紅縞瑪瑙の想い 4 「銀さん」 「……」 「銀さんってば」 「あ、なに?」 陽が昇り始めた頃、二人で帰り道を歩いていた。男の最期はしっくりこないものであったし、何も語らないまま満足そうに死んでいったその姿は、銀時の目にやけにはっきりと焼き付いていた。自分が昔の自分に戻りかけていたという事実からも、目を背けるわけにはいかない。それでも、妙が無事だったことには心から安堵していた。 「左肩、大丈夫でした?」 「ん?ああ」 「一応うちに寄ってください。手当しますから」 「そうだな、頼むわ」 「……」 「……どうした?」 「いえ、あの……、ありがとうございました」 一歩後ろを歩く妙の顔は浮かない。彼女も思うところがあるのだろう、笑みを浮かべるわけではなく、目を伏せたままでそれだけ告げた。はらりと落ちるサラサラの黒髪が、その顔に影を落とした。 「……いや、こっちこそありがとな」 「え?銀さん?」 あのとき、妙を護ろうとした気持ちは嘘ではない。ただ、必要以上に自分の中で暴走している何かがあったことも確かだ。……そうなってしまった理由の一つに心当たりがないわけではないが、まだそれを本人に言うつもりはないし、認めていいのかもわからない。 「……あ、そうだ。簪返すわ」 「あ……」 「……」 「……」 使わずに済んだな、と笑って返そうと懐から取り出されたそれは、血でどろりと赤黒く染まっていた。おそらく、もう固まり始めている。 「……いやー、これは……うん」 「うん、じゃねーよ!」 お気に入りだったのに!不可抗力だ!そんなことを叫びながら、先程までの争いなど嘘のように日常を取り戻していく。新しいの買わなきゃダメか、金ねぇのにな、なんて考えながら、その簪は銀時の懐に再び仕舞われた。 11.05.21. 久々にるろ剣原作を読み返したら銀妙変換余裕で興奮しました しかし戦闘シーンは難しいですね…無理 →back |