第4節「神野区の悪夢」


side.爆豪 勝己



「ごふ……っ」

「……!」


口から血を吐いた名前。その血は俺の頬を擦った。


「さあもう一度目を覚ませ」

「!? あああああああッ!!?」


名前が悲鳴を上げ、俺の身体の上に倒れてしまった。


「かっ…ちゃん……にげ、て……!」


その言葉を最後に名前は動かなくなった。


「おい、名前……?おい、起きろ」


呼びかけても、身体を揺すっても反応がない。
ウソだろ、なぁ……起きろって!起きてくれよ、名前!!!


「貴様!! 苗字少女に何をした!!」

「何って、彼女は僕達にとって希望なのさ。この世界を変えるために必要な存在なんだよ!!」


遠くで聞こえる声も段々遠くなっていく。
名前が動かない。その事実を受け入れる事を脳が拒んでいる所為で頭が上手く回らない。
今も尚、名前の背中からはドクドクと血が流れている。抑えても抑えても全く止まる気配はない。


「そらッ!!」

「!!」

「まだ躱すか!ははっ、とんでもない反射神経だ」


名前の事に気を取られていて、自分がどんな状況なのかを忘れていた。
目の前にいたクソ仮面に触れないよう、名前を抱えて咄嗟に躱す。


「……チッ!」


別にコイツが重いとかそういう話じゃねーが、名前を抱えながら逃げ回るのには神経も体力も使う。
……このまま躱し続けていればいずれ捕まるのは目に見えている。
だからって、名前を犠牲にして逃げるなんて事はできねぇ!


「爆豪少年!今行くぞ!!」

「させないさ、そのために僕がいる」


今の状況、俺と名前は完全にオールマイトにとって邪魔になっている。
勝負というものはいくら弱い奴が一斉に掛かってこようが、基本的に数が多い方が勝つ。名前が離脱して今は6対1……コイツを庇いつつ逃げ回り続ける事しか思いつかねェ……ッ!


「貰った!!」

「!」


しまった、考え込みすぎて間合いに入られた!
目の前にいるヴィランの手には刀。その刀を俺と名前に向けて振り下ろす気だ。ダメだ、今からじゃ躱し切れねェ!!
せめて名前だけでも……!!


「……クソがァっ!」


気絶した名前を守るよう強く抱きしめた。
……その瞬間、金属音が上から響いた。



***



side.???



「……ナマエが泣いている」

「ああ。……とても痛そうな声だ」



そこには金髪赤眼の男と色素の薄い髪に紫眼の青年がいた。
身長は金髪の男の方が少し高いか。



「それに……これは、我と貴様以外のサーヴァントと擬態しているのか?……いや、取り込んだ・・・・・と言った方が正しいか」

「おかしいな……私が調べた限りでは一人が限界なはず……二人ならまだ納得はしようと思えばできるけど、私と王以外の9人と擬態しているというのかい?」

「どのような手法で、あのような姿に至ったのかは後で考えるとしよう。……まずは我のマスターを救う事だけを考える」

「私のマスターでもあるんだけどー?」



響く破壊音。
その音が聞こえる場所に二人の男性……『ギルガメッシュ』と『マーリン』は存在していた。



「面倒な事に名前が契約したサーヴァント共は我が友を含めて、厄介な奴らが多い。……まぁ、貴様では話にならんだろうな」

「むぅ。そんなのは分かってるよ」

「名前の相手は我がやる。貴様は我の引き立て役だ、花の魔術師」

「引き立て役……まあ、あの状態のマスターをまともに相手に出来るのは貴方だけだ。私は王とマスターをどう“隠す”かを考えるとしよう」



現代に溶け込んでも違和感のない格好をしていた二人の姿が変わる。所謂“武装化”という奴だ。



「ふん。……しくじるでないぞ、マーリン」

「勿論さ」



二人はその会話を最後にそれぞれ別の場所へと散った。





2024/03/12


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