※再会篇「浮舎」の内容を含む
※煙緋の好感度にて聞く事ができる、とある人物の「○○について…」から引用した内容あり



「瑞相大聖。彼女が紹介したい人だよ」

「貴女が瑞相大聖か! 私は煙緋、璃月の法律家だ」


ピンさんからまた紹介したい人がいる。
そう言われた私は、約束の日に璃月港を訪れた。そこにいたのが、目の前にいる少女だった。……名を、煙緋さんと言うそうだ。


「初めまして、煙緋さん。瑞相大聖でも構いませんが、堅苦しいので名前で構いませんよ」

「なら、遠慮なく名前と呼ばせて貰おう。まさか、夫婦揃って別の名前で呼んでくれって言われるとはな」

「へ?」


夫婦揃って?
もしかして、彼を知っている?


を知っているんですか?」

「確かに彼の存在は璃月人に馴染みがない。けど、私は少し前に彼と会話する機会があってね、顔見知り程度にはなれたと思っているよ」

「まあ! これからもと仲良くしてくださいね」


私が璃月を離れている間に、も少しずつ交流関係を広めているみたいね。彼自身は他と関わる事を苦手としているけど、私はいろんな人と交流関係を広めてくれていることが、純粋に嬉しいと思ってる。

貴方が兄弟のように信頼していたあの人逹は、他と関わる事が好きだったのだから。、当時の貴方はその気持ちが理解できないって言っていたけど、今はどう思う?


「……なんだか、妻というより、姉なのではと思ってきたよ」

「降魔大聖と並べたら、その認識は変わるだろうよ」

「ピンさん、それはどういう意味ですか……」


一体ピンさんは私とをどう認識しているのかしら……。まあ、悪い意味で認識しているわけではないことを知っているから、大方冗談なのでしょうが。


「それより、煙緋さんとがどうやって知り合ったのか聞きたいです」

「ああ、彼とはある依頼で層岩巨淵を調査したときに話す機会があってね。そこから交流が深くなった、とでも言っておこう」


……層岩巨淵?
層岩巨淵と言えば、少し前に空さんとパイモンさんからある話を聞いたわね……。


「おや、なんだか考えている顔だね?」

「えっ、どうして分かったんですか?」

「貴方は結構分かりやすい方なんだと思うよ。とは対照的だね」

「昔は瑞相大聖に表情筋を奪われたのでは、なんて言ってる人もいたのう」

「え、そんな話聞いたことないですけど……」


ピンさんの発言はおいておき……。そんなに私、分かりやすいのかな。


「それで、何を考えていたんだい?」

「実は……」


私は煙緋さんとピンさんに、少し前に空さんとパイモンから聞いた話を伝えた。層岩巨淵での友人……浮舎さんが消息を絶ったため、その調査に赴いたこと。その際に、浮舎さんが体験したものをも体験したと聞いたこと。

そして、その場で自分を犠牲にしようとしたことを。浮舎さんの名前は伏せて、その内容を伝えた。


「その話、私もその場にいたやつではないかな」

「え、そうなのですか!?」

「うん。夜蘭さんとが言い合いになっていた、という話は聞き覚えがありすぎる。間違いなく私が知っている話だ」

「あの、詳しく教えて頂いてもいいですか?」

「勿論」


当事者だったという煙緋さんから、当時の状況を説明して頂いた。……その内容は、やはりは自分を犠牲にして他を救おうとしたことだ。
だが、夜蘭さんの説得があり、全員で脱出することに方向が決まったそうだ。

……しかし、話はそう簡単に上手くいかなかったらしい。


「やっと不可思議な空間から脱出できる。そう思ったとき、私達を地上へ帰さないとでも言うように、おかしな現象が襲いかかってきたんだ。恐らく、あの空間による抑止力みたいなものだろう」

「抑止力……そんなものが。あ、すみません。続けてください」

は脱出のために力を使い続けていて動けない。だから私達でおかしな現象を対処していたんだ。……けど、それは一向に大人しくなるどころか、激しく猛威を振るいだした」

「そ、それで……?」

「勢いが増す抑止力に段々と対抗できなくなってきた……その時だった。が自分を犠牲に私達を脱出させたのは」

「!!」


その話は、空さんとパイモンさんからは語られなかったものだった、その話を聞いていれば、私は真っ先にの元へ行き、彼を問い詰めただろう。というより、出来るのなら今すぐ問い詰めたい。


「地上に出た私達は、そこにの姿がなかったことに気づいた。まさか、一人だけ脱出できなかったのでは……そう思ってた」

「そう思ってた?」

「そ。遅れて彼も地上へ脱出したんだ。あの時ばかりは自分を犠牲にって思ったけれど、違ったようで良かったよ」


いいえ、違いますよ煙緋さん。
は間違いなく自分を犠牲に皆を助けようとしたんです。

は自分以外を地上に生還させることを優先した……聞いた話から考えれば、彼の力は限界だったと思われる。だから、遅れてやって来たのではなく___誰かがを助けてくれたんだと思うのです。


「……名前?」

「あ、すみません。やっぱりは隠していたんだと、そう思ったんです」


だからと言って、終わりよければすべてよし、なんて言わせないわ。
帰ったら徹底的にこの件を聞くんだから。

そう思いながら、煙緋さんの問い掛けにそう返した。


「おや。愛しの妻に隠し事とは。浮気を隠すタイプかな?」


しかし、話はなんだか別の方向に行っているようで。う、浮気?
浮気とは、男女の意味で言うなら、愛する気持ちが他の異性へ移ってしまったこと、という意味だったはず……。

私としては、彼が本当の運命を見つけたのであれば、それで良いと思っている。……けど、最近はその気持ちに揺らぎが出ている気がしていて。


彼が本当の運命を見つけたなら、この席を素直に渡す。そう決めていたのに、誰も奪わないで___執着のようなものを感じている。

仙人が欲を抱いてはいけないのに……私は、いつの間にか欲張りになってしまったらしい。


「それは間違いなくあり得ないことじゃよ、煙緋。降魔大聖は瑞相大聖にベタ惚れじゃからのう」

「へっ!?」

「瑞相大聖。貴女はもう少し降魔大聖から受けている愛を自覚した方がよいのう」

「も、もう少し……そう言われても」


こうして他から言葉を向けられる度に安心が生まれ、同時に「本当にそうだろうか」という疑いも生まれてしまう。
……遠い昔、仲間の輪から外れていた経験が、どうしても邪魔をしてしまう。信じたいという気持ちに割って入ってくる。


「……なら、この話は空とパイモンに聞いたかな?」


片目を閉じ、こちらへ人差し指を向ける煙緋さん。一体何の話だろう?
そう思いながら私は煙緋さんの言葉を待った。


「先程、あの空間から脱出する際にと夜蘭さんが言い合いになったと話しただろう? 彼女のある言葉に、は分かりやすく反応したんだ」

「ある、言葉?」

「そう。『貴方には脱出しなければならない理由があるはず。貴方が生きる上で忘れてはならない存在が、貴方を待っているはずです』ってね」

「!」

「これ、誰を指していると思う?」


……帝君、でしょうか。
そう思っていると、ピンさんが横から割って入った。


「帝君ではないよ、瑞相大聖」

「え?」

「なるほど、自己評価がかなり低いタイプと見た。真っ先に自分が浮かばないのは謙虚だから、ではなさそうだ」

「帝君でないならば、誰を指していたのですか?」


夜蘭さんという方もきっと璃月人だ。それに、彼女の祖先は夜叉と関わりがあったと空さんとパイモンさんから聞いている。であれば、彼女が指していた人が帝君と結びついてもおかしくないはず……何故なら、夜叉は帝君に使えた存在なのだから。

ですが、ピンさんと煙緋さんの様子から、どうやら違うようで。


「貴女だよ、名前」

「! わ、たし」

「もしかすれば、帝君も含まれてたかもしれない。自身もその意思はあっただろう。けど、夜蘭さんが言った言葉に含まれた人物……それは貴女だ」

「……」

「どうやら夜蘭さんは、当時消息不明だった貴女を知っている様でね。犠牲になろうとするに『諦めるつもりか』『もし妻が生きていたのなら、貴女は一人にする気なのか』……そんな言葉を込めて伝えたんだってさ」


夜蘭さん……彼女は、仙衆夜叉とは別であった私を知っている。益々彼女と会ってみたい気持ちが強くなった。


「……あれ? 今、伝えたと言いましたか?」

「うん、言ったよ。どうしても内容が気になったから本人に聞いたのさ。どういう意味でに言ったのかって」

「煙緋さんは夜蘭さんとお知り合いなのですか?」

「以前、粉飾決算にまつわる厄介な案件を解決してくれたことがあったんだ。他にも色々と関わったことがある」

「なるほど……」


どうやら煙緋さんは夜蘭さんと個人的に付き合いがあるのだという。……前に空さんとパイモンさんに伝えてはいますが、彼女からもお願いができるでしょうか。


「どうしたのかな?」

「いえ、前に空さんとパイモンさんにも伝えたのですが、一度夜蘭さんにお会いして話がしたい、と思ってまして。ですが、2人によれば中々会えない人だとか」

「まあ、確かにそうだね。けど、そう難しい事でもない。交流の場が欲しいのなら、私が用意しよう」

「! 本当ですか!?」

「勿論。夜蘭さんは空とパイモンを信用しているようだし、彼らともあの後交流があったみたいだし……貴女を疑うこともないだろう」


伝えてみれば、なんだかあっさりと話が進んでしまった。
私の中では夜蘭さんは気難しい印象があったのですが……。


「それに、貴女が瑞相大聖であることは揺るぎのない事実だ。喜んで日程を調整してくれるはずさ」

「そ、そんなに簡単に話が進むでしょうか……?」

「日程調整はやると思うよ。なんたって貴女は、璃月の英雄の一人なんだから」


そう言えば先程、煙緋さんが仰っていた。夜蘭さんの祖先は夜叉と関わりがあったのだと。であれば、彼女個人も興味があるのかもしれない。私の名を知っていたという事実もあるのだし。


「よし! そうと決まれば、夜蘭さんに話を聞かなくては! 空とパイモンにも話していたんだろう? まだ璃月にいるなら、早めに捕まえて話を練らないと」

「えっと、その。ありがとうござます、煙緋さん」

「構わないさ。こうして貴女と会話出来ることが嬉しいんだ。今度、個人的に出かけてくれると嬉しいよ」

「! はい、是非!」


この件のお礼として、煙緋さんのお願いを聞くつもりだった。まさか向こうから提示されるとは思わなかったけれど。
璃月港内で出かけるのなら、今日のように業障に気を付けなければ。



「話は済んだかい?」

「ピンさん! はい、それはもう充実したものでした。煙緋さんを紹介して頂き、ありがとうございます」

「どういたしまして。煙緋も貴女と会いたがっていたからね」



ところで、ずっと貴女を見ている彼に気づいていたかい?
そう言ってピンさんは視線を私から別の場所へ移した。それにつられるように、私も視線を移した。



「……!?」

「おやおや、旦那様のお迎えかい?」


そこには、あいかわらず高い場所からこちらを見下ろすがいた。煙緋さんも気づいたようで、にそう声を掛けていた。

は私と目が合うとこちらに降りてきた。勿論、仙術を使って。


「予定より帰る時間が遅かった。故に、様子を見に来た」

「心配性だねぇ。愛されているじゃないか、名前」

「え、煙緋さん……っ」


突然、煙緋さんが私の腕に抱きついて来た。彼女は炎元素を扱うようで、少しだけ暖かい。ですが、急に抱きつかれると驚きます……!


「煙緋」

「おや、同性でもダメなのか。心が狭いぞ、。私はただ純粋に彼女と仲良くなりたいだけだ」

「であれば抱擁は愚か、触れなくともよいだろう」

「それが狭い、と言っているんだ」


あれ、なんだかと煙緋さんの空気が……いや、主にの纏う雰囲気が重くなっているような……。


「煙緋、そこまでにしてやりなさい」

「分かったよ、ばあや。急に抱きついてすまない、名前」

「いえ、その……大丈夫で、きゃあっ!?」


煙緋さんに気にしていない、と伝えようとすれば、誰かに引き寄せられた。それが誰なのか、匂いで分かった。である。


「我らは帰る」

「え、もう!? まだ話したい事があるのに」

「また今度でいいさ。そうだ、”例”の件、次に会うときに候補を伝えられるように準備を進めておくよ」

「! はい、お願いしますっ」


煙緋さんの伝えようとしている内容が分かった私は、彼女に返事をした。は会話の内容が分からなかったのか、少し不思議そうな顔を浮べていた。けど、話が終わったと判断したのか、すぐさま移動した。

……一瞬にして、目の前の光景は望舒旅館となった。


「はぁ……あやつも要注意人物だな……」


私から腕を離したは、額に手を当てボソッとそう呟いた。誰の事を言っているのか分からず、私はに問いかけた。


「誰が要注意人物って?」

「煙緋だ。距離が近い」

「別に良いじゃない、何か悪い事でもあるの? あ、彼女が炎元素を扱うからかしら!」

「違う」


じゃあ何で要注意人物なの?
そう聞こうと思って、ある事を思い出した。そうだ、煙緋さんから聞いた内容!


「ところで

「うん? なんだ」

「層岩巨淵の事なんだけど……まだ、私に隠している事あるわよね?」


先程、煙緋さんから新事実を聞いたのだ。ここで白を切れば、確定でが隠している事が確定する。


「前に話したことが全てだ。まだ疑うのか?」

「実は煙緋さんからとても良い話を聞いたの。……ちょっと話しましょう?」



___この時の私を見ていたはこう語った。圧がすごかった、と。



***


オマケ


好感度で開放されるボイスネタ
〇〇について

・名前→煙緋
「煙緋さんからは法律というものを勉強させてもらってます。私自身、人間社会の決まりについて気にしたことがなかったので、彼女には頭が上がりません。もし、知らずのうちに法を犯していたら……うぅ、多分していないはず、です」

・煙緋→名前
「仙人と言えば、威厳があり堂々としているイメージが強いんだけど、彼女は親しみやすい方だね。彼女の方がうんっと長く生きているというのに、歳が近い人なのではって思ってしまうよ。……そんな彼女だから、あんな悲劇に巻き込まれてしまったんだろう。戻ってきてくれて、本当に良かったよ」






2023/10/16


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