第1節「水泳」
一学期全ての課程が修了し現在は夏休みだ。
学校があったのでサーヴァント達と過ごす時間が減ってしまっていたが、夏休みのお陰でその時間も少しずつ埋まっている……はず。
残念ながら学校側から『長期の外出を控えるように』と言われているため、外出する事はできなかったけど。
林間合宿が段々と迫っていく中、A組女子で約束していたある日が迫っていた。
ある日、というのは。
「スク水……だっさいわね」
「学校なんだから他の水着着るわけにいかないでしょ?」
「……むぅ。それでは奏者の素晴らしいボディを見られないではないか!」
「ネロ?」
今日はA組女子とプールで遊ぶ日なのだ。
場所は学校のプールである。
学校指定の水着に着替えている中、横からぶつぶつと文句を言われる私。
こらー大人組ー、ジャックは大人しくしてるぞー。
……まあジャンヌは前世の私と同い年だけど。
じゃあ真の大人はネロという訳か。いや、肉体は当時の全盛期で召喚されてるはずだから……?じゃあジャック以外年齢はほぼ変わらないという事で。
「随分準備に時間かかったな」
「ごめんごめん」
響香ちゃんに軽く謝りながら、みんなの元に駆け寄る。
どうやら私が最後だったみたい。
「まずは準備運動からですわ!」
「はーい!」
百ちゃんの指示に三奈ちゃんが元気よく返事する。
「これが楽園……。美少女の集まりか!」
そういえばネロは美少女好きだった。
「勿論一番は奏者であるぞ!」と抱きついて来たので「はいはい」と引き剥がそうとした瞬間、ある感触に疑問を抱く。
視線を抱きついて来たネロに移すと……
「な、ななな……!」
「どうだ奏者よ!余の水着姿は!!」
「なんでその水着なのよ!?」
「この水着こそが余の美しさを現わすのに相応しいと思ったからだ!」
そうだった。
この皇帝様は自分が大好きだった。
ここに男子勢がいなくて良かった。こんな水着絶対目のやり場に困るもん!!
まあ私は慣れてるけどね。ネロの水着姿もそうだけど、前世で他のサーヴァント達も水着姿だった事があるのだが、かなり目のやり場に困ったものだ。
「名前、これが本物の水着ってものよ」
「アヴェンジャーまで!?セイバーよりはましだけど、他の水着は無かったの!?」
ジャンヌも中々きわどい水着着てるな……!
本当にここに男子勢がいなくて良かった。
……この時はそう思っていた。
***
「あれ、男子達も今日プール使うんだ〜」
「え」
透ちゃんの発言に脳が「マズい」と警報を鳴らす。
まずいまずいまずい!この倫理のない格好をしているネロとジャンヌをどうにかしなければ!!!
「ちょっとセイバーとアヴェンジャー、せめて何か羽織って!!思春期男子に二人の格好は目に毒だから!!」
「余の身体が毒だと言うか、奏者よ」
「過激すぎるって事! 自覚あるなら分かってよ!?」
「貴女のせいで折角買った水着を着る機会がないの。此処で着なきゃ勿体ないでしょ」
「わ、私の所為じゃないのに……。学校側から言われてるんだってば……」
こんな事をやっている間にも男子達が続々と集まってくる。
ああああぁぁ………私の印象が変わっていくうううぅぅ……。
「あそこにいる美女二人は誰だ!?」
「やっぱり俺達の楽園で間違いなかったんだ!!」
「聞いたか奏者よ!やはり余は美しいのだっ」
「ま、悪くはないわね。視線は気色悪いけど」
くそう……上鳴君、峰田君!!
「苗字、ありがとう!!!」じゃないんだよこの状況は!?
お願いだから二人を褒めないで!?特にネロ!!すぐ調子に乗るんだから!他のサーヴァント達にも言えるけど!!
「そんなことよりいつまで準備運動をしておるのだ! 早く余と遊ぶのだ!!」
「おかあさん、あそぼっ!」
「メンタルボロボロの私を癒やしてアサシン……」
「なぜ余でないのか!?」
ガクッと項垂れている私の肩に誰かが手を置く。
……この魔力は、ジャンヌか。
「やっぱりスク水なんて似合わないわ。こっち着なさいよ」
「何その水着!?私買ってないよ!?」
ジャンヌの手には明らかに面積が少なすぎる水着。
そんなものいつ買ったのよ!?……まさかこの前の日曜日に一緒に出かけた日?
「私があんたに似合うだろうって買って置いたのよ」
合ってたーっ!!
どのタイミングだ?もしかして御手洗いに行ってた時!?
待っててって言ってたじゃん?!
「自分の水着あるって言ったじゃない?!なんで買ってるの!?」
「その買ったって水着見たけど、あれよりこっちの方が似合うわよ」
「ちょ、ちょっと何脱がそうとしてるの?!」
このままでは完全に社会として終わってしまいそうな気がしたので最終手段である令呪で縛り、何とか難を逃れた。
この子達偶に暴走するんだよね……。
あ、思考の方ね。物理的だったら学校壊れちゃう。
2022/2/17
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