こんにちはクソッタレさようならクソッタレ
腹の中からごろりと生まれてどっかでころっとくたばるまで永遠を錯覚する程に続く責め苦のようなつまらない人生その無駄な時間のまだ半分も生きていないが正直同じようでいて同じではない道のりに既に飽き飽きしていて
変えようと思えば台所の下の引き戸の中に入っている買ってから一度も研いでいないなまくら包丁(ご覧くださいトマトを切ると物凄い勢いで崩壊します!)を片手に携え外に飛び出し目についたクソみてぇに人生を謳歌する真っ赤な他人をそれこそ真っ赤にしてしまえば鉄の柵の向こうの世界から断絶されたイチニイチニの学校に行けるのだがそんな禁忌を犯してまで変えるほどに落ちぶれてはいない
それよりも脳みそは便利だ脳内でなら何度他人を真っ赤にしても許される、むかついたあいつも人を見て嘲笑う奴等も内心俺を侮蔑しているどいつもこいつもみんな滅多刺しにしてやった、昨日は世界が核の炎に包まれた
娯楽の一貫でありふれた音楽にそんな恨み辛みと自分の中の限りないリアルを乗せてバケツの中の墨汁をぶちまけるように歌ってみるが道行く人に汚ならしいゴミカスとしか認識されないどころかやはり自分達は高尚な生き物だとでも勘違いしているのか侮蔑の目を向けられるのだ
「自分は世界を理解してるとでも思ってるのかしら」
「斜に構えてればカッコイイとでも思ってるのかしら」
「典型的な厨二病だわ」
「子供過ぎて見ていられないわ恥ずかしい」
「ああ恥ずかしい、恥ずかしい!」
うるせぇ黙れお前らみてぇな脳内お花畑なんかに何がわかるってんだ俺もお前も足の先から頭のてっぺんまで同じ成分でオツムの出来がちょっと違うだけで地球にのさばる害虫には違いねぇんだよゴキブリ共め
歌う、歌う、歌う、自分の為に自分の歌を、自己欺瞞と自己満足と自己主張、自己塗れの泥塗れ、腐れ頭にのっぺらぼう、自分の歌を誰が聴かずとも歌い続ける、くだらねぇ仮面をつけて笑い合う奴等の仮面の下のドロドロに溶けた汚ねぇ真理を歌い続ける
お前ら身に覚えがあるだろう!優しさを語る二枚舌の神経が繋がった大層な脳みそで俺みてぇに下衆のように相手を笑ったことがあるだろう!俺に向けたように相手を嘲笑ったことがあるだろう!わざとらしく汚ならしい偽善者共め!知ってんだよ!知ってんだよ知ってんだよ!何もかもバレてんだよ!これはお前らの罪を詩ってんだ!
羽根を折って地面に落ちた哀れな雀を嬉々として踏み潰して何事も無かったように日常に戻るようなてめぇらの薄汚い内面は全部バレてんだよだから俺が詩ってやる皆が目を背けるドブ沼から詩ってやる
けれど意味なんかない、意味なんかない、意味なんかない、ダブルミーミングだかトリプルミーミングだか知らねぇが飾り立てる意味なんかない
意味なんかないと嘯きながら本心を吐露するその卑怯さを詩う、ああそうさ意味なんかない!
「ナカジの見てる世界を見てみたいな」
俺と対極の思考で目で世界を見る髪まで太陽みてぇな頭をした馬鹿が言う
そんな勇気なんかねぇくせにこちら側に来てしまえばそんな楽観的なこと二度と言えなくなるに決まってるさお前だってどうせ、お前だってどうせ(裏切るんだろう)(信じない)(絶対に)
「俺はナカジの歌すきだよ?俺にはむずかしいからよくわかんないけど、あー俺が見てる世界にはそういう見方もあるんだなーって、俺あんまかんがえてないからさ、そういうとこ見えてないんだろうなー」
ギターの弦の張り替えなんて面倒臭いだけのものを至極珍しそうに四つん這いで覗き込んでいたタローがそう馬鹿面で放った言葉に一瞬だけ、かれこれ数年頭の中を占領し続ける溶けた鉛の塊のような重みが消えたような気がして背筋が震える
馬鹿じゃねえの、馬鹿じゃねえの、馬鹿じゃねえの!何度も悪態をつくがそれはタローに対してなのか俺に対してなのか、まさかこんな奴に少しでも俺が理解されるわけがない、こんな毎日を只極楽と能天気に過ごしてるような奴に底辺の俺の気持ちなんか解る訳がねぇんだ!
キリキリキリキリ巻き上げて締め付けられているのは弦か俺か、張り詰めて今にもはち切れそうで、絶対にゴミカスのあいつらには何も預けないと決めていたのに俺は、こいつに、こいつだって所詮はあいつらの仲間で裏では俺のことを笑ってんだ、解ったふりして油断させてんだ、だから俺が、違う、こいつにそんなこと出来るわけがない、だって馬鹿だから、馬鹿なのは俺が一番よく知っていて、なんで俺が一番よく知っているんだ?
「俺には絶対に作れない歌だもん!すごいと思うよ!えへへ、こんなつまんない感想じゃ笑われるかな……でも俺、ナカジの歌だいすきだから」
「……お前に何が解るってんだ」
「だから、よくわかんない!よくわかんないけどすきー!わかってないとすきでいちゃダメなのかなぁ」
へらへら笑いながら平気で人の心を土足で踏み荒らすこいつはやっぱり他の奴等と一緒だと決め付けて、その横っ面を殴り飛ばす為に拳を握り締めたかった
いっそタローが他の奴等のように俺を理解した振りして哲学ぶれば、そのお粗末な頭をさらに乏めることもできた
いっそ何もかもを放棄して放置してくれれば、やっぱり理解なんてできないしされもしないんだと偽善者を罵ることもできた
理解をする訳でも理解をやめる訳でもなく漠然と肯定されたことが、どうしようもなく己がひどく矮小な価値観の持ち主なのだと、それこそ井の中の蛙、第三の道を目の前に突き付けられた蛙は生まれて初めて顔を出した太陽に焦がれ焦がされ眼を焼き身体を焼きからからに干からびて(それでも太陽の暖かさを知り)(それでも広がる海原の広さを知り)(その手に抱かれて死んでしまった)
「……てめぇなんか嫌いだ」
「うん!俺はだいすきだよ!」
願わくば太陽が雲に隠れませんように
昨日までの俺が見たら散り散りに引き裂いてゴミ箱に投げ捨ててたような、そんなこっぱずかしいセンチメンタルな歌詞をノートの隅に書いて折り隠した
笑って俺を殺して
(笑って生まれ変わらせて)
(空が晴れたのは初めてか)
(人前で泣いたのは初めてか)
(レンズを通さず世界を見たのは初めてか)
〆〆〆〆
結局認められたいそんな思春期
25.4.20