だって男の子だもん


私は先生の命令により、バスケ部の部室に向かっていた。

命令とは、三井くんに渡すのを忘れてしまったプリントを届けてほしいとのこと。

……先生、委員長使い荒いですよ。


部室に着き、扉のノブに手をかけたとき、中から声が聞こえてきた。


「三井さん、絶対内緒ッスよ」


宮城くんだ。

三井くんに内緒話をしようとしている。

扉を開けるのをやめ、会話に耳を傾けた。


「なんだよ、気持ち悪ぃな」

「良いんスか、そんなこと言って。後悔しますよ」

「あ?」

「見てくださいよ、コレ。やばくないッスか?」


宮城くんは三井くんに一体何を見せているのだろうか。

気づかれないように少し扉を開け、中を覗く。


「ぶっ!?なんちゅーもん見せるんだ!」

「あれ〜?三井さん、興味ないんスか〜?」


宮城くんの手には雑誌。

……その表紙は、とても大胆なポーズをとったお姉さまだったワケで。

エロ本ですか!そうですか!

私は一人顔を赤くした。


「興味ねーワケじゃねーけど!今見せるもんじゃねーだろうが!」

「まあまあ。これ見ればそんなこと言えなくなりますよ」

「な、なんじゃこりゃ……!」

「ね!?やばいッスよね!?こころさんにソックリでしょ!」


私は乱入していってやろうと思ったが、思いとどまった。

――何故私の名前がそこで出てくる!?


「かれんっていう女優の特集ページなんスけど、俺も見たとき本人かと思っちゃうほど似てて!」

「……ああ、これは、ヤバイな」

「三井さんに見せてあげようとウキウキしながら持ってきたんスよ!」

「……おう」

「ぷっ、三井さん顔真っ赤ッスよ!ちょっと刺激が強すぎましたか、こころさんのM字開脚は!」

「……ああ」

「おーい、戻ってきてくださーい、三井さーん」


大体話が読めてきた。

かれんさんっていうあっち系の女優さんが、私にそっくりらしい。

それを見て三井くんはお楽しみという……。


「ちょっと貸せ!」

「うわっ!三井さん、もうちょっと丁寧に扱ってくださいよ」


バサッと床に落ちる雑誌……私の顔をして、あられもないことになっている女の人が、見えた。


――あれは私じゃないんだけど、顔は私。

イコール、私の裸だとかセクシーポーズを見られていることとそう変わらない……。


「うわあああああああっっ!!」


顔から湯気が出た気がする。

と、そんな私に慌てて近づいてくる少女。


「ちょ、こころ先輩、どうしたんですか?」

「あ、彩ちゃんんんんん!!」


私は彩ちゃんに泣きついた。

嗚呼、年下なのにお姉さんみたいだよ。


「何かあったんですか?」

「うわあああああああ!」

「ちょっと、落ち着いて!」

「男の子って最低いいいいいい!」

「はあ?」


と、そのとき、部室の扉が開いた。


「あ、三井先輩、リョータ。ちゅーす」

「「……ちゅーす」」


部室から出てきた三井くんと宮城くんは、彩ちゃんに泣きつく私を凝視する。

そして、しばらくするととてつもなく慌て始めた。


「綾部、な、何やってんだ!?」

「そ、そうッスよ!?ていうかいつから居たの!?」

「宮城!馬鹿野郎、いつから居たとかそんな墓穴を掘るようなこと!」

「ああああああ!え、いや、なんでもないッスよ!忘れてくださいこころさん!」


三井くんも宮城くんも、目が泳いでいる。

……こんな二人、初めて見たよ。

ふと、三井くんと目が合う。


「うわあああああ!見るなあああああ!やらしい目で私を見るなあああああ!」

「んなっ、やらしい目でなんて見てねーよ!」

「見たでしょ!さっき!」

「……すまん。だけどアレはお前じゃなくて」

「うわあああああ!三井くんに裸見られたあああああ!」


私は泣き叫びながら逃げ出した。


「ちょ、お前、誤解を生むようなこと叫ぶな……ぐふっ!」

「三井先輩?どういうことですか?」

「ご、誤解だマネージャー……だから首にかけた手の力を緩めろ……」

「詳しく話しを聞かせてもらおうじゃないですか!……リョータも逃げるな!」


――私が逃げた後、彩ちゃんがみっちり二人に説教をしたらしい。


それから数日、私は三井くんを避けた。

……まあ、もうそろそろ許してやりましょうか。


「三井くん」

「な、なんだ」

「うん、もう怒ってないよ」

「……マジ!?」

「マジ」

「そうか!良かった!」


「ところで、この間の雑誌は処分してくれたんだよね?」

「あ……いや……」

「……ん?」

「悪い……」


――あともう少し、三井くんを避けることにしようかな。



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