通り雨 お天気お姉さんも予想しなかった、突然の通り雨。神楽ちゃんの傘に助けられて、買い物帰りの僕らは歩き続けていられた。僕の手にも神楽ちゃんの手にも、荷物がいっぱい。そのうちのほとんどが食料で、その食料の大半が酢昆布だったりするわけだけど、常にキツキツな家計で食料が少ないのと神楽ちゃんの酢昆布消費量を考えたら当然の結果だろう。 「ん?どうしたアルか?ため息ついて」 ため息つくとしあわせが逃げるアル。そう言う彼女は、いつもどおりのキラキラした目をしていた。その瞳が好きだと、そんな彼女が好きだと、気付いたのはいつだったろう。 「いや、……なんでもない、雨うっとうしいなーって思ってさ」 「せっかく神楽さまと相合い傘できるんだからもっと喜ぶよろし」 それもそうか、と出かかった言葉は飲み込んで。一緒に買い物して、その上、相合い傘だもんな。買ったものはまったく色気のないものだけど、これはこれで……ん?いいのか? 「……ていうか神楽ちゃん、傘は僕が持つよ」 「なんで?」 「なんでって……」 だって女の子じゃないか。夜兎だとしても、僕より強いとしても。っていうか強さ関係ないし。 「それに身長だって……」 「新八のくせにジャントルマンぶってるアルか?はっ」 「あ、今鼻で笑っただろ!」 あーもう、なんでこんなふうに言われなきゃいけないかなぁ。いつもこうだ。からかわれてばっかりで。だから相合い傘なんて甘い響きにも、何も感じなかったのだろう。 「……いいから貸して」 強引に傘を奪う。男のプライド?かっこつけたい?どれも違う、僕はただ…… (こうして話しながら、勢いのままに動くのが、楽しいんだ) たとえ、傘を奪うときに微かに手が触れたとしても。それよりも、ちょっと悔しそうな顔で睨んでくる姿にドキっとするなんて。僕はおかしいのだろうか。 (……おかしくてもいいんだけどね) このぐらいの方が、楽しいじゃないか。このぐらいじゃないと、神楽ちゃんとやっていけないじゃないか。 「……傘」 「うん?」 「もう遅いアル。ほら……」 雨は、いつの間にかあがっていた。ああそうか、通り雨だったっけ。 「かっこつかない辺りがさすが新八ネ」 返す言葉もない。代わりに、閉じた傘を返しもしなかった。夜兎族の身体に影響が出るほどの陽は出ていないことが幸いだった。 10.04.01. 神楽を女の子扱いする新八が好きです 自覚しても平静を保つのが新八 新神における神楽は、自覚したらグラグラするというかかなり動揺しちゃうイメージ →back |