なんだろ? その、子供とかいないのか?」


きっとパイモンの質問は純粋なものから来ているだろう。確かに、これだけ長い間一緒にいるのだから、いてもおかしくはないと思う。


「……子、か。いたと言えば、いた。だが、」


我と名前はその顔を見ることはできなかった
そう言って名前さんを見るの横顔は、どこか悲しそうで。


「どういうことだ……?」

「腹の中で死んだのだ」

「えっ……」

「我らは業障を抱えている。それが腹の子にとって毒だったのだ」


業障
彼からこのことについては聞いているため、どれだけ恐ろしいものなのか分かっている。それが影響してしまって、亡くなってしまったのか……。


「あの時の名前は我にずっと謝っていた。……辛いのは、名前の方だというのに、自分が悪いとずっと言っていた」

「そんな、名前は何も悪くないじゃないか! なのに、なのに……!」

「お前の言いたい事は伝わっている。……その気持ちは名前に言ってやってくれ」


改めてだけど、は本当に名前さんを心の底から愛しているんだと分かる。本当に大切なんだと、彼女を見つめる視線が物語っている。


「我は強要する気はない。だが、まだやつが望んでいるのなら……」

「わあああああっ!? もういい! 分かったから!!」


パイモンが大声で止めてくれて助かった……。の言いたい事は分かった。だけどここだと沢山の人が聞いているかもしれないからさ、ね?
そう伝えたが、は頭上に?を浮べて首を傾げるのみだ。


「でも、その時が来たら……今度こそ名前さんの笑顔が見られるといいね」

「……ああ」


そう伝えると、は儚げに微笑んだ。そしてすぐさまその目線は名前さんと七七に向いた。俺もと一緒に少し先で楽しそうに話している名前さんと七七を、遠くから見守ったのだった。


***
オマケ

好感度で開放されるボイスネタ
〇〇について

名前→七七
「まさか彼女が普通に出歩いているとは思いませんでした。もし、また彼女に何かあれば、私が止めます。一緒にいると約束しましたから」

七七→名前
「優しい、安心する。ずっと一緒にいれば、分かるかな」






2023/01/16


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