たくましい腕


重い。

私は一人、世界史の教材を両手に抱え持って、教具室へと向かっていた。

…アレはつい5分前の出来事。


「オイ、綾部!」

「はい?」

「先生、これからすぐに会議なんだ!コレ頼んだ!」

「あっ、ハーイ…」


と、受け取ったのは良いものの、ものすごい量のその教材。

…しっかりするのよ3年3組委員長!私が運ばなくて誰が運ぶ!

よっこらしょ、と呟きそれを持ち上げた。


「…やっぱ誰か連れてくればよかった」


私の教室があるのは4階。教具室があるのは1階。

ちなみに今居るのは3階。

あー、まだまだ道は遠い。あー、エレベーター欲しい。

そんなことを思いながら、少しずつ階段を下っていく。

嗚呼、もう、だんだん腕しびれてきたよ。


「ハァ…って、うわぁっ!?」

「うおっ!?なんだぁ?」


前方不注意で、誰かにぶつかってしまった。

おっとっと。危ない。転びそうになるのを頑張って耐え抜いた。


「アレ、綾部じゃん」

「あ、三井くん」


ぶつかった相手はクラスメイトの三井くん。

知り合いで良かった、と思った。


「それ何?」

「どれ?」

「その両手の荷物」

「ああ…先生に頼まれちゃって。会議なんだって」


私が苦笑いをしながらそう言うと、三井くんは「フーン」と呟いた。

そして何をするかと思えば、ヒョイと私の両手の荷物を取り上げてしまった。


「あっ!え!?」

「手伝う」

「手伝うっていうか、全部持っちゃってるよ三井くん!」

「いいんだよ。オラ、行くぞ。教具室だよな?」


てくてく階段を降りていってしまう三井くん。

私も慌ててその背中を追って階段を下った。


「本当、悪い!良いよ、私頑張る!」

「お前最近頑張りすぎ。たまには俺を頼れって。な?」


…ズッキュン。

首をかしげて笑った三井くんにときめいてしまった。

犯罪だ!その笑顔は!

…とりあえず、三井くんの言うことに従うことにする。


「ありがとう!」

「おう」


ちらっと見た彼の腕は、とてもたくましかった。



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