君は知っているだろうか 2 | ナノ


君は知っているだろうか 2




 出発二日前。この日、銀時と神楽は志村家に泊まることになった。ちょうど妙の仕事が休みだったため、一日中一緒に過ごそうとなったのである。本当の姉のように慕っているからこそ、そして妹のように慕われているとわかっているからこそ、妙と一日を共に過ごせるのがうれしかった。新八に対して気まずい想いがないわけではないが。
 新八から話を聞いたのか、それとも気配を感じ取ったのか、妙は二人の様子を心配して神楽に声をかけた。いまだに恋愛の相談をするのは恥ずかしいのだが、それでもやはり話せる相手は妙しかいない。ぽつり、ぽつりと本音が零れていく。
「それを、新八に言えばいいだけってわかってるネ。私だって言ってもらえてうれしかったから、言ってほしいって気持ちもわかるアル。でも……」
「恥ずかしい?」
「……それだけじゃないアル……」
「?」
「たぶん、たぶんだけどネ……行きたくないって思いそうで、こわいアル……」
 離れたくないって気持ちが強くなりそうで、こわい。依存なんてしたくないのに。するつもりもないのに。
 そんな神楽の一面を見て、妙はふっと微笑んだ。神楽らしくないなんて思わない。これが彼女の女の部分なのだと、そしてその想いの相手が自分の弟であることが、うれしくて。
「私はそうは思わないわ」
 妙は、俯く神楽の頭をやさしく撫でて言葉を紡ぐ。
「神楽ちゃんならきっと、好きって気持ちを力にするわ。もっとがんばろうって。新ちゃんに幻滅されないように、強い神楽ちゃんでいようとする。違う?」
「姐御……」
 それは、意識しての行動ではなくて。ただ自然と、そんな強い自分でいられる。
「それにね、たぶんそれは新ちゃんも同じだから……だから、神楽ちゃんの口から聞きたいって思ってると思うのよ」
「……ウン」
「無理に言う必要はないわ。言葉にしなくたって、新ちゃんもちゃんとわかってるから。……でもね、もし、言ってもいいかなって思えたら、できるだけ伝えてあげて?」
「……そう、アルな」
 妙の強さと美しさを感じながら、神楽はゆっくりと顔を上げた。きっと、自分の恋愛にも当てはめているのだろう。意地を張った強がりじゃなくて、本当に信頼しているからこそ、そう思える。言葉にしなくても伝わっているからこそ、時にはきちんと言葉にする。その大切さをわかっているからこそのセリフなのだと思えた。そして素直に、新八に気持ちを伝えたいと思えた。
 そこからの行動は早く、何の躊躇いもなく新八の部屋の襖を開ける。いつもなら「声くらいかけろよォォォ!」と怒鳴られてもおかしくないのに、今日は静かだ。あれ?と思ったものの、中を見て納得する。
(寝てるアル)
 部屋の真ん中で、こちらに背を向け、ごろんと横になっていた。名前を呼んでも返事はなく、思わずため息が零れる。せっかく気合いを入れたのに、馬鹿みたいだ。
「……」
 そのまま部屋を後にしようかと思ったが、一応薄手のタオルケットをかけてやる。そうしたらなんだか帰る気も失せてしまって、とりあえず腰を下ろした。新八は相変わらず、規則正しく寝息を立てているが。
(ホントに寝てるんだろうナ……)
 新八、ともう一度名前を呼ぶ。疲れているのか何なのか、起きる気配はない。
「……悪かったナ」
 寝てる相手に言うのは卑怯なのかもしれない。それでも、言いたくなったのは今だから。
「別に、姐御に話したのが嫌だったわけでもないアル。それと……」
 これは、独り言になってしまうのだろうか。だとしたら、こんなに恥ずかしいことはないけれど。
「……おまえのこと、ちゃんと好きだからナ……」
 少しだけ、声が震えた。目を見て言わなくたって、こんなにも恥ずかしい。
 小さく息を吐いて、神楽は立ち上がった。今のは練習か、本番か。きちんと起きているときに言える自信が、今はあまりない。けれど、言葉にすることが大事だということは、なんとなくわかった気がする。言われた側だけではない。言う側も、言葉にすることで自覚する想いがあるのだと。
「神楽ちゃん」
「!」
 顔が熱い。おまえ、寝たフリしてたアルか!と叫びたかったのに、声にならなかった。体を起こした新八も、顔を赤くして目を逸らす。えーと……と頬を掻く仕草が憎らしい。
「その……ありがとう」
「……チッ」
「ひどっ!……まぁ、今回はたしかに僕が悪いけど。でも、うれしかったよ」
「そりゃ、神楽様にあんなふうに言ってもらえたんだからナ」
「はは。うん、でも、そのとおりだよ。言ってもらえてよかった」
「……」
「がんばってね、神楽ちゃん。僕もがんばるから」
 いってらっしゃいはまだ早いかな、と彼は微笑む。その笑顔を見て、神楽も自然と笑みが零れた。妙が言ったとおりである。好きは、強さに変わる。離れがたくなるのではなく、次に会えるときを楽しみに、がんばれるのだ。




12.03.04.
みさとさんからのリクエストで、新神でした
『交際中だけどはっきり神楽ちゃんからは好きだと言ったことがない新神の、神楽ちゃんからの告白』ということで、設定はなんでもいいとのことでしたので、書きやすそうなのは3Zかなーと思ったのですがあえて本編未来です
タイトルは神楽→新八でも新八→神楽でもどっちでも…というかお互いきっと相手が思っている以上に相手のこと好きなんだよ!という感じです、一応
いただいたリクエストをそのままなぞっただけの文章となってしまいましたが、楽しんでいただけたらなぁと思ってます
リクエストありがとうございました!




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