最近、臨也に避けられている。

ここでいう最近というのは、臨也が女の体になってからだ。

あの日、新羅の部屋で女体になったという臨也を抱きしめて。
「女になったからといって急にやさしくしないでよ、」と意味不明な別れ文句を言われて。

それ以来連絡が来なくなった。

もともと静雄からはあまりメールや電話をしなかったから、臨也から送られてこなければ連絡をとることはない。
今までは一日に少なくとも10回ぐらいはメールをやりとりしていたはずなのだが、ここのところは1日に仕事関係のメール1件があればいい方だ。

そのメールも実に事務的で、形式的なものだ。
臨也から送られてくると思っているが、実は秘書とか誰かが打った形式的なメールなのかもしれない。

流石の俺も痺れを切らして何度も電話をしてみても、「この電話は現在電源が切られているか電波の届かないところにあります」という機械音声の案内が流れるだけで、臨也につながらないことが多いというか、全く繋がらない。

着信拒否してやがる、アイツ。


俺はどうしたらいいのか分からなくなって、静雄の唯一の相談相手といってもいい、セルティのもとを尋ねた。

白を基調とした清楚なマンションは、前回来たときと全く変わっていなかった。ただ、新羅だけがいなかった。

『珍しいな、連絡もなしに急に来るなんて。今日はどうしたんだ?』
「悪ぃな、急に来ちまって」
「顔色が良くないぞ、大丈夫か?」

PADに打ち込まれる文字が親切にも俺のことを心配している。

「小難しいこと頭使って考えてたら、疲れてるだけだ」
『悩み事でもあるのか?』

俺は単刀直入に話を切り出した。

「最近、臨也に避けられてるんだ」
『そうなのか?臨也から私には通常通りの任務命令がくるぞ。昨日だって、何かよくわからない黒い箱を運べと言われたし』
「・・・・・・そんなら俺、イザヤに何かしたか?」
『静雄がわからないなら、私にも分からない』

セルティも両手をあげてお手上げだというポーズをとった。

「この間、臨也が女になった日から、全く連絡すらつかないんだ」
『臨也の家には行ってみたのか?』
「まだ行ってねぇんだけどな。メールや電話もしたし、何度も家にも行ったけれどことごとくスルーされてる。これって完全に俺のこと避けてるってことだよな」
『いや、そんなことはないだろう』
『イザヤも急に女になって、驚いているだけなんだと私は思う』
「そういうもんなのか、」
『私なら急に性別が変わったら驚くさ』
「なら、なんで俺のこと避けるんだ?」
『そりゃ、一番好きな人には残念がられたくないだろう?イザヤは静雄が男の状態が好きだったのであって、性転換で女になったら嫌われてしまうなんてかんがえているんじゃないかと思う』
「そんなもんで、好きなやつを嫌いになれるならそれは好きじゃなかったということだろう?俺は、イザヤが男でも女でも構わないんだけどな、」
『私の憶測だから、実際に聞いてみないと分からないものさ』
「実際に聞くって、こんなに避けられてんのにどうすんだよ、」

電話も出ない。
メールも返信が来ない。
避けられているというか、スルーされているというか。
こんな状態でどうしたらいい?
静雄は完全に参っていた。

『そんなら、デートでもしてみたらどうだ?』
「どうやって、会えない相手とデートすんだよ」
『私から連絡を取ってみる。だから、静雄も留守電にでもイザヤをデートに誘うように言っておけばいいんじゃないか』

セルティと話していたら、少しは暗雲が晴れてきたような気がした。
やはりセルティはいい奴だと再度実感して、俺はマンションを後にした。
白を基調としたマンションは夕日を浴びて、眩しく光って見えた。


そして、イザヤに電話を掛けた。

「次の休み空けとけ。ついでにどこか行きたいところ考えておけよ、」

全く色気もなにもない。
しかし、これが俺の精一杯だった。

そう一言行って俺は仕事に出かけた。

傲慢で強引なランデブー
それほどの愛を




20110522






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