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 ドアを開けると、目の前に立っていたのは見覚えのある服を着た唯だった。
「……上がっていい?」
「ダメっつったら帰んのかよ」
 帰るつもりなどないくせに。ダメなんて言うつもりもないくせに。そんなやりとりを交わしながら彼女を部屋へ上げた。
 幼なじみである小傍唯と付き合うようになったのは、大学に入ってからだ。高校は別だった上に、歳は二つ離れている。俺が唯の進路について知ったのは、本人から合格の知らせを聞いてからだった。追っかけてきたのかと問えば顔を真っ赤にして否定されたが、あの反応を見る限りあながちはずれでもないのだろう。それなりに偏差値の高い大学なのだが、バカの割にはがんばったらしい。
 付き合い始めたのは彼女が入学した年の夏。そして今日は、それから初めて迎える俺の誕生日。基本的に単純で、イベント事に張り切る性格を考えれば、何かしら気合いを入れてくるだろうという予想はできていた。
「……おい」
 予想以上だ、なんて絶対口には出さないけれど。くるっと振り返った彼女に必要以上に近づいて、にやりと笑う。
「それ、似合ってんじゃねーか」
「っ!」
 ばか、近い!と後ずさる身体を捕まえて、スカイブルーの大きな瞳を見つめる。見破られたことにか距離の近さにか、真っ赤になった頬に手を添えれば、その熱さが伝わった。
「俺のモンって感じするしな……」
 頬に添えていた手で、そのまま首筋を辿り鎖骨に這わす。ふわふわと揺れる髪を避け、そこに誘われるがままに口付けを落とした。
「、っ」
 唯が着てきた服は、以前砂月がプレゼントしたものだった。普段はTシャツにショートパンツというラフなスタイルが多い彼女だったが、もう少し甘いデザインの物も似合うのではないかと試しに買ってみたのだ。試着以降なかなか着てくれないなと思い、砂月自身半ば忘れかけていたのだが。
 オフショルダーのブラウスはシンプルなデザインで、レースやリボンといったものが苦手な唯でも着られるものだ。肩はがっつりと出ているが、キャミソールのような細い肩紐もついている。細身の彼女は見事にそれを着こなしていた。
「……、だ……」
 腕の中で固まっている彼女が、ぼそりと呟く。
「あ?」
「……だからっ! もうおまえのモンだってば!」
「……」
「……」
 半ばヤケになりながら叫ばれた言葉は、恥ずかしがり屋で素直じゃなくて、けれどいつも真っすぐな彼女の精一杯の言葉。
「……フン、上出来だ……」
 遠慮なくもらってやるよ。それだけ言うと、グロスのついた唇を指でなぞる。唇を重ねながら肩を撫で、するりと細い紐を下ろす。
「……せっかく着てきたのに」
「好きにしていいっつっただろ」
「そこまで言ってねーよ」
 口では文句を言いながらも、本気で抵抗する素振りは見せない。かわいくねぇなと思いながらも、思わず口元が緩んだ。




14.06.01.
砂唯ブームがきたので思わず書きました
22歳砂月と20歳唯で大学生設定っていうのが個人的には美味しいです
さっちゃんと唯ちゃんは誕生日別だといいなっていう蛇足




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