「お父様、結果が届きました」

『どうだったかい?』

「勿論、合格です」

『ははっ、流石は姫!期待通りだ』

「お褒め頂き光栄です」


とあるバーにて
少女はモニターの前で嬉しそうに微笑んでいた。

彼女の手にあるのは、合格通知書。既に開封しているようで、結果を見た後だと言うのが分かる。


「姫」

「どうしたの?弔」

「……絶対に裏切るなよ」

「もう、弔ったら……。それ何回目だと思ってるの?それで44回目よ」

「だって、あのゴミだらけの場所に姫が行くと思うと……」


声音が落ちる死柄木に少女は近付く。
そして、自分より高い位置にある頭に手を伸ばして、優しい手つきでなで始めた。


「心配しなくていいって言ったでしょう?それに、一生のお別れじゃないんだから。……私は絶対に捕まらないわ」

「…………分かった」

「素直な子は好きよ」


そう言って少女は死柄木から離れ、再びモニターの前に移動した。


『色んな手続きはこっちで何とかしているから、安心すると良い』

「感謝します」

『君の働きで、弔達が動きやすくなる。失敗は許されないよ?』

「勿論です、お父様」

『期待しているからね、姫』


その言葉を最後にモニターは真っ暗になった。
少女は自室に戻る事を死柄木と黒霧に伝えると、部屋を後にした。


「お帰りなさい、マスター」

「ただいま」


少女が自室に戻ると、そこには自分が部屋の主だとでも言いたい程に寛いでいる少女がいた。
米神部分からは角が、腰辺りからは尾が生えていた。
その少女は何かの雑誌を読みながら、ソファでうつ伏せになっていた。


「何か面白い物でもあった?」

「ん〜、まあまあね。アイドルの私にはもうちょっと可愛いのがないと」

「あら、これは貴女には合わなかったみたいね。なら、次に外出したときに貴女が気に入りそうな雑誌があったら買ってくるわ」

「気が利くわね、マスター!」

「ありがとう、エリザベート」


エリザベートと呼ばれた少女は嬉しそうに尾を揺らした。
この超人社会では見慣れた光景ではあるが、彼女は人間ではない。

モードレッド、燕青、エリザベート。
彼女の前に姿を現した三人は彼女の個性に関わる存在……『サーヴァント』と呼ばれる存在だ。
サーヴァントとは、英霊と呼ばれる死後英雄として讃えられた存在の霊だ。その存在が持つ力は脅威的なもので、人間が太刀打ちできるようなものではない。

彼女の個性は、サーヴァントを憑依させるものである。
少女はその個性のお陰でこれまで何度も多くの罪を重ねてきた。しかし、それは世間的に罪と呼ばれているだけで、少女の中では罪とは一つも思っていない。
何故なら、少女はこれが自分の使命だと思っているからだ。


「さて、食事・・の時間ね」


自分が敬愛する『お父様』のために、少女は今日も罪を重ねる。





2021/07/03


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