明日地球が滅亡する



例えば、明日地球が滅亡するとしよう。現実問題そんなことはたぶんきっと絶対にないのだけれど、もしも万が一そんな状況になったとしたら。ありきたりな問題ではあるのだけれど、地球最後の1日を、僕は誰と何をして過ごすだろうか。


「そんなの、考えるだけ無駄じゃない」


きみはころころと笑う。

自習中にでた課題のプリントを終えた人たちが各々自由時間を楽しんでいるなか、僕が割と真剣に言ったことをいとも簡単に笑い飛ばしてくる。


「いや……結構重要なことだと思うんだけれど」

「無駄無駄、ぜーんぶ無駄」


体感時間が僕とは違うのかもしれない。机に上肢を投げ出して、隣の席の僕へ顔を向けるきみは顔も態度も緩み切っている。そうやってゆるゆる生きていると、きっとすぐに地球滅亡する日になるよ。


「だって明日も学校でずっと自習だし、今日みたいにプリントやってザワザワして飽きたら寝るんだよ、みんな」


たしかに。そうかもしれない。


「考えなくてもわかるのに考えるなんて、無駄だよ。キミは明日もプリントの問題を解くことに励みなさいな。そっちにエネルギー使った方がいい」


緩んだ笑顔。それはいつものことだけれど、いつもと違うものも孕んでいる。


「……ねえ、変なこと考えてない?」

「さー、ひと眠りしよっと」


チャイム鳴ったら教えてね、と机に伏せた途端にきこえてくる寝息。もう寝たの? しかも僕の言葉は無視。

苦笑しながらしばらくそれを眺めたあと、同じように寝る態勢にはいる。


隣で眠っているのがわかる距離って、たぶんきっと絶対ものすごく近いんだと思う。

だって眠気が、僕にも移ってくるんだもの。


《 明日地球が滅亡する 》


僕ときみの2人だけが知る、例え話じゃない話。
最後の1日は夢の中できみと、今日みたいにゆるゆる笑っていたい。僕は心から、そう思っているんだけれど。

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