授業中、アナタとお昼寝
「ぐーっ、がーっ」
…なんていうか、すごい。
私の後ろの席の三井くんは、ものすごーっく堂々と寝ている。
ある意味尊敬する!私そんなこと出来ない!
だけど、もうちょっと謙虚になった方が良いよ三井くん!
「みーついくーんっ♪」
先生が三井くんの席までやってきた。声だけはご機嫌だ。声だけは。怒りに満ちた顔とのギャップがまた怖い!
「授業しましょー♪」
先生の声もお構いなしに、眠り続ける三井くん。
彼、もしかしたら死んでるのでは…?
そう思ったけど、三井くんの体は規則正しい呼吸に合わせて上下していた。
そんなことを考えていると、先生が私の方を鋭い目で見てきた。
「オイ綾部!」
「へ、あ、はい!なんでしょうか先生!」
「お前、三井を授業終わるまでに責任持って起こせ!」
「えっ、なんで私が…」
「委員長だろ?」
「なん…」
「委員長だろ?」
…負けましたゴメンナサイ。
私は黙ってうなずいた。
こっそり周りに目で助けを求めたが、全員にサッと目をそらされた。
お、お前らひでぇっ!
「…じゃぁ、頼んだぞ?」
パァッと気持ち悪いほど爽やかな笑顔になった先生は黒板に戻っていった。
…さぁ、私は居眠り小僧三井くんに対する策を練らなければいけなくなったワケで。
三井くんの方を向く。
ジィーッとその寝顔を見つめ続けても、やっぱりどうしていいかわからない。
…気づいたことがある。
この男、確実に私より睫毛長いよ。
それに鼻筋だって通ってるし、唇だって色っぽい。
普段よく見ないところを見ることは、たくさん発見があった。
イケメンだ。
これがイケメンというジャンルなんだな。
決めた。次生まれ変わるときは、こういうジャンルに生まれよう。
見つめること約3分。三井くんに起きる気配はない。
こうなったら、武力行使するしか…!
ていうか、最初からそうしなきゃいけなかったんじゃないか?そんなこと思ったら負けよ私!
「三井くん起きろ!」
三井くんの耳元でそう言って、頭をポカポカと殴り始めた。
彼の眉間には、段々と皺が寄ってきている。
「んん…っ」
三井くんは私の手を避けるように体を動かした。
お、起きろ!起きるんだ三井くん!
居眠りしたらそこで授業終了だよ!アナタの場合始まってもいないけど!
「ぐーっ、がーっ」
…駄目だった。
三井くんの机に突っ伏した私は、ちらっと寝顔を盗み見る。
さっきはあんなにもガン見したのに、こんなに至近距離だと照れてしまってそんなこと出来ない。
…やっぱり、かっこいいな。
「…何見てんだテメェ」
「ひぃっ!?」
突然三井くんの目がカッと見開き、私の頭は三井くんの机に押さえつけれてしまった。
私は変な声を出して固まってしまう。
蛇に睨まれた蛙。三井くんに睨まれた私。
「いっ、いつから起きて…っ!?」
「センコーと話してたときから。ちょっと面白そうだったから狸寝入りしてた」
私はいたたまれなくて体を起こそうとしたが、三井くんの腕がそれを阻止する。
助けを叫ぼうにも、この状況をクラスメートに見られるのに抵抗があるためできない。
…無言で見つめ合う三井くんと私。
「…み、三井くん。腕をどけていただけないでしょうか。体起こせない」
「なぁ、一緒に寝直さね?」
「答えになってないよ三井くん!」
「いいから、いいから」
三井くんは再び瞳を閉じた。
それと同時に私の頭をポンポンと撫で始める。
ときどき、髪の毛をすくったり、首を触ったり。
…なんなんだ、この状況。
多分私の顔は今真っ赤だろう。
最初のうちはそうだったけど、三井くんの手つきが心地良くて、瞼が重たくなってきてしまった。
…寝ちゃ、駄目だ。寝ちゃ……ぐーっ。
―――――――――……
「おーい、委員長?俺は三井を起こせとは言ったが三井とイチャつけとは言ってないぞ」
「す、すいませんでした…」
「三井、お前はこんないたいけな少女になんてことしてんだ!」
「へーへー」
授業終了後、先生に呼び出されている私たち二人の姿があった。