ずるいヒト | ナノ


ずるいヒト




 落ち込んでるときに元気付けてくれるのは、昔っからエドの役目だった。弟のアルがいるせいか、エドはホントにお兄ちゃん気質。アルの方がしっかりしてるイメージなんだけど、肝心なところではやっぱりエドが『お兄ちゃん』。
 今考えると、それはなんだかすごくかっこいいことのような気がして、ずるいなぁって思う。……うん、ずるいわ、あんたのくせに。そんなことを本人に言ったら、きっと怒るんだろうけど。
(なんで、エドだったんだろう……)
 落ち込んでいるあたしを、泣いているあたしを、励ましてくれたのは。二人でってことはあっても、アルだけってことはなかった。なんでだっけ。
(……あたしを、見つけてくれた……?)
 丘の上の木の下は、落ち込んだあたしの定位置。ああ、そうだ。一人になりたくてそこへ逃げたのに、あいつは必ず見つけてくれて。それが、うれしくて。
 泣いているあたしの隣に座って、わしゃわしゃって髪を撫でてくれるの。たったそれだけのことなのに、すごく安心したのを覚えてる。余計な言葉がないから、気持ちがしっかり伝わった。
 だから、心の中ではいつも、エドが来るのを期待してたんだと思う。足音がすると、もしかして…って思っちゃうの。
「……相変わらずだなー、おまえ」
 びくっと肩を揺らして振り返れば、ほらね。やっぱりあんたがいる。何年経っても、あたしを見つけてくれる。
 一人になりたかったなんて、そんなの強がりでしかなかった。ホントは違うの。見つけてほしかったのよ、あんたに。それは、今でも変わらない気持ち。
「……だって、せっかくあんたたちが帰ってきたのに、こんな顔見られたくなかったんだもん」
 これもホント。だから逃げた。見つかりやすい場所へ。
「ふーん……まあ、そういうことなら見ねーけど」
 そう言って、隣に腰をおろして。だけど伸びた手は、あたしの頭を軽くなでた。ポンポンって。
(……え?)
 わしゃわしゃじゃ、ない。掻き回すような、ちょっと乱暴なそれじゃなくて。
(うわぁ……)
 顔が熱いのがわかる。だって、そんな、ちょっと大人っぽい態度。予想してなかったし、そんなの。ポンポンってなんなのよ、エドのくせに。
「……んだよ?」
「……なんでもないっ、帰る!」
「え?ちょ、おい!」
「待たないから、早くして」
「……待たないとか言って、なんだよその手は」
 照れ隠しに立ち上がってみせたけど。だけどね、悔しいけど、かっこよかったから。ずるいけど、うれしかったから。だから、一緒に帰ろう?




××.××.××.
頭ポンポンっていいですよね
ずるいのは、お互い様




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