間接であれ、直接であれ
「 間接キスごときで 赤面 ? 」
どうやら彼女は自分が口をつけた
ミカンジュース1口分の価値を、
「 シャイだなあ 」
___これっぽちも、理解していないらしい
とびきりの美人だけど
性格はひん曲がってる。
彼女に自分の恋人を奪われたらしい
僕のクラスメイトが今日の昼休み、
教室内に響き渡る声で悪口を言っていた。
悪口はよくないことだ。
だから僕は僕なりに気を回して
それが彼女の耳に
入らないようにしていたのに、
昼休みが終わる頃には本人も知っていた。
どこから知ったんだろう、こわい。
もし僕が女に生まれていたら
物心つくのと同時に人間不信になってる。
間違いない。
「間接……、“ごとき”って……」
「嘘! キスすら言えないの!?」
「いや言えるけど………………きす」
「キスキスキスキス」
「や、やめてよ……」
言葉のキス暴力に眉を寄せながら缶を呷る。
あ、と思ったのと同時に
彼女がまた楽しそうにからかいだした。
「はい、間接キスの間接キス〜」
「……そういうのよくないと思う」
「全くもー。私たち、間接キスよりもっとすごいこと、したじゃん」
「……」
彼女の瞳よりも先にみてしまうのはその唇。
隣にいるとあの日を思い出して
煩悩にさいなまれる。
困った。
意識しないと蠱惑的な唇から
目をそらせない。
ミカンの酸味とジュースの甘味で
舌がとけそうで、
そらした視線をどこにやればいいのか
わからなくなったから、
仕方なく手元の缶をみておいた。
そう、なんだよなあ。
僕の初めてのキスの相手は、彼女だ。
( title:間接であれ、直接であれ )
「もうとっくにチャイム鳴ってるよ」
「一緒にさぼろう。ね、ジュースちょうだい」
するりと缶が抜き取られて、思わずため息。僕もだけど彼女も大概にするべきだ。
またそうやって遠回しに僕をからめとろうとしてくる。自覚があるかどうかなんて、考えたくもない。
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