第11節「備えろ期末テスト」



思っていたとおり許可はあっさりとれて、遂にやって来た勉強会当日。
勉強会の為に空けた部屋をエルキドゥと四郎に手伝って貰い、何も出さないなんて訳にいかないので、アーサーに手伝って貰いながらもてなし用にお菓子を作った。
よし、準備は万端!


「主殿、お二人がお越しです」

「通しておいてくれない?私お菓子持ってくるから」

「御意」


小太郎からかっちゃんと切島君が来たと言われ、中に入れて部屋まで案内するようお願いする。
小太郎は一言肯定の言葉を口にして、その場から消えた。


「ナマエ、何持ってるの?」

「お菓子だよ。今から友達と勉強会なんだ」


話しかけてきたジャンヌの質問にそう答える。


「勉強会?大事なのそれ?」

「勿論。合格しないと合宿行けないもん」

「……合宿?」


あ、そういえば合宿の件、サーヴァントみんなに一切話してなかったや。
護衛に来てた小太郎は聞いてたから知ってるだろうけど。
ジャンヌのこの様子…これは怒っていらっしゃる。


「なんでそんな大事な事言わないの!?」

「だってまだ行けるって決まった訳じゃないから……っ」

「どちらにせよ、職場体験って奴と一緒でまた暫く家にいないって事でしょ!?」

「そ、そうだね……。全員連れて行けないからあああっ」


職場体験はお父さんが側にいるし大丈夫だと思って誰も連れて行かなかったのだが、ヒーロー殺しの件もあるから今回は誰か一人合宿に連れて行くように、と両親から言われている。
期末テストに合格した後にお願いするつもりだったのだ。

お願いだから身体を揺らさないで欲しい。
お菓子がこぼれるから!!


「ナマエ、私を連れていきなさい!!」

「えー…。人多いよ?耐えられる?」

「ぐっ……!」


ものすごく嫌そうな顔をしている……。
授業の間の休み時間でさえ嫌そうなのに、合宿は無理そうだな。
と言うことは、同じように考えるとギルも除外だな。


「まあまあ。帰って来たら遊びに行こうね」

「……絶対、よ」

「勿論。テスト終わった後にも遊びに行こうね」

「し、仕方ないから付き合ってあげる」


頬を少し赤く染め、ジャンヌはそっぽを向いた。
隠せてないよ、顔。
素直な彼女に思わず笑みが零れた。



***



「いらっしゃい。かっちゃん、切島君!」

「お邪魔してるぜ!」



入ってきたと思えば切島君は目をキラキラさせながら部屋を見渡している。
かっちゃんは特に興味がないのか、机の上に荷物を置いて椅子に座る。
学校の机椅子は結構乱暴に扱ってるのに、うちの椅子には普通に座るんだ。礼儀正しいのやら悪いのやら……。


「何かご用があればいつでもおっしゃって下さい」

「ありがとう、アサシン」


お辞儀をしてその場から消えた小太郎を見届けた後に扉を閉める。

丸い形状の机でガラス製、椅子はクッション付きのものだ。
ずっと座ってるとお尻痛くなるからね!

それにこの部屋は陽当たりが良いしテラスに続いているから、ちょっとした休憩にはもってこいだ。
ガラス制の大窓で庭とテラスが丸見えなので、庭で遊んでるエルキドゥとジャックが見えるかも。あ、ジャックが見えた。可愛い。
あと、下手したらネロの為に造られた薔薇風呂が見えるかも。

……と、一部だが金持ちパワー全開であるこの家が我が家です。
まだ一部である。
一部金持ちサーヴァントがいるから、その要望を貰って偶に改装してるんだよね……。


「なぁ苗字……広すぎねぇか!?」

「あははー、私も思う」

「なあなあ!後で家の中見て回ってもいいか!?」

「勿論。勉強ばっかりしてるのもあれだし、休憩がてら見回ろうか。いいでしょ?かっちゃん?」

「好きにしろ」


すっかり準備が整ったのか、私と切島君を見て早くしろと目線で訴えられる。


「おら、さっさと始めるぞ」

「「よろしくお願いします!!」」


今回の目標としてかっちゃんに頭を叩かれないようにしよう、だったのだが秒でその目標は崩れた。
まあすごく痛いってわけじゃないし手加減されてるのが分かる。
だって切島君叩いてるときの音すごいもん。


「なあ、これ食べて良いのか?」

「勿論!食べて食べて?かっちゃんもどーぞ」

「……悪くねぇ」


机の中心に置いてあるお菓子に視線が向いた切島君に自由に食べて良いと伝えると、勉強を一時停止して休憩に入る。
おぉ、一時間半も向き合ってたんだ。


「あ、飲み物がなかったね。希望ある?色々あるよ」

「何でも良い」

「それが一番困るんだってば、かっちゃん……」

「俺炭酸飲みてぇ!」

「オッケー!」



___こうして勉強会は進み、テスト本番がやってきた。



第11節「備えろ期末テスト」 END





2022/2/4


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