そうだ、掃除をしよう
私は唖然とした。
「……ここがゴミ屋敷か」
「なんちゅー顔してんだ」
「いや……だってこれは酷い……」
定期テスト2週間前、珍しく部活がオフな三井くんに頼まれ勉強会を開くことになりましたIN三井邸。
本当はファミレスでやろうと思ってたんだけど何処も混んでて、「じゃあ私の家来る?」と言ったら三井くんは急に慌て始めて、「じゃあ俺んち来るか」となって……やっぱり私の家に行った方が良かったに違いない。
三井邸は大きな一軒家だった。
まあ何だかんだ育ち良さそうだったからね彼。やはり金持ちだったか。
……それは置いといて話を戻そう。
家に入ると美人なお母さんが出迎えてくれて、「まあ寿の彼女さん?」なんて言われて少し照れた。三井くんが即答で「違ぇよ!」と突っ込んでいてちょっと凹んだ。
三井くんの部屋は2階にあり階段を上がった。螺旋階段かよ凄いなオイ!
三井くんの部屋の前に付くと三井くんは少しためらいながら扉を開けた。
そして今に至る。
「ここがゴミ屋敷か」
「2回も言うんじゃねえ!仕方ねえだろ、お前と違って忙しいんだ」
「何言ってんですか!私は私で図書館行ったり予備校行ったりとても忙しいよ!」
「じゃあお前の部屋もこんなもんだろ」
「そんなワケない!寧ろ物が無くて殺風景と評されてるよ!」
とりあえず部屋に入るが、足の踏み場がないとはまさにこのことだ。
洋服、雑誌、ウォークマンなどなど……床には至る物が散乱している。
「あ、これ先週提出だったプリント」
「あ、やべ」
「やべじゃない!テストで点取れないなら提出物出して稼がないと駄目だよ!……どうしようか。勉強会どころじゃないぞ」
「頑張ればスペース作れるぜ」
「洋服を端に寄せただけじゃん!ああああA型の血が騒ぐよ。片付けたい」
「えっお前A型だったのか……O型かと思った」
「お母さんはO型だよ!よし、片付けたい!片付けよう!勉強会はまた今度!」
「はあ!?」
「ほら、ゴミ袋持ってきて!」
と、いうワケで。今日は1日お掃除に時間を割くことになりました。
さてどこから片付けましょうか……私が見定めている隣で、三井くんはふてくされた顔でゴミ袋を広げていた。
これもアナタの為なのよ三井くん……。
「よし、じゃあまずベッドの下でも漁ろうかな!」
「何でそうなる!」
三井くんはベッドの下を隠そうと必死だ。
「ああやはり、そこにあるんだ秘宝館……」
「うるせえな!……ここは俺がやる。他だ、他」
「えー。じゃあ目に見える所から。まず洋服!これは洗濯済み?……あ、良い匂い。こっちは……汗臭い……」
「に、ニオイを嗅ぐな!これも俺がやる」
「ニオイ嗅がないとわかんないじゃん!……じゃあ良いよ、私は雑誌を片付けるから」
「おう」
それからは黙々と掃除を始めた私たち。偉いぞ三井くん!
それにしてもバスケ雑誌が多いなあ。……マイケル・ジョーダン?誰だ?
本棚に雑誌を早々に仕舞い終わらせる。三井くんの方も順調なようで、畳まれた服が山積みになっていた。
「あ!この服可愛い!」
「可愛いか?男物だぞ?」
「うん!センス良いよ三井くん!良いなあ、着るとダボダボくらいが可愛いって服もあるんだよね」
「可愛いって、お前が着ればの話じゃねえか。……やるよ。部屋片付けてくれたお礼に」
「え!良いの?」
「ああ。服も喜ぶんじゃね?」
「……三井くんイケメン!本当にありがとう!大切にする!」
私がお礼を言うと三井くんは照れくさそうにまた服を畳み始めた。
………―――――――――――
数時間後、先程までと同じ場所だとは思えないほど美しい空間がそこにあった。
「やった!終わった!ピッカピカ!」
「疲れた……」
三井くんはぐったりとベッドに倒れ込んでしまった。
あ、そういえばベッドの下って掃除したのかな。
「ちょいと拝見させて頂くよ」
「あー……あ!?そこはよせ、やめろ!」
三井くんの制止の声を無視して私はベッドの下の隙間に手を突っ込んだ。
「……なんか出てきたよ。タイトル読んで良い?」
「良いわけあるか馬鹿!あー、そりゃ、宮城が遊びに来たとき忘れてったヤツだな。うん」
「嘘付け!」
三井くんはムッツリだ。
「今のことは忘れてあげるよ。じゃあもう遅いし私帰るね」
「え」
「服ありがとう!掃除しただけなのにこれは良いお礼すぎるから、今度何か奢るよ!」
「ちょ、待てって」
部屋から出て行こうとする私の腕を三井くんが掴んだ。
どうしたんだろうか。あれ、私ドキドキしてる。
三井くんは真っ直ぐ私を見つめて口を開いた。
「ゴミ、捨てるの手伝ってくれ。俺一人じゃ持ちきれん」
何だよオイ!ちょっとロマンチック求めた私恥ずかしいじゃん!
こんなオチありか!?