第12節「期末テスト」



「私のペアは彼…キャスターにします」


マーリンには後で説明するとして……。


「うむ。で、苗字の相手だが……今回の為に呼んだゲストだ」

「ゲスト?」


相澤先生の言葉にオウム返しをしたその時。


「そう。お前が良く知る人物・・・・・・・・・だ」

「良く知る人物?」


誰のことだろう、と思考を巡らせていたとき。


「ゲストは僕だよ、名前」

「へ?」


空間が歪んだように目の前に現れた人物。それは……


「な、なっ……!」

「あ、驚いちゃった?言ってなかったもんね〜」

「なんで此処にいるの!?___お父さん!?」


職場体験で見慣れた姿、ヒーローアクアことお父さんが目の前にいた。
どうやら個性で背景の色と同化していたらしい。


「アクア!?」

「しかも名前ちゃんお父さんって言った!?」

「じゃあ苗字の親アクアとサナーレ!?」


この通り知名度の高い私の両親、アクアとサナーレは二人組のチームを組んでいる。
実は世間でNo.5という数多いヒーローの中で五本指に入るとんでもない支援率を持っているのだ。……普段の様子から全く想像付かない。


「初めまして〜名前のクラスメイトの皆さん!出久君と天哉君、焦凍君は2回目か!名前の父『アクア』でーす!これからも名前の事よろしくね〜」

「お、お父さんっ!恥ずかしいからっ」

「うぅ……遂に名前も反抗期に入ったのか……っ!」

「なんか私が悪いみたいじゃない……!」


明らかに私に対するお父さんの態度にクラスメイトが引いている。
だって焦凍君と飯田君も初めて会った時引いてたもん。
二人の感想今でも覚えてるよ?


『アクアに娘がいるというのは両親から聞いていたけど、まさか苗字君だったとは……』

『飯田君とことうちの両親、交流あったの?』

『偶にチームアップをしていたそうだ。だが、聞いていた人物像とは違うような……?』


これが飯田君の感想である。
まさかの飯田家とも関わりがあったとは。驚きの事実が発覚したんだよね。
うちの両親の交流範囲に驚きである。


『……俺の知ってるアクアはあんな人じゃなかった』

『因みに焦凍君の中でお父さんはどんな感じだったの?』

『親父が昔からの好敵手だと言ってたから、てっきり彼奴と似てると思って』

『つまり直接会ったことはないんだね』


こちらが焦凍君の感想である。

二人してイメージと違ったって言われているのである。
……もうちょっと自重してほしい。



「あれ?でも苗字の個性、どっちのも継いでなくない?」



上鳴君の何気ない質問に身体がビクッと反応する。

分かっていたはずだ。
……両親がヒーローと分かれば真っ先に個性に疑問を抱かれるだろうと。


「確かに名前は僕達二人の個性を継いでない、所謂『突然変異』の個性さ」

「突然変異?」

「そう。多くは親の遺伝である事が多いんだけど稀にあるらしくてね。例は少ないけど、実際に起こりえる事さ。まあでも可笑しな話ではない。だって個性は発現するまでわからない・・・・・・・・・・・ものじゃない?」

「確かに……!」


まだ私は個性という異能力がある事が当たり前である世界に馴染めていない。
きっと前世の記憶がなければすんなり受け入れ理解出来ただろうけど、個性というものがない世界を生きていたから、未だに不思議で分からない事だらけだ。
でも、両親やこの世界を生きている人達にとっては、これが当たり前の日常で。


「因みに名前はサナーレにすごく似てるよ。瓜二つ」

「そうなんですか!?」

「出久君は見たでしょ?」

「はい!!聞いてはいましたが、思っていた以上に名前ちゃんそっくりでした!!!」


いつの間にかクラスメイトと雑談を始めてしまっているアクアことお父さん。
……テストだっていうの、忘れてるのかな。


「コホン。……じゃあ此処に来たのは、私の演習試験をお願いされたから?」

「それもあるけど、良い機会だから名前の親が誰なのかって言っておこうと思って。まあ近いうちに発表する気だったけど!」


本当に私を自分たちの子供だと世間に公表する気なんだ。
此処で堂々と自分の娘だと言っている時点で本気なのが分かる。


「……アクアさん」

「あ、ごめん相澤君。娘の話になるとつい……」

「はぁ……」


どこか相澤先生から慣れを感じる……。
そういえば雄英側に私について話していたんだっけ。じゃあこの慣れ具合はその時に経験済みだからって訳か……。


「……改めて。ゲストとしてNo.5ヒーローのアクアさんに来て頂いた。対戦相手はさっきも言ったが苗字だ」

「全力で相手するからよろしく、フェイ」

「……はい!」


此処からは親子としてではない。ヒーローとヴィランという立場だ。





2022/2/4


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